ジャニーズ事務所

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2023年9月11日放送の「クローズアップ現代」(NHK)は、桑子真帆アナウンサーの「ジャニーズ事務所の性加害問題。私たちメディアはなぜ伝えてこなかったのか、検証します」との言葉を皮切りに、テレビ業界がジャニーズの性加害問題に向き合ってこなかった裏側に迫った。

元民放プロデューサー「ジャニーズ関連のものは全てアンタッチャブルに」

約2年間の在籍中に200回以上の被害を受けたという元ジャニーズJr.の大島幸広さんの

「メディアが放送してくれれば(性加害を)止められた部分も絶対あるだろうし、同罪と言っていいくらいじゃないか」「でも過去は変えられないので、今から本当に同じことを繰り返さないでほしい」

という言葉を紹介し、桑子アナは「被害者に事態を動かす役割を担わせてしまった。この事実を重く受け止め、責任を痛感しています」と神妙な面持ちで語った。

1988年以降、ジャニー喜多川氏による性加害の告発本の出版が相次いだことや、2003年に高等裁判所で性加害を認定、04年に最高裁判所で高裁判決が確定したことなどを年表で振り返り、桑子アナは「これまで私たちメディアがこの問題を報じるタイミングがなかったとは言えません」と自省した。

番組では、04年前後にNHKや民放で報道や芸能の責任ある立場にいた53人に、ジャニーズ事務所の性加害を報じてこなかったことについて調査を行い、40人から回答を得たという。

1990〜2000年代にニュースや情報番組に携わったという元民放プロデューサーの吉野嘉高氏は、

「ジャニーズは触れないということですよ。触ると大ごとになる可能性があるから、やり過ごした方がいいと最初に言われたし、CMに出ているタレントさんも多いですから。営業とかスポンサーさんとか、ジャニーズ関連のものは全てアンタッチャブルにしていくと。そこから先は自動的にジャニーズネタが来たらこれは扱えないと瞬時に判断するようになっていく。そこにもう疑問も持たない。条件反射」

と、当時の業界の空気を明かした。

最高裁の判決が出た04年、吉野氏は情報番組の解説者だったという。

「(性加害について番組で触れることが)できなかったわけではないんですよ。これは逃げた方がいいなと、打算でしょうね。例えばジャニー喜多川さんが逮捕された。あるいは逮捕令状が出されたという段階であれば、テレビは確実に報道していたと思います。でも警察からそういう捜査を受けたという情報は僕は得ていないので、自分の役割を越えているのかなと思っていた。報道しなかった結果今のような事態に至っているので、責任ということで言えばその一端はある。ペン(報道)かパン(利益)かの選択において、結果的にはパンの方を選択してしまったのかもしれないと思っています」

と振り返った。

NHK理事のジャニーズ事務所顧問からは「回答は得られませんでした」

2004年当時、紅白歌合戦などを統括するNHK 歌謡・演芸番組部長だった大鹿文明氏は、性加害の問題について認識しておらず、部内でも話題になっていなかったと明かす。

「全くなかったですよね。事務所との交渉を少し慎重にやろうねということが一切なかったですね。(部内では)重大にとらえていなかった。そこに尽きるでしょうね」
「未成年に対して許せないことをやっていたという意識は薄かったなという気はしますね」

と振り返った上で、

「この事件があまりにも若い子供たちをあんな目に遭わせたという、ある種マスコミが加担したんではないかと言われることに対して責任を感じる」
「猛省という言葉を使って軽すぎるのかもしれないくらい」

と悔いた。

桑子アナは

NHKを退職後にジャニーズ事務所の顧問を務めている、長年芸能やドラマ部門にいた元理事にも重ねて取材を申し込みました。性加害が見過ごされていたことへの見解を問いましたが、この点について回答は得られませんでした」

と明かした。

さらに「報道番組として30年前から放送している『クローズアップ現代』でもこの問題を取り上げてきませんでした」として、同番組の編集責任者だった人物の「当時『性犯罪事件だ』という認識が欠落していた」「あの世界はそういうものなんだという認識で、クロ現で特筆して取り上げようということにはならなかった」との声も紹介した。

弁護士「まだまだ突っ込み不足」

今回の特集に対し、弁護士の蔵元左近氏は

「このような調査を報道されること自身は素晴らしいと思います。率直に申し上げてまだまだ突っ込み不足。今回のような事件を二度と再発しないことを考える上では、NHK内の組織上の問題、体制上の問題があったと思いますので、それを究明するような決定的な事実調査が必要です。第三者委員会の設置も必要に応じて行われるべきと思います」

と指摘した。

番組内容について、Xなどでは

「大手メディアでは先鋒的な動きと思う。事務所とべったりで社会的な影響力が大きいからこそこの姿勢は評価したいし今後も期待」
「少なくとも先んじて、NHK内や元民放関係者への取材に『労力』をかけて検証したことは評価される」
「局内的には頑張ったのかもしれないけど視聴者や消費者には関係ない話で欺瞞もいいところ。それこそ第三者委員会に検証させるとかすればいいじゃん」
「よくやったとも言えそうだけど、そもそもこれクロ現30分枠でお茶を濁すようなテーマじゃない、各社各局でそれぞれ調査、総括しなきゃダメでしょ、まだ繰り返すつもりなの?」

と様々な声が上がっている。