©1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN

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公開から約30年が経とうとしている映画『レオン』は、寡黙な殺し屋の男とマフィアに両親を殺された孤独な少女の特別な絆を描いた物語。その衝撃的なラストゆえに、登場人物のその後をつい想像してしまう人もいるのではないか。

2023年10月27日からは、日本で『レオン 完全版』が2週間限定で再上映がスタート。本記事では、物語を簡単に振り返りながらエンディングの意味について考えてみる。

この記事には、『レオン』のネタバレが含まれています。

『レオン』あらすじ

ニューヨークで孤独に生きる殺し屋の男レオン(ジャン・レノ)は、いつも通り粛々と仕事を終え、自宅のアパートに戻る。すると、そこには1人の少女がいた。タバコを隠し持ち、頬には濃いアザがある。「どうした?」と尋ねるレオンに「転んだ」との返答。そんなはずもなく、家族から虐待されていたのだった。少女の名前はマチルダ(ナタリー・ポートマン)。

会話の翌日、マチルダの父ジョセフは、麻薬密売組織のブツを横領したことが麻薬捜査官のスタンスフィールド(ゲイリー・オールドマン)にバレてしまい、捜査員たちが押しかけてくるとその場は銃撃戦に。運よく買い物で外出していたマチルダが帰宅すると、家族は可愛がっていた4歳の弟マイケルも含めて皆殺しにされていた。自宅を通り過ぎたマチルダは、前の日に会話した隣人のレオンに助けを乞い、匿ってもらうことに。弟の仇を打つべく、復讐を誓うのだった。

こうして共同生活をスタートさせたレオンとマチルダ。年齢差も去ることながら、境遇も全く違う2人は最初こそぎこちなかったが、徐々に絆を深めていく。マチルダはレオンの弟子となり、殺し屋修行を積んでいく。

©1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN

ある日、マチルダは家族を皆殺しにした捜査官のスタンスフィールドが、実は密売組織の背後にいることを突き止める。チャンスを逃すまいと、マチルダは大量の銃を持って麻薬取締局に乗り込み、スタンスフィールドを殺そうとするが失敗。拘束されてしまったが、計画を記した置き手紙を読んでいたレオンによって救われた。しかし、本当の危険はこれから。スタンスフィールドは、市警の特殊部隊を総動員させ、レオン殺害を企てていた……。

©1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN 激動のエンディング、植木鉢の意味

スタンスフィールドらの襲来を察知したレオンはマチルダを逃し、身ひとつで立ち向かった。絶体絶命の籠城戦に、特殊部隊は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。敵の目をかいくぐり、ようやく建物の入り口に辿り着こうとしたところで、背後には銃を構えたスタンスフィールドがいた。銃声がにぶく響く。倒れ込んだ瀕死のレオンは最後の力を振り絞り、血だらけの手でスタンスフィールドに何かを手渡す。そこにあったのは、グレネードピン。レオンはスタンスフィールドを道連れにし、その生涯を終えたのだった。

©1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN

再び1人となったマチルダは雇い主のトニーの元へ向かう。レオンが自分のためにお金を残してくれたことを告げられるも、見向きもせず殺し屋として雇ってくれと頼む。断られてしまったマチルダは、学校の寄宿舎を訪ね、レオンの形見だった植木鉢を庭に植える。「もう安心だよ、レオン」。映画は、マチルダの一言で幕を閉じた。

閉幕と共に流れた曲は、スティングの「Shape of My Heart」。1993年に発表した自身5枚目のソロアルバム「Ten Summoner's Tales」に収録された。書き下ろし曲という訳ではないが、ギャンブルの世界に生きる男を歌った曲は、殺し屋レオンの境遇をなぞっているようにも聞こえ、哀愁を創出した。

©1994 GAUMONT/LES FILMS DU DAUPHIN

そんなレオンが命と引き換えに得たのは、“根”だった。孤独なレオンにとって唯一の“友達”だったのが、「根が地面についていないことが自分と同じだ」と愛着を抱いていた植木鉢の観葉植物。再び孤独となったマチルダは、幼いながらレオンから託された植木鉢の意味を考え、植えることでレオンに永遠の安らぎを与えようと思ったのかもしれない。

マチルダのその後も気になる。最後まで殺し屋になることを望んでいた彼女はどのような人生を歩んだのだろう。家族に加えレオンまでも失い、本当の孤独はこれからというところ。普通の12歳を送るには、背負う過去のトラウマが大きすぎる。悲しみと決別し、笑顔を取り戻すことはできたのだろうか。それとも……。

実は、メガホンを取ったリュック・ベッソン監督は、大人になったマチルダを描く続編を企画していた。ところが、複雑な事情により企画は日の目を見ることなく幻に。その詳細は、以下の記事でお読みいただきたい。