SBI証券は口座数で日本一だが、楽天証券のような「経済圏」を持たないため、顧客獲得のための「間口」はいくらでも欲しいというのが本当のところではないかと見られている。SBIの北尾吉孝氏と直接交渉し、信頼関係を築いたSMFG社長の太田純氏が亡くなっただけに、今後この提携を深化させられるかが問われる。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規氏は「我々のネット証券戦略のコアは、auカブコム証券」と発言した。

 auカブコム証券は旧カブドットコム証券で、MUFGの子会社ではあるが、持ち株比率は51%、残り49%はKDDI傘下のauフィナンシャルグループが保有している。

 ただ、ある市場関係者は「ネット証券戦略のコアがauカブコム証券では弱い。今、まさに戦略を練り直しているところではないか」と推測する。

 auカブコム証券の口座数は23年10月時点で約160万口座と、SBI、楽天の2強だけでなく、3位のマネックス証券(約220万口座)にも水を開けられている。しかもマネックス証券は、MUFGとも提携関係にあるNTTドコモの子会社となり、再成長を期している。

 マネックスグループ社長の清明祐子氏が旧三和銀行出身だということもあり、一時MUFGが買収に動くのではという観測が流れたが、マネックスが持つ暗号資産(仮想通貨)大手のコインチェックの存在が足枷になった可能性も指摘されている。

 資産形成の時代を迎えつつある中、メガのみならず金融機関同士の競争は激化している。混戦・流動化状況の中で、どこがどう抜け出てくるか─。