夫の不倫相手が16、17歳の女子高生だった 妻が慰謝料請求すると、どんなリスクがある?
夫の不倫発覚はただでさえショックな出来事なのに、相手が学生だった--。そんなつらい相談が、弁護士ドットコムに複数寄せられています。中には、相手が16、17歳の女子高生だったというケースも複数ありました。
相談に寄せられたケースは、いずれも夫は20歳以上で、職場でアルバイトとして働く女子大生、女子高生と恋愛関係に陥ったといいます。このようなケースで、妻は女子高生や女子大生に対して慰謝料を請求できるのでしょうか。澤藤亮介弁護士に聞きました。
●そもそも交際は違法? 未成年との「真剣交際」とは
--女子高生との不貞関係は、そもそも法的に問題はないのでしょうか
アルバイト先の女子高校生(16〜17歳)との不倫交際という話になりますので、(1)その夫は女子高校生の年齢を知っていたこと、(2)性交渉を含む交際であったこと、が前提になるかと思われます。
2人の間が「真剣交際」であったということですが、そもそも「真剣交際」の定義自体がとても曖昧といえます。
その交際の内容(2人の年齢差、最初の性交渉に至るまでの期間、性交渉の頻度、金銭などの授受有無、交際についての保護者からの承諾の有無など)によっては、各都道府県の青少年保護育成条例(淫行条例)違反や、より刑が重い児童買春‧児童ポルノ禁止法違反などの犯罪が成立する可能性があります。
交際相手が未成年の場合、子(女子高校生)から相談をされたり、子の行動を不審に思ったりするなどして、親が警察に相談して犯罪捜査が開始されるパターンも多いと言えます。
本件のような不倫相手が女子高校生の場合で、実際に慰謝料請求を行った結果、自分の夫がこれらの罪を問われてしまうことにもなりかねませんので、具体的なアクションをする前に、慎重な検討や弁護士への相談をした方が良いでしょう。
●民事上の責任は? 慰謝料請求はできる?
--女子高生や女子大生側が、相手が既婚者であることを知っていた場合、女子高生に対して妻は慰謝料の支払いを求めることはできるのでしょうか
先程の話は刑事上の話になりますが、これからは民事上の話になります。
まず、慰謝料が認められるには、民法上の「不法行為」(民法709条)の成立が前提となりますが、男性(夫)が無理矢理性交渉をしたなどの事情がない限り、16〜17歳の未成年とはいえ、自らの意思で既婚男性と性交渉を持ったのであれば、不法行為自体は成立する可能性はあるといえます。
しかし、慰謝料の額については、夫側が20歳を超えておりアルバイト先の上司と考えられることや、妻から見て加害者側である女子高校生が16〜17歳であることなどの諸事情からすれば、通常の慰謝料より低い金額の慰謝料しか認められない可能性も十分あると言えます。
以上のとおり、相手方が女子高校生であっても原則として慰謝料自体は請求できると考えられますが、仮に裁判で慰謝料が認められたとしても通常よりも金額が低くなる可能性が高いと言えるでしょう。
●親に対して請求はできる?
--もし女性側が支払えない場合、相手の親に対して慰謝料の支払いを求めることはできるのでしょうか。親も支払う義務はあるのでしょうか
女子高校生の親に慰謝料の支払いを求めることができるかについては、親権者である親が、民法上の監督義務者等の責任(民法714条)を負うかによります。
本件では、16〜17歳の女子高校生で、アルバイトができる程度の能力があると認められるなど事情からすると、女子高校生は責任無能力者とはいいにくく、その親に支払義務が認められることは一般的には難しいでしょう。
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に現事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱う。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:東京キーウェスト法律事務所
事務所URL:https://www.keywest-law.com