店内は薄暗く無音に。「 センサリーフレンドリー 」なショッピング時間を提供する食料品:新たな顧客層を呼び込める可能性も
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
照明は暗く、音楽はなく、頭上のアナウンスもない。一部の食料品店は、店舗内で過剰な刺激を受ける買い物客のためにこのような環境を提供しはじめている。
ウォルマート(Walmart)は、米国とプエルトリコのすべての店舗で、毎日現地時間の午前8時から10時までをセンサリーフレンドリーな時間にすると発表した。オレゴンのポートランドにある食料品チェーン、ニューシーズンズマーケット(New Seasons Market)も、センサリーフレンドリーのショッピング時間を今月初頭から開始すると発表した。これは、19店舗のうち18店舗で週に1回行われる。一方、ターゲット(Target)は今月初頭にオハイオにある2店舗で、午前7時から8時までセンサリーフレンドリーなホリデーショッピング時間を設けた。
食料品店は、よりインクルーシブな店頭体験を提供する試みとして、センサリーフレンドリーなショッピング時間をテストしはじめている。小売業者は、店舗を改装したり、店舗のレイアウトを更新するなどして、店舗内でのショッピングを買い物客にとってより快適なものにする方法を試みている。コンドラットリテール(Kondrat Retail)の創設者レベッカ・コンドラット氏は、センサリーフレンドリーな時間を設けることは、小売業者が店舗の改善に向けて進めている新たな一手なのかもしれないと語る。
「どのブランドも、顧客に落ち着ける場所にいると感じてもらいたいはずだ。しかし、特定のニーズを持つグループの人々のためだけに時間を設けることにより、予想しなかったビジネス上の恩恵もあったと思う」と、コンドラット氏は述べている。
感覚処理障害は、ADHD(注意欠如・多動性障害)、失読症、心的外傷後ストレス障害、自閉症などがある人々によく見られるものだ。すなわち、人口のかなりの部分を占めるこれらの人々は、明るい照明で音楽が響き、頭上のスピーカーから常にアナウンスの音声が聞こえてくるという食料品店のこれまでの環境を、長期間滞在するのに理想的な環境とは感じないかもしれないということだ。店舗にセンサリーフレンドリーな時間を設けることで、これまでは獲得できなかったような新しい層の顧客を食料品店に引き入れられる可能性がある。
インフォシスコンサルティング(Infosys Consulting)でCPG(消費者向けパッケージ商品)・小売・ロジスティクスのアソシエートパートナーを務めるメアリー・ルー・ガードナー氏によると、感覚過敏の子どもたちの親も、急いで店から出る必要がないなら長時間店舗に滞在できるという。「これらの親にとって、買い物に子どもを連れてくることは困難だ。そのため、センサリーフレンドリーな店内によって、そのような買い物客に、より良い体験を提供することができる。ショッピング中にリラックスできるなら、多くのお金を消費する。滞在時間を伸ばすことができれば、買い物かごに入れる商品の数を増やすこともできる」と、同氏は述べている。
ウォルマートは今年の7月と8月に、新学期のショッピングシーズンにセンサリーフレンドリーな時間を初めてテストした。その際は、毎日ではなく、土曜日に一部の店舗で行っただけだった。しかし、パイロットプログラムで「非常に好意的な」フィードバックが得られたため、センサリーフレンドリーな体験をすべての店舗に拡大したという。
センサリーフレンドリーな時間の設置内容は、小売業者によって異なっているようだ。ニューシーズンズマーケットは、このサービスの一環として、従業員のトランシーバーの音量を下げることも計画している。一方でターゲットは、店舗内での人々の行き来を制限すると述べている。
ニューシーズンズマーケットは、センサリーフレンドリーな時間のサービスは、同社のコアな価値と一致していると語る。「ニューシーズンズマーケットは、常に顧客のニーズと希望を最優先してきた。当社でのショッピングは誰にとっても快適なものにするべきだと考える」と、ニューシーズンズマーケットの多様性、公平、インクルージョン担当のシニアディレクターを務めるニコトリス・パーキンズ氏は声明で述べている。「センサリーフレンドリーな時間の設置は、コミュニティの中のより多くのメンバーが、感覚的な刺激に圧倒されることなく、自分のペースでショッピングができるようなインクルーシブな空間を作り出したいという我々の願いを表している」。
カンター(Kantar)の小売インサイト責任者のレイチェル・ダルトン氏は、この試みで小売業者が直面する可能性がある課題のひとつは、こうした早朝シフトに対応できるだけの従業員を確保することだと話した。また店舗内の従業員は、これらの指定された時間内に何をするべきについて研修を受ける必要がある。
それでも、ウォルマートのような大手業者がセンサリーフレンドリーな時間を標準のサービスにすることで、ほかの小売業者も同じことを始める可能性があると、ダルトン氏は述べる。海を越えた英国では、アルディ(Aldi)がすでにダービーシャー、ノッティンガムシャー、リンカンシャー、ヨークシャーの全域の100近くの店舗でセンサリーフレンドリーな時間のテストを開始した。このテストが成功すれば、英国内のすべての店舗でこのショッピング体験の運用を開始すると、アルディは述べている。
「さらに多くの小売業者が、この体験を店舗で実施するだろう。これによって、さらに店舗へのトラフィックが増えるだろう。静かに買い物ができると知った新しい顧客も引き入れられる可能性がある」と、同氏は述べている。
[原文:Why grocers are experimenting with sensory-friendly shopping experiences]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Walmart
照明は暗く、音楽はなく、頭上のアナウンスもない。一部の食料品店は、店舗内で過剰な刺激を受ける買い物客のためにこのような環境を提供しはじめている。
ウォルマート(Walmart)は、米国とプエルトリコのすべての店舗で、毎日現地時間の午前8時から10時までをセンサリーフレンドリーな時間にすると発表した。オレゴンのポートランドにある食料品チェーン、ニューシーズンズマーケット(New Seasons Market)も、センサリーフレンドリーのショッピング時間を今月初頭から開始すると発表した。これは、19店舗のうち18店舗で週に1回行われる。一方、ターゲット(Target)は今月初頭にオハイオにある2店舗で、午前7時から8時までセンサリーフレンドリーなホリデーショッピング時間を設けた。
「どのブランドも、顧客に落ち着ける場所にいると感じてもらいたいはずだ。しかし、特定のニーズを持つグループの人々のためだけに時間を設けることにより、予想しなかったビジネス上の恩恵もあったと思う」と、コンドラット氏は述べている。
新しい顧客層の獲得
感覚処理障害は、ADHD(注意欠如・多動性障害)、失読症、心的外傷後ストレス障害、自閉症などがある人々によく見られるものだ。すなわち、人口のかなりの部分を占めるこれらの人々は、明るい照明で音楽が響き、頭上のスピーカーから常にアナウンスの音声が聞こえてくるという食料品店のこれまでの環境を、長期間滞在するのに理想的な環境とは感じないかもしれないということだ。店舗にセンサリーフレンドリーな時間を設けることで、これまでは獲得できなかったような新しい層の顧客を食料品店に引き入れられる可能性がある。
インフォシスコンサルティング(Infosys Consulting)でCPG(消費者向けパッケージ商品)・小売・ロジスティクスのアソシエートパートナーを務めるメアリー・ルー・ガードナー氏によると、感覚過敏の子どもたちの親も、急いで店から出る必要がないなら長時間店舗に滞在できるという。「これらの親にとって、買い物に子どもを連れてくることは困難だ。そのため、センサリーフレンドリーな店内によって、そのような買い物客に、より良い体験を提供することができる。ショッピング中にリラックスできるなら、多くのお金を消費する。滞在時間を伸ばすことができれば、買い物かごに入れる商品の数を増やすこともできる」と、同氏は述べている。
ウォルマートは今年の7月と8月に、新学期のショッピングシーズンにセンサリーフレンドリーな時間を初めてテストした。その際は、毎日ではなく、土曜日に一部の店舗で行っただけだった。しかし、パイロットプログラムで「非常に好意的な」フィードバックが得られたため、センサリーフレンドリーな体験をすべての店舗に拡大したという。
センサリーフレンドリーな時間の設置内容は、小売業者によって異なっているようだ。ニューシーズンズマーケットは、このサービスの一環として、従業員のトランシーバーの音量を下げることも計画している。一方でターゲットは、店舗内での人々の行き来を制限すると述べている。
ニューシーズンズマーケットは、センサリーフレンドリーな時間のサービスは、同社のコアな価値と一致していると語る。「ニューシーズンズマーケットは、常に顧客のニーズと希望を最優先してきた。当社でのショッピングは誰にとっても快適なものにするべきだと考える」と、ニューシーズンズマーケットの多様性、公平、インクルージョン担当のシニアディレクターを務めるニコトリス・パーキンズ氏は声明で述べている。「センサリーフレンドリーな時間の設置は、コミュニティの中のより多くのメンバーが、感覚的な刺激に圧倒されることなく、自分のペースでショッピングができるようなインクルーシブな空間を作り出したいという我々の願いを表している」。
導入業者が拡大する可能性
カンター(Kantar)の小売インサイト責任者のレイチェル・ダルトン氏は、この試みで小売業者が直面する可能性がある課題のひとつは、こうした早朝シフトに対応できるだけの従業員を確保することだと話した。また店舗内の従業員は、これらの指定された時間内に何をするべきについて研修を受ける必要がある。
それでも、ウォルマートのような大手業者がセンサリーフレンドリーな時間を標準のサービスにすることで、ほかの小売業者も同じことを始める可能性があると、ダルトン氏は述べる。海を越えた英国では、アルディ(Aldi)がすでにダービーシャー、ノッティンガムシャー、リンカンシャー、ヨークシャーの全域の100近くの店舗でセンサリーフレンドリーな時間のテストを開始した。このテストが成功すれば、英国内のすべての店舗でこのショッピング体験の運用を開始すると、アルディは述べている。
「さらに多くの小売業者が、この体験を店舗で実施するだろう。これによって、さらに店舗へのトラフィックが増えるだろう。静かに買い物ができると知った新しい顧客も引き入れられる可能性がある」と、同氏は述べている。
[原文:Why grocers are experimenting with sensory-friendly shopping experiences]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Walmart