なぜ写真に撮られた自分の顔はイマイチなのか…「鏡に映る顔は、あなたの本当の顔ではない」という事実
※本稿は、間々田佳子『伝わる顔の動かし方 コミュニケーションは見た目が9割』(光文社)の一部を再編集したものです。
■鏡に向かった顔はいわゆる“キメ顔”
自分の顔を直接見ることはできません。だから私たちは、鏡をのぞいてチェックします。
でも、勘違いしている人が多いのですが、「鏡に映る顔」=「他人から見たあなたの顔」ではありません。
人は鏡をのぞくとき、無意識に表情をつくろうとします。目に力を入れ、あごはすっきり見える角度で、唇をすっと引き結んで。
だから誤解しがちなのですが、それはあなたの顔ではあっても「他人から見たあなたの顔」ではありません。
どういうことか、詳しくご説明しましょう。
鏡に向かって構えた顔は、あなたにとっての「自分を意識した顔」、いわゆる“キメ顔”です。家でも外でもずっとその表情をキープできるなら万々歳ですが、なかなかそうはいきませんよね。
実際に他人とコミュニケーションをとるとき、他人が目にするあなたの顔は、鏡を見ながらばっちり調整したキメ顔ではないのです。
■「他人から見たあなたの顔」とはギャップがある
たいていの人は、鏡に向かってポーズをとるように、いつでもどこでも表情をつくることなどできません。できたとしても、そのままずっとキープすることは難しいでしょう。
となると、そこに「自分がイメージする自分の顔」と「他人から見たあなたの顔」というギャップが生まれます。
あなたが思うあなたの顔は、鏡の中にしか存在しないのかもしれません。
気づかないうちに撮られた写真を見て、愕然(がくぜん)としたことはありませんか?
眉間にシワが寄っているとか、口がひん曲がっているとか、不機嫌そうな雰囲気だとか、鏡に映る自分とはまるでかけ離れた表情……。
残酷な事実ですが、それが「他人から見たあなた」です。そのくらい、自分からと他人からとでは「顔の見え方」が違うのです。
■「アプリで修正した顔」は自分しかだませない
さらに、このギャップを生み出す原因になるものが、もうひとつ――みなさんよくお使いのスマートフォンのカメラとアプリです。
いまや写真はアプリでの加工が当たり前。ワンタッチで目は大きく、鼻筋はすっきりと高く、輪郭は細く、肌は白くなめらかに……自分の理想どおりの顔に仕上げてくれます。SNSへの投稿前に、自撮り画像の修正加工が習慣になっている人も多いのでは?
すると、いつの間にかこの「アプリで仕上げた顔」が「真の自分の姿」だと脳が勘違いしてしまうのですね。言い換えれば「本当の自分を見ることを脳が拒否している」状態です。
でも、気づいてください。あなたと実際に顔を合わせ、話す人が見ている顔こそが“真実の姿”だということに。
アプリマジックで自分はだませたとしても、あなたと関わる人たちが目にするあなたが魅力的でなければ、人間関係はいいほうに向かっていかないのではないでしょうか。
■「本当の自分」がわかる鏡の見方
さあ、あらためて鏡を1枚、用意してください。
サニタリーの鏡を、身支度ついでにのぞくだけでは足りません。家の中の、ふだん自分がよく通る場所に鏡を置いてみましょう。
そして、通りがかりにふっと目に入った顔――それが「普通にしているときのあなたの顔」です。
少しでも「なんだか怖い」「けわしい顔つきだな」とネガティブに感じたなら、注意が必要です。あなたと相対する人も「怖い」「けわしい」と感じているかもしれないのですから。
あなたの脳内イメージでは感じよく微笑んでいるつもりでも、相手からは「険のある作り笑顔だな」と受け取られている可能性があります。
セルフイメージと、他人から見た現実の姿とのギャップ――まずはそこをしっかり見つめないと、改善すべきポイントがわからないままになってしまいます。
■あなたの表情が不仲の原因かもしれない
あなたのこわばった笑顔を見て、相手が「なんだか信用できなさそうな人だな」と感じ、壁をつくったとしましょう。
あなたが「この人、どうして私にだけよそよそしいんだろう。心を開きにくい性格なのかな。だったら私にはどうしようもないな」としか受け止められなかったら、そこで終わってしまいます。
実際は、あなたの表情を見て相手が態度を硬化させたかもしれないのに、です。それって、とてももったいないですよね。
誤解しないでくださいね、もしあなたが今、仮にそういう顔になっていたとしても、責めるつもりなどありません。そうではなく、そこに気づけるかどうかが大切だということを伝えたいのです。
まずはスタートラインとして「部屋に鏡を用意する」、そして「鏡をのぞく習慣をつける」、このふたつから始めましょう。
■「男は顔なんて気にするな」は忘れよう
少々厳しめの話が続いたので、ここで希望のもてる話をしますね。
じつは、特にトレーニングをしたわけではないのに「鏡を見るようになっただけで、顔の動きがよくなる人」が少なからずいます。
どうしてだと思いますか?
きっと、自分の“素の顔”を直視したことで「ウィークポイントを改善するための動き」を意識しやすくなったからではないでしょうか。
自分を「見られている」視線で見たとき、これまで脳内でいいように補正していたアプリを取り払うことができ、その結果、垢抜けにつながったのだと考えられます。
鏡はそのための強い味方になってくれます。
男性は特に、鏡をろくに見ない人が多いですよね。「男は顔なんて気にするな」というひと昔前の格言は、もう忘れましょう。
コミュニケーションをしっかりとれる人は、男女関係なく自分の顔をよく観察し、どう動かせば最大限のパフォーマンスが発揮できるかを熟知しています。
■他人から見られた姿を想像すると…
以前、出席したビジネス関係のパーティでのことです。
ある男性のすぐうしろに立っていた私は、彼が顔の動かし方はもちろん、うしろ姿のたたずまい、全方位において意識し尽くしていることを感じ取りました。どの角度から見ても完ぺきな表情、身のこなし、いでたちでした。
おそらくその方は、つねに他人から見られたときの姿を想像し、自分をみがいているに違いありません。
有能なビジネスマンだともっぱらの評判でしたが、仕事で成果を上げ続けてきたことと、見た目への意識が無関係だとは私はけっして思いません。
「自分はこうであるはずだという思い込み」から抜け出して「他人から見た自分がどんな姿か」を冷静に意識できるか、そこがブレイクスルーの第一歩になるでしょう。
本当の自分を知ることは怖いかもしれません。
これまでイメージしていた姿とのギャップに落ち込むかもしれません。
でも、それを乗り越えれば、するべきことが見えてきます。
誰だって、最初から自由自在に顔を動かせるはずはないのですから、ネガティブになる必要はないのです。
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間々田 佳子(ままだ・よしこ)
表情筋研究家
日本に「顔のヨガ」ブームを起こした第一人者。自身のたるみ顔を改善したメソッドがメディアで話題となり、講座受講者はのべ3万人を超える。長年の研究を通じて「顔だけ鍛えてもダメ。体から全体を整えることで顔にも最高の変化が起きる」と気づき、2020年に「コアフェイストレーニング®」を確立。顔や表情の悩みを解決に導く最強のメソッドと確信し、普及と発展に努めている。各種メディアのほか、企業研修や講演、イベントなど幅広い分野で活躍し、著書は15冊・累計55万部超。ままだよしこメソッド株式会社代表取締役。顔の学校「MYメソッドアカデミー」主宰。
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(表情筋研究家 間々田 佳子)