相場展望1月18日号 米国株: 株価は「熱狂」から、「息切れ」へ 日本株: 円安進行で輸出関連株上昇も、値がさ株軟弱で横ばいか

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/15、祝日「キング牧師生誕記念日」で休場

【前回は】相場展望1月15日号 米国株: インフレ再加速懸念で、政策金利引下げ期待後退、金利再上昇 日本株: 急騰後は、高値警戒とNYダウの足踏みで、一服する可能性

 2)1/16、NYダウ▲231ドル、37,361ドル(日経新聞より抜粋)  ・1/16の米株式市場でNYダウは続落し、前週比▲231ドル安の37,361ドルで終えた。米連邦準備理事会(FRB)高官による早期利下げ観測を牽制する発言を受け、米債券市場で長期金利が上昇(債券価格は下落)した。長期金利の上昇で株式の相対的な割高感が意識した売りが優勢だった。NYダウの下げ幅は▲390ドルを超える場面があった。

  ・FRBのウォラー理事は1/16の講演で、「政策の軌道修正は慎重に判断し、急ぐ必要はない」と述べた。ここ数カ月のデータはFRBが2024年中に利下げを検討する余地があることを示しているものの、こうした傾向の持続性には懸念があるとの考えを示した。ウォラー理事の発言を受けて、米長期金利は前週末比+0.14%高い4.08%まで上昇する場面があった。

  ・一部の主力銘柄に売りが膨らんだのも、NYダウを下押しした。ウェルズファーゴが投資判断を引下げた航空機のボーイングは▲8%弱下落した。中国で新モデルの値下げが伝わったスマートフォンのアップルも売りが優勢となった。

  ・取引開始前に2023年10〜12月期決算を発表した金融のゴールドマンサックスは1株利益が市場予想を上回ったが、下げる場面があった。モルガンスタンレーも決算発表を受け、▲4%下落した。

  ・市場では「利下げ観測の牽制発言に加え、決算発表を受けた金融株が冴えない動きとなったことが投資家心理を冷やした」との指摘が聞かれた。NYダウが今月1/2に最高値を更新するなど株式相場が堅調だったため、主力銘柄には利益確定売りが出やすいとの見方もあった。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は7営業日ぶりに反落した。

  ・個別銘柄では、スポーツ用品のナイキ、石油のシェブロン、機械のハネウェルが下げた。ネット通販のアマゾンと交流サイトのメタが下げた。半面、映画・娯楽のディズニーと通信のベライゾンに買いが入った。バークレイズが目標株価を引上げた半導体のAMDは+8%上昇した。

 3)1/17、NYダウ▲94ドル安、37,266ドル(日経新聞より抜粋)  ・1/17発表の2023年12月の米小売売上高が市場予想を上回って伸びた。米連邦準備理事会(FRB)の早期の利下げ観測が後退し、株売りにつながった。NYダウの下げ幅は▲200ドルを超える場面があった。

  ・小売売上高は前月比+0.6%増と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+0.4%増を上回った。個人消費が堅調さを保っているとして、インフレの抑制が遅れるとの見方が広がった。市場では「FRBが3月に最初の利下げに動くとの期待が後退した」との指摘があった。

  ・米長期金利は一時4.1%台前半と、昨年12月中旬以来の高水準に上昇した。金利と比べた株式の相対的な割高感が意識され、株売りを促した。前日には、FRBのウォラー理事が早期の利下げ観測を牽制したこともあり、市場では過度な利下げ期待が薄れた。

  ・NYダウは取引終了にかけて下げ幅を縮めた。米景気の大幅な悪化は避けられると予想する投資家が多く、押し目買いが入りやすかった。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は続落した。

  ・個別銘柄では、ドラッグストアのウォルグリーンズや建機のキャタピラー、映画娯楽のディズニーが下げた。欧州の複数国で一部車種を値下げした電気自動車のテスラが売られた。ネット通販のアマゾンも下げた。半面、航空機のボーイングや医療保険のユナイテッドヘルスは上昇した。

●2.米国株:株価は「熱狂」から、「息切れ」へ

 1)米国株は、警戒感が高まり、好材料に反応しなくなっている  ・アップルが中国での値下げが伝わり、下落。  ・大手金融が10〜12月期決算発表したが、好業績にもかかわらず株価は冴えず。  ・早期利下げ観測が後退。

 2)景気堅調でインフレ再加速の懸念から、早期利下げ期待が後退  ・利下げ観測で株価急騰も、3月利下げ観測が後退し、株価は息切れ  ・12月小売売上高が前月比+0.6%増と市場予想+0.4%を上回って伸びた。  ・個人消費が堅調との見方から、FRBによるインフレ抑制が遅れるとの観測が広がった。  ・ウォラーFRB理事の講演での「早期利下げ期待への牽制」発言が、きっかけとなって、利下げ期待が薄れた。  ・米長期金利は4.1%台前半と昨年12月中旬以来の高さに戻った。長期金利の上昇が、株式の相対的な割高感が意識される状況になった。

■II.中国株式市場

豆1.上海総合指数の推移 1)1/15、上海総合+4高、2,886(亜州リサーチより抜粋)  ・エネルギー関連株の上昇が相場を支える流れとなった。

  ・中東地域の地政学リスクが意識される中、原油相場の先高観が強まった。(1/12のWTI原油先物は+0.9%高と続伸)イエメンの親イラン武装組織フーシ派がスエズ運河に通じる紅海で商船襲撃を繰り返していることの報復で、英米軍はフーシ派の拠点を空爆した。

  ・中国経済指標の下振れを受け、「中国政府は追加の経済対策を打ち出す」との期待も浮上した。中国人民銀行(中央銀行)が1/12に発表した12月の金融統計では、人民元建て新規融資額が予想に届かず、マネーサプライ(通貨供給量)M2の伸びは前月水準を下回った。

  ・中国景気の鈍化懸念に加え、金融緩和の期待が薄れたことを受け、朝方は安く推移したものの、指数はほどなくプラスに転じた。

  ・寄り付きと同時に公表された1月の中期貸出ファシリティ(MLF)金利は、低下予想に反し、前月と同水準に据え置かれている。

  ・業種別では、エネルギー関連の上げが目立ち、通信ネットワークもしっかり。金融・不動産・公益・医薬・空運なども買われた。半面、軍事関連は冴えず、素材・消費関連・ハイテクの一角が売られた。

 2)1/16、上海総合+7高、2,893(亜州リサーチより抜粋)  ・中国経済対策の期待感が相場を支える流れとなった。

  ・前日公表された1月の中期貸出ファシリティ(MLF)金利は低下予想に反して、据え置かれたが、当局は金融緩和などで経済を支えるとの期待が続いている。中国証券報は1/16、1〜3月期中に政策金利や預金準備率が引下げられる可能性があると報じた。

  ・また、「中国当局が一部の機関投資家に対し、株式を売却しないよう指示したもよう」と伝わったことも下値不安を和らげている。

  ・指標発表を前にした買い手控えなどで安く推移していたが、指数は引けにかけてプラスに転じた。

  ・中国では明日1/17の取引時間中に、12月の小売売上高や鉱工業生産、2023年通年のGDP成長率などが公表される。

  ・業種別では、金融が上げを主導、エアライン・空港・ホテルなど旅行関連も物色された。大型連休の旅客増が期待されている。民用航空局は今月1/26から始まる春節(旧正月)前後の特別輸送体制「春運」期間について、3/5までの40日間で航空旅客数が述べ8,000万人に達すると予測。1日当たりでは200万人となり、過去最多を更新する見込みという。そのほか、エネルギー・自動車なども買われた。半面、不動産は冴えず、医薬・素材・公益が売られた。

 3)1/17、上海総合▲60安、2,833(亜州リサーチより抜粋)  ・中国経済の先行き不安が強まる流れとなり、2020年5月以来の安値水準に落ち込んだ。

  ・取引時間中に公表された2023年第4四半期(10〜12月)の国内総生産(GDP)成長率は+5.2%となり、前四半期(7〜9月)の実績+4.9%から拡大したが、市場予想+5.3%には届かなかった。

  ・12月の月次統計では、不動産関連の低迷が続き、小売売上高も予想を下回った。

  ・少子高齢化による国力低下も懸念された。2023年の出生数は7年連続で前年を下回り、中国建国以来の最少となった。

  ・業種別では、消費関連の下げが止まらず、不動産も安く、医薬も冴えない。ハイテク・素材・インフラ関連・エネルギー・公益・金融なども売られた。

●2.中国新築住宅価格、12月は9年ぶり大幅下落、不動産投資も減少(ロイター)

●3.中国GDPは前年比+5.2%増加、小売売上高は予想を下回り課題は山積み(ロイター)

●4.中国、デフレ懸念が深刻化(DIAMOND)

 1)多くの中国人が経済の先行きを懸念し、支出に消極的だ。1/12発表の公式データによると、中国の12月の消費者物価指数は3カ月連続で下落、生産者物価指数も15カ月連続のマイナスだった。

●5.中国、大幅な成長鈍化阻止へ構造改革が必要=IMF専務理事(ロイターより抜粋)

 1)中国は短期的に高水準の地方政府債務や不動産セクターの課題に対処する必要がある。

 2)中国に必要なことは、経済の開放の継続と、成長モデルのバランスをより国内消費に向かわせる構造改革である。

 3)国民の信頼感を向上させ、貯蓄ではなく消費に向かわさせること。

●6.中国の日系企業、半数が中国投資に「慎重・消極」姿勢(読売新聞)

 1)中国景気減速や邦人拘束問題が影響。

●7.中国EVに「逆風」、日本を抜いて新車輸出が世界首位も国内外で異変(zakzakより抜粋)

 1)欧米ではガソリン車への回帰や、EV補助金の見直しもあり、中国EVに逆風。

 2)世界ではEVよりも、PHEVやハイブリッドが好まれる傾向が出てきた。

 3)欧米の市場では、中国車は次第に縮小するとの分析。

●8.中国、新型コロナ拡大を予想(共同通信)

 1)中国疾病予防コントロールセンターは1/14、新型のコロナウイルスの新変異株「JN・1」が著しく増加しており、コロナ感染が中国で拡大する可能性があるとの予想を明らかにした。

●9.中国の180兆円規模の政府系ファンド、市場安定化を支援する方針表明(ブルームバーグ)

●10.中国総人口が2年連続減少、2023年末は14.09億人で少子化が加速(ロイターより抜粋)

 1)人口減は中国経済の潜在成長力に長期的に深刻な影響を及ぼす。中国では1980年から2015年まで実施された「一人っ子政策」と、急速な都市化の影響で出生数は減少を続けている。

 2)2023年の人口は▲208万人減少、減少幅は2022年の85万人を大きく上回った。

 3)60歳以上の定年退職者は現在約2億8,000万人だか、2035年には4億人超に増加する見通し。国営の中国科学院は、2035年までに年金制度が資金不足に陥ると予想している。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/15、日経平均+324円高、35,901円(日経新聞より抜粋)  ・日本株の根強い先高観を背景とした買いが日経平均を押し上げた。上げ幅は一時+400円を超え、取引時間中としては1990年2月22日以来となる、節目の36,000円を上回る場面もあった。

  ・日経平均の上げ幅は6営業日で+2,600円を超えた。朝方は短期的な過熱感を警戒した売りが出たが、ほどなくして上昇に転じた。海外勢を中心とした株価指数先物への買いがファストリなど現物株を押し上げた面があったほか、日本国内がデフレ脱局に向かうとの観測も投資家心理の支えとなった、との見方もあった。

  ・バリュー(割安)株の上昇も目立ち、業種別では海運や証券・鉱業などが買われた。東証株価指数(TOPIX)のバリュー株指数は前週比+43高い2,831で終え、2023年9月に付けた過去最高値2,816を更新した。東京証券取引所は1/15の取引終了後に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について開示した企業の一覧表を公表する予定で、資本効率に課題のある企業の変化への期待が高まっていることも追い風となった。

  ・個別銘柄では、郵船・商船三井・川崎汽船は大幅高となった。大和証券・野村証券も高い。一方、資生堂・サイバー・ネクソンは下落した。

 2)1/16、日経平均▲282円安、35,619円(日経新聞より抜粋)  ・前日1/15まで連日でバブル経済崩壊後の高値を更新し、33年11カ月ぶりの高水準で推移する中、高値警戒感から主力株を中心に利益確定売りが優勢だった。下げ幅は一時▲300円を超えた。

  ・日経平均は前日までの6日続伸で上げ幅が+2,600円を超えていた。日経平均構成銘柄の値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割った騰落レシオ(25日移動平均)が1/15時点で135.11%と「買われ過ぎ」の目安とされる120%を上回るなど、相場の過熱感を示す指標が増えていることも、売りを促した。ただ市場では「スピード調整の範囲内にすぎず、相場の先高観は強い」との声も聞かれ、下値模索の動きは限られた。

  ・東京証券取引所は1/15、2023年12月末までにプライム企業の4割が「資本コストや株価を意識した経営」に関する改善策を開示したと発表した。未対応の企業には株主から改善への圧力がかかる可能性があり、資本効率の改善期待が海外投資家の買いを誘った。日経平均はプラス圏で推移する場面もあった。

  ・市場では「先日、中国・上海などに出張したが、中国本土の投資家は自国の株式や経済に慎重になっていることもあり、企業統治(ガバナンス)改革などが進む日本株や日本経済への関心を思った以上に高めていた」との声が聞かれた。

  ・米主要メディアは1/15、11月の米大統領選挙を戦う共和党の候補者指名争いの初戦となる中西部アイオワ州党員集会でトランプ前大統領が勝利したと報じた。もっとも米大統領選の前哨戦とあって材料視する向きは少なく、相場への影響は限定的だった。

  ・個別銘柄では、ファストリ・東エレク・ダイキン・ソフトバンクGが安い。安川電・太陽誘電・伊藤忠が下落した。一方、川崎汽船・郵船・商船三井など海運株が高い。アステラス・イオン・資生堂が上昇した。

 3)1/17、日経平均▲141円安、35,477円(日経新聞より抜粋)  ・相場の過熱感が意識され、短期筋による株価指数先物の売りが膨らんだ。1/17の東京株式市場で日経平均株価は続落し、終値で▲141円安となった。前日の米半導体株高や円安・ドル高を支えに朝方は買いが先行し、上げ幅は+620円に達したが、前場中頃から急速に伸び悩んだ。日中値幅(高値と安値の差)は762円に達した。2023年7月28日の809円以来の大きさとなった。

  ・日経平均が伸び悩んだのは、中国の上海証券取引所が上場する日経平均連動型の上場投資信託(ETF)の売買を一時停止したと伝わったからだ。過熱感がくすぶっていただけに「短期筋の先物売りの口実になった」との見方があった。日経平均は2024年初から前日まで+2,100円あまり上昇し、利益確定売りも出やすかった。

  ・朝方は買いが先行した。1/16の米市場では主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が前週末比で+1.32%上昇した。東京市場ではアドテスト・東エレク・レーザーテクなど半導体関連株に買いが波及した。

  ・円相場は一時1ドル=147円台半ばの円安・ドル高に振れたのも輸出関連株の買いにつながった。米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事が1/16の講演で「政策の軌道修正は慎重に判断し、急ぐ必要はない」と述べ、早期の利下げを牽制した。

  ・東証株価指数(TOPIX)は続落した。JPXプライム150指数も続落した。

  ・個別銘柄では、信越化・ダイキン・ファストリが下げた。一方、三菱商事・イオン・コマツが上げた。

●2.日本株:日米金利差がさらに拡大し円安進行も、値がさ株下落で横ばい予想

 1)前日1/17相場は、円安・米半導体株高が支えも、その他の値がさ株安で下落  ・日米金利差(10年)拡大⇒円安へ   1/16   1/17 金利差が拡大   3.335% 3.482 +0.127  ・円安⇒自動車株など輸出関連株高   三菱商事・豊田通商など  ・米半導体株高⇒半導体関連株高   東エレク・レーザーテック・アドバンテストなど  ・その他の値がさ株の下落で、日経平均全体を下げた   信越化・ファーストリ・中外薬・ダイキン・第一三共など

 2)日経平均は依然として強い基調にある  ・新高・安値銘柄数の推移 1/4 1/11 1/12 1/15 1/16 1/17        新高値銘柄数 106 244 190  235 153  163        新安値銘柄数 12  0  2   4   4   11  ・新高値銘柄数は依然として数が多く、強気基調を継続している。新安値銘柄数の急増はみられず。

 3)本日1/18の日経平均は底堅さを示すと予想(前日比、若干のプラス?)  ・円安進行で輸出関連株は堅調。  ・日本1/17⇒米国1/17     147.78円⇒148.20  ・ハイテク・半導体関連株はやや軟調。  ・1/17の米国市場では、ナスダック総合と半導体株指数(SOX)が若干下落。

●3.OKI、新紙幣7月発行を前にATN製造工場がフル稼働(NHK)

■IV.注目株式(投資は自己責任でお願いします)

 ・5726 大阪チタニウム 業績好調。 ・6182 メタリアル   業績好調。 ・8267 イオン     業績好調。

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou