帰省シーズン、年を重ねた親の住む実家を見て、終活を考えてしまうもの。ところが家族間のことなのに、スムーズに進まないことが多いといいます。そこで、お互いに気分よく片づけを進めるコツを、片づけヘルパーの永井美穂さんに教えてもらいました。

親には説得ではなく納得を。あくまで親のペースで進める

親の健康状態が心配になったときが片づけを考える頃合い。そろそろ親と話し合ってみよう…そう決めたとしても、焦らずにしっかり段階を踏むのが大切です。まずは、親の気持ちに寄り添う声がけから。
「親が普段どんなふうに暮らしているのか、困りごとがないか、親の暮らしを知ることが片づけの第一歩。この会話の時間を取っておくと、作業上の提案もしやすくなります」

親を無理に説得するのではなく、納得させながら進めていくことが、片づけに対するモチベーションを上げるための大切なポイント。

「たとえば、部屋のあちこちにボールペンが散在していたら、それを全部集めて目の前に出し、1本ずつ書けるか確認していく地道な作業も時には有効です。こうしてペンの多さや書けないペンの存在を目のあたりにすれば、そこで初めて『お気に入りのペン以外は捨てるわ』と、親自身が片づけの必要性を感じるはず。気が遠くなる作業ですが、これは親を説得するのではなく、納得させるために必要なステップです。そうした作業を繰り返すうちに、片づけをした空間に心地よさを感じ、自然と親自身も片づけたいという気持ちにスイッチが入るはず。そこから片づける範囲を少しずつ広げていくと、スムーズに進んでいきます」

 

●コラム:まずは実家に置いてきた自分のものを直ちに撤去

実家の自分の部屋に、漫画本や趣味のグッズなど置きっぱなしにしていませんか?
「自分のものが実家をものであふれさせているケースは意外と多いんです。親に片づけを促す前に、実家に長年置きっぱなしだった自分の所有物は直ちに処分。それだけで、すっきりしますよ」

スムーズな「実家の片づけ」3ステップ

片づけに焦りは禁物。段階を踏んで、親の意欲をアップ。お互いに気分よく進められる片づけにしましょう。

 

●ステップ1:片づけの前に会話をする

片づけは、親の心を知ることから。そのためには親に寄り添う声がけが有効。
「優しい口調で、親が今困っていることや好きなこと、最近の様子などを質問し、そこから片づけの糸口を探して。もし、最近よくつまずいて困るのであれば『歩きやすいように片づけようね』、好きな趣味があるなら『趣味のスペースをつくろうよ』という具合です。ポジティブな未来が想像できる言葉がけで、片づけのモチベーションを刺激しましょう」

【たとえばこんな声がけ】

・最近、調子はどう?
・なにか困っていることはない?
・ごはん、食べられてる?
・好きなことはなに?
など、優しい口調で親に寄り添う声がけを。

 

●ステップ2:親がもっとも過ごす場所からスタート

家の中でいちばん長い時間を過ごすリビングが手をつけやすい場所です。
「まずは、使用頻度が高いものを聞いて、それを取り出しやすい場所に並べます。使用目的が同じものは、ペンとメモ帳といった具合にグループ分けすると使いやすさがアップします。また床置きのものはつまずきの原因にもなって危険なので、じゃまにならない場所に移動を」

もし、棚の中がものであふれていて、取捨選択が大変なら「掃除していい?」と伝え、中のものを全部取り出してみても。
「一度取り出すと、中のものが一気に確認できます。そこから使用頻度の高いものを聞きながら優先的に戻しましょう。あまり使わないものは別の場所に移すなどすれば、棚はすっきり。こうした作業の積み重ねにより、よくいる部屋の使い勝手や快適さがアップ。親自身が片づけの効用に気づき、やる気になるはずです」

 

●ステップ3:片づける場所を少しずつ広げていく

一か所が片づくと、自然とほかの部屋の状態に目が向くように。キッチンやクローゼットなど、片づけの範囲を広げます。
「たとえば、キッチンは食器、クローゼッは洋服など、親ならではのこだわりがたくさんある場所は慎重に。『これはどうする?』といった感じで、一つひとつ要・不要の判断をしながら、親子の会話を楽しんで。ものにまつわるエピソードを聞いてあげると、思い残しが消え、手放せるようになります」

【処分の判断がしやすいもの】

・服
サイズアウトしたもの、1〜2年着ていないもの、家で洗えないようなおしゃれ着、転倒の危険もあるヒールのある靴やサンダルなど。

・食器類
重くて大きい皿、おしゃれすぎて活用する場がないフルーツ皿、ノベルティ、電子レンジで使えない皿、引き出物、複数ある箸など。

・本
読み返すことがなさそうな本、数か月たった週刊誌、1年以上たった月刊誌、工程が面倒な料理本、ホコリやカビまみれの本など。

 

『これからの暮らし by ESSE vol.05』では今回紹介した以外に、50代〜60代の暮らし上手さんが「やめてラクになったこと」、老けない美容とファッション、どっちがおトク?、夏野菜おかずレシピなど、暮らしに役立つ情報が満載。