「自宅で楽器や歌の練習をしたいけれど、近所から苦情が来ないか心配」
「映画やドラマを、音漏れを気にせず思いきり楽しみたい」

こんなときに活躍するのが防音室です。近年ではYouTubeやInstagramなどSNSでの収録や配信でも、音をきれいに録るために部屋を防音室にしたいというニーズが増えています。

今回は、部屋を防音室にリフォームする方法や、防音室設置にかかる費用などについて解説します。

防音の4つの要素

防音室を設置するには、遮音・吸音・防振・制振の4つの要素をふまえる必要があります。

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

遮音
遮音(しゃおん)とは、音を遮断し、外へ出ないようにすることです。具体的には、天井や壁、床に遮音材を使用して、音漏れや外からの音の侵入を防ぎます。

材質によって遮断する音の周波数が変わります。コンクリートや鉄などの重い素材になるほど遮音効果が高まりますが、一般的にはプラスチック系・ゴム系が多く使用されています。また空気の通る場所からも音が漏れるため、遮音ではドアや窓の密閉性も重要です。

遮音材は室内で発せられた音を跳ね返すので、室内に音が必要以上に反響してしまうというデメリットがあります。そのため、調音材を併用して室内での響き方を調節している防音室もあるようです。

吸音

吸音効果のある有孔ボード

吸音(きゅうおん)は、文字通り音を吸収することで、外への漏えいを抑えます。

吸音は音漏れだけでなく、室内での音の反射を防ぐのも目的です。部屋の中で反射した音は、重なりながら壁や天井を通り抜けたり、窓やドアなどの開口部から集中的に漏れて大きく聞こえたりします。そのため、防音のうえで吸音材は欠かせません。

吸音材に使われるのは主に以下の3つです。仕組みや素材、吸音性に違いはありますが、いずれも音のエネルギーを熱エネルギーに変換して音を抑えます。

・多孔質材料
繊維状、スポンジ状の素材で隙間や気泡が入り交じっているもの。ウレタンフォームやグラスウールが代表的。

・有孔板
石膏ボードやハードファイバーボードに小さな穴が無数にあけられたもの。

・板状材料
合板などの板と空気層を組み合わせたもの。一般的に吸音性は低め。

防振
防振(ぼうしん)とは、物体の振動によって起きる音を抑える方法です。

振動による騒音には、人の足音や打楽器の振動、洗濯機・冷蔵庫などの電化製品が発するモーター音や、トレーニングマシンの振動音などがあります。集合住宅の場合、直下の部屋だけでなく、振動が建材を伝って離れた部屋まで届くこともあるので注意が必要です。

ゴムやスプリングなどの吸振材を、音を発するものにあてがったり、防振性の高い床材や二重床を採用したりします。

制振
制振(せいしん)とは、物体の振動を制御することです。

物体のゆれによって周囲に起きる振動を抑えるのが防振であるのに対し、制振では物体のゆれそのものを抑えて音を防ぎます。電化製品の振動音や、金属材が発するビビリ音に対して有効です。

制振材の多くはシート状で、洗濯機やパソコンなどに貼り付けたり、床に敷いたりして使います。たとえば、洗濯機は洗濯槽の回転による衝撃が外カバーの振動を生み出しますが、外カバーに制振材を貼ることで振動が抑制されます。

リフォームで防音室をつくる方法と相場

リフォームで防音室をつくる場合、その方法や相場はどのようになっているのでしょうか。

壁のリフォーム
一般的な壁の防音リフォームには、以下の方法があります。

・壁の中に吸音材や遮音シート、石膏ボードを入れる
壁の内部に防音性の高い材料を入れます。音の種類や高低、音量などをふまえて使う材料を選びましょう。

・換気口を防音リフォームする
音は換気口からも漏れるため、防音対策が必要です。業者に依頼することもできますが、換気口専用の吸音材を購入すればDIYも可能です。

手軽に防音リフォームをしたい場合は、壁に貼り付けられる防音材を使用してもよいでしょう。

窓のリフォーム

防音対策のために二重窓にすることも

窓を防音リフォームしたい場合は、以下の方法があります。

・防音ガラスにする
防音ガラスとは、2枚のガラスで防音フィルムを挟んで圧着したものです。防音フィルムが音を吸収し、熱エネルギーに変換します。

・二重窓にする
窓を二重にすると、2枚の窓の間にある空気の層が防音効果を発揮します。サッシも別に取り付けるため、2つの窓がそれぞれ別個に開閉可能です。

・防音サッシにする
音は隙間から漏れるため、サッシがゆるいと防音効果が落ちてしまいます。密閉性の高い防音サッシに変えることで、音漏れを防げます。

床のリフォーム
床の防音リフォームには、主に以下の方法があります。

・床材の張り替え
元の床材を撤去し、防音性の高い床材に張り替えます。

・二重床工法
空間を挟んで二重に床を張る工法です。支柱や防振材で上の床を支えます。

・重ね貼り
元の床材をはがさず、上に新しい床材を重ね貼りします。

これらのほかにも、防音カーペットや防音マットなどを床に敷くだけの方法もあります。本格的な防音リフォームよりは効果は落ちますが、手軽にできる点がメリットです。

ドアのリフォーム
ドアの防音リフォームでは、重く厚い材質のドアに取り換えたり、ドアパッキンを替えたりして音漏れを防ぐのが一般的です。ドアの隙間から音が漏れていることも多いため、密閉性を高めとより高い防音効果が期待できます。

ドアの材質はさまざまですが、内部に充填剤を入れたものや、スチール製のものは特に遮音性が高いとされています。

ドアを替えることで防音性能が高くなる一方で、重く開け閉めがしづらくなるのがデメリットです。

防音室リフォームの相場

ドラムが叩ける防音室の設置にはかなりの費用がかかる

防音室をリフォームする際の、おおよその費用の相場は以下の通りです。

防音性能の高さや、リフォームする部屋の広さなどでも価格は変動します。音は日中より夜に聴こえやすくなるため、防音室を使う時間帯によっても求められる防音性能が変わります。

また木造、鉄骨、鉄筋コンクリートなど、リフォームする住宅のつくりによっても費用が変わる点も留意しておきましょう。

参照:リショップナビ「自宅の防音室リフォームの値段は?注意点や施工例もご紹介」

組み立て式防音ユニットの設置と相場

ヤマハなど大手メーカーからは、部屋の中で組み立てて使用するユニットタイプも販売されています。

防音ユニットは、立奏のみが可能な1畳前後から、グランドピアノが入る4畳前後までさまざまな大きさがあります。大がかりなリフォームが難しいマンションや、賃貸住宅でも導入可能な点がメリットです。相場は45万~300万円程度で、場合によっては本体価格に加えて工事費用がかかります。

また、一部メーカーからはレンタル式の防音ユニットも出ており、月1万円台から利用できます。

参照:リショップナビ「自宅の防音室リフォームの値段は?注意点や施工例もご紹介」

まとめ

部屋を防音室にする際には、まず遮音・吸音・防振・制振という4つの防音の要素をおさえて、利用目的に応じてリフォーム箇所や材料を選びましょう。

また防音室のリフォームには、騒音レベルの測定や残響のチェックも必要です。部屋の外にいる人にどのように音が届くか、部屋の中で音がどのように響くかの両面を確認しましょう。

DIYでの防音リフォームは、思ったような防音効果が得られないことがあります。施工後、近隣トラブルなどに発展するおそれもあるので慎重に判断しましょう。不安要素がある場合は、信頼できるリフォーム会社への依頼がおすすめです。