6月14日、ヤクルト・パッション対ソフトバンク・ハニーズのリレー対決

●勝敗、話題性で他球団に対抗心

 近年のプロ野球では各球場で趣向をこらしたさまざまなイベントがイニング間に行なわれている。なかでも最近、話題になることが多いのが各球団のチア対抗のリレーだろう。

「元祖はうちです!」。こうきっぱりと言いきるのは、東京ヤクルトスワローズ公式ダンスチーム「Passion(パッション)」マネージャーの本多康太さんだ。

 明治神宮野球場でチア交流のイベントとしてリレーが初めて実施されたのは2016年のことだった。以来、「神宮名物〜チアリレー対決〜」と題した恒例イベントとなっている。

 本多さんは「各球場でも盛り上がりを見せているのはうれしく思います!」と言いながらも、勝敗はもちろん、話題性でも他球団に対して対抗心を燃やしていた。

 実際に、パッションのこのリレーに対する力の入れようは相当だ。開幕前のリハーサル時には、ホームベースから一塁ベースまでメンバーのタイムを測定し、短距離走の得意なメンバーをリレー走者に選出した。

 さらに、スワローズの2軍が試合を行なう戸田球場には陸上競技場が隣接されており、そのトラックでリレーの練習をしたこともあった。


リレーは5回裏のイニング間に行なわれる

●数十秒のリレーにかける情熱

「控え室でも入念にバトンパスの練習をしました!」とはパッションの第1走者のRINさん。勝利のために準備に抜かりはない。

 6月14日、Passionが神宮球場に迎え撃つのは、福岡ソフトバンクホークスの「Honeys(ハニーズ)」。交流戦も終盤にさしかかり、この時点ではヤクルト、ソフトバンクともに優勝の可能性を残していた。

「私の全力ダッシュでホークスに勝利の風を巻き起こします」と、ハニーズ第1走者のNanamiさんが意気込みを語ったように、数十秒で決着がつくサブイベントとはいえ、チームを勢いづけるためにも、両者とも負けるわけにはいかなかった。


左からハニーズの秋花さん、Nanamiさん、Asukaさん、パッションのRUNAさん、RINさん、JUNAさん

 もうひとつ、パッションには負けられない理由があった。スワローズクルー(スワローズのファンクラブ)には「スワレージ」というポイントシステムがあり、ポイントを貯めるといろいろなグッズと交換できる。神宮球場に"応燕"に行くと来場ポイントが加算されるのだが、パッションが勝利すればそのポイントが2倍になるというのだ。ファンのためにも、責任重大な任務だった。

「いつも盛り上げてくださっているスワローズファンの皆さまのために頑張って走ります」とパッション第2走者のJUNAさんはファンの期待をも背負って臨んだ。

 今回のリレーは、3人の走者がバトンをつなぎ、レフト側のファールポールの前をスタート。ライト側のポールの前でフィニッシュするという形式で実施された。

 ハニーズの走者は、Nanamiさん、Asukaさん、秋花(しゅうか)さん。一方のパッションは、RINさん、JUNAさん、RUNAさんがバトンをつないだ。

 RUNAさんの特技は50m走で、パッション不動のアンカーだ。昨夏の横浜DeNAベイスターズ「diana(ディアーナ)」との一戦では、見事な逆転劇を演じている。

「今シーズンもアンカーを務めます。今日も一番でゴールに向かいたいと思います」と、RUNAさんは自信満々。多少のビハインドであれば、RUNAさんで跳ね返すことは十分に可能だろう。


3回裏のイニング間には「ツバメダンス」を披露

●日本一速いチアは私たち!

 この日、ヤクルトとソフトバンクは息も詰まりそうなほどの接戦を繰り広げていた。先行していたソフトバンクに対して、サンタナのタイムリーヒットでヤクルトが1点差に追い上げたところで5回裏が終了。このイニング後にパッション対ハニーズのリレー対決が行なわれた。

 野球の試合とは逆に、先手をとったのはパッションだった。

「第1走者として絶対にリードしてバトンを渡さなくては!という気持ちでスタートを切った」とRINさんがリードをつくると、バトンを受けたJUNAさんも、危なげない走りを見せた。ハニーズAsukaさんも粘るが、その差は縮まらない。

 こうなればパッションの勝ちパターンだ。エースのRUNAさんは差をさらに広げ、公言どおり一番でフィニッシュテープに飛び込んだ。パッションの思わぬ圧勝劇となった。


大盛り上がりのファンを前に激走

 今シーズンのパッションは、このあとにも他球団とのリレー対決が予定されているという。

「次戦も絶対に勝ちたいです! 昨シーズンに引き続き、今シーズンも無敗を目指して頑張ります」(RINさん)

「日本一速いチアは私たち、パッション! 絶対に負けません。ファンの方々のために、スワローズのために全力で走ります」(JUNAさん)

「リレーメンバーを信じていつもどおりの走りで楽しみたいと思います! Let's Go Passion」(RUNAさん)

 今回走ったパッションのメンバーは、早くも次戦を見据えていた。横浜のディアーナは、ファンとのリレー対決で健脚に磨きをかけており、強力なライバルとなりそうだ。

 実際に、7月4日、5日の横浜スタジアムへの"燕征"では、バトンミスもあってパッションは連敗を喫してしまった。

 それでも、ホーム神宮では絶対に負けるつもりはない。"日本一速いチア"の座は、絶対に明け渡さない。