休日の寝だめは本当に疲れをいやすことにならない(写真:Ushico/PIXTA)

休日に家でゆっくり休んでも疲れがなかなかとれない……という人も多いのでは? 習慣化コンサルタントの立花岳志さんは、「本当に疲れをいやすためには、家でゴロゴロするのではなく、“アクティブレスト”が有効」と説きます。立花さんの著書『やってみたらわかった! 40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣』より一部抜粋・編集のうえ、“積極的な休息”について解説します。

体を動かすことが一番の疲労回復になる

日本人は休むのが下手だと言われます。私は会社員時代、欧米人とのつきあいが多く、アメリカやドイツに出張することもあったのですが、欧米人、特にヨーロッパ人と日本人では、休日に対する考え方が根本的に違うように感じました。欧米は休日を楽しむために平日仕事をする人が多いですが、日本は来週も仕事を頑張るために休日はゆっくり休む人が多いようです。

毎日残業続きなので、睡眠不足を解消するためにまずは思う存分眠る。平日は食事も適当になってしまっているので、美味しいものをゆっくり食べる。仕事の疲れをいやすためにのんびりして、ごろごろしながらテレビを見る。そのような休日の過ごし方もときには良いと思いますが、本当の意味で充実した休日とは言えないのではないでしょうか。本当に疲れをいやすためには、家でゴロゴロしているよりも、積極的に外出したり運動したりするほうがずっとリフレッシュできて良いのです。

そもそも多くの人にとっての「疲れ」とは、身体を酷使し過ぎている疲れではなく、デスクワークで同じ姿勢を続けて身体が凝り固まっていたり、パソコンを使い過ぎて目が疲れていたり、気を使い過ぎて神経が疲れていたりというものだと思います。

「アクティブレスト」という言葉があります。直訳すると「積極的な休息」となりますが、身体が凝っているなら動かすことが一番の疲労回復になります。

特に40代以降になると体力が落ち気味になってきますので、疲労回復のためだけでなく老化防止のためにも積極的に身体を動かす習慣を持ちたいものです。自然豊かな場所に出かけて歩いたり、寺社仏閣巡りや美術館などの興味がある場所に出かけたりしましょう。もちろんスポーツをする習慣はなお良いです。テニスやゴルフなども良いですし、ランニングやサイクリングもおすすめです。

凝りをほぐすという意味では、脳の疲れをとるのにも、いつもとは違う刺激を受ける行為を積極的にすると良いでしょう。映画やコンサート、テーマパークなど、日常の自分から離れられる場所に身を置くことで、予想以上にストレスが解消されるものです。

仕事や家事はある意味単調で、同じ種類の刺激を受け続けています。毎日同じ道を通って駅まで行き、同じ時刻に同じ車両の同じドアから電車に乗って最寄り駅に着き、いつもと同じコンビニで同じ飲み物を買って同じ時刻にオフィスに着く。単調な生活を続けていると、刺激が不足して脳も身体も不活性になっていきます。単調な生活はある意味、楽なのです。

不慣れなことや新しいチャレンジは、やったことがないから緊張しますし、ストレスもかかりますから「楽」ではありませんが、「楽しい」ものでもあります。「楽」と「楽しい」は同じ漢字を使っていますが、必ずしも同じ意味ではありません。

楽な生活をずっと続けていると心身ともに衰えていきます。我々は年齢を重ねていくにつれ、マインドが保守的になって新しいチャレンジをしなくなってしまいます。新しいチャレンジをしなくなると世界が狭くなり、さらに考え方や行動が消極的になっていきます。積極的な休日を過ごすことで、平日には受けることができない新しい刺激を心身に与えて活性化させる習慣を持ちましょう。

週末の夜更かしが1週間をダメにする

あなたの睡眠サイクルは平日と休日でどれぐらい異なるでしょうか? 平日と休日で目覚める時間が2時間以上ずれている人は要注意です。平日は寝不足続きで休日にたっぷり眠って補うというサイクルは、心身に良くありません。

我々の身体の中には「体内時計」が備わっています。朝目覚めてから14時間〜16時間が経つと、脳がメラトニンという睡眠を促すホルモンを分泌させ、身体の深部体温が下がり眠くなる仕組みになっています。そのため平日と休日で極端に睡眠サイクルがずれる生活をすると、体内時計もずれてしまうのです。土曜日と日曜日に昼まで眠ってしまうと、日曜日の夜になかなか眠くならないという状態になりがちです。

日曜日の夜に眠くならず深夜まで夜更かししてしまうと、1週間のスタートである月曜日に寝不足で目覚めることになります。しっかり眠って爽やかに1週間をスタートするのと、寝不足でぼんやりした頭で1週間を始めるのとでは、仕事の質に雲泥の差が生まれてしまいます。

そこで体内時計がずれないような生活習慣を構築することが大切です。つまり平日は寝不足、休日に睡眠負債を返済するという生活リズムを改善する必要があります。極力平日と休日の睡眠時間のずれを少なくして、休日も平日に近い睡眠サイクルに整えるのです。

平日に早く眠るためには、仕事の仕方を改善しなければなりません。仕事のやり方などを変え、残業を減らして帰宅を早くしましょう。早く帰宅すれば夕食を食べる時間も早くでき、そのあとのリラックスタイム、入浴も前倒しできます。そうすれば、しっかり眠って翌朝には疲れがとれてリフレッシュした目覚めを得られるのです。

1日の疲れをその夜の睡眠で回復できれば、週末は朝からワクワクしながら元気に目覚め、積極的に活動できるようになります。充実した休日を過ごして、次の1週間を迎え撃つような気持ちの月曜日の朝にしたいものです。

休日は朝目が覚めたら、そのままベッドの中でごろごろ、うとうとするのはやめて、スパッと起きて窓を開け、太陽の光を浴びる習慣を持ちましょう。10分〜15分の朝散歩ができれば、全身に太陽の光を浴びられてなお良いです。

目覚めてすぐに太陽の光を浴びるとなぜ良いのか?

実は、体内時計の1日は、地球の自転周期である24時間より約1時間ほど長い約25時間周期となっています。だから、毎日同じ時間に起きていても、我々の睡眠サイクルは1日1時間ずつずれてしまうことになります。しかし、太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされます。つまり、太陽の光を浴びてから、14時間〜16時間が経つと、脳からメラトニンが分泌されるのです。曇りや雨の日でも太陽の光はしっかり届いていますので、効果はあります。休日はもちろん、平日も目覚めたらまずは窓を開け空気を入れ替え、全身に太陽の光を浴びましょう。

40代ともなると会社での責任も重くなり、勤務時間以外もついつい頭の中で仕事のことを考えてしまいがち、という人が多いのではないでしょうか。特に仕事上でトラブルがあったり気がかりなことが起こったりしているときは、ずっとそのことを考えてしまい気が休まらないものです。しかし、そんなときこそ仕事を離れたら、いったん忘れて心身をリフレッシュしましょう。

気分転換をするのにオススメなのは、何かに没頭する時間を作ることです。受動的にぼんやりしていると、仕事のことを考える余地が生まれます。ぼーっとテレビを見たりしていると、つい頭の中が仕事モードになってしまう人もいるでしょう。

しかし、積極的に何かに没頭すると、仕事のことを考えることができなくなり、気分転換が図れるのです。スポーツでも家でできることでも構いませんので、集中して行う趣味を持ちましょう。

私は筋トレとランニング、それに料理に没頭する時間を積極的に作っています。ランニングは「動的な禅」とも言われ、気分転換にとても良い効果があります。単調なリズムで身体を動かし続けると、心拍も呼吸も高い状態が続き、頭の中が空っぽになるような感覚があります。普段は考えるともなくいろんなことを考えてしまいますが、身体を動かすことに集中していくと、徐々に思考が途切れて瞑想をしているような状態になります。

特に長い距離、10キロ以上走ると瞑想効果が高くなり、走り終えると気持ちがスッキリしています。「ランナーズハイ」という言葉もあるとおり、ランニングをすると快楽物質のエンドルフィンが分泌され、爽快な気持ちになることもあります。


料理に没頭するのもオススメです。料理はひとつひとつの工程に集中することになるので、とても良い気分転換になります。

私は日課として午前中の仕事を終えたら筋トレとランニングをして、シャワーを浴びたあとに昼食を作ります。これらの時間を費やすことで、午前中の仕事の疲れがとれ、リフレッシュして午後の仕事ができます。同様に夕方仕事を終えたあとも料理を作ることで、仕事モードをリセットしてリラックスモードへと切り替えることができています。

気分転換には掃除に没頭するのもオススメです。特に磨き掃除は集中力を使うので良い気分転換になります。曜日ごとに場所を決めて取り組むことで、どんどん家がピカピカになっていくのも気持ちが良いものです。

今は車を持っていませんが、車があったときは洗車に没頭するのも楽しかったですね。ほかにも読書、映画や演劇などを観ること、プラモデルやジグソーパズルを作るなど、何でも良いと思います。

いずれにしても、何かひとつのことに没頭する習慣を持つことで、仕事のことを忘れてリフレッシュすることができます。ぜひ、好きなことに思いきり没頭する時間を作ってください。

(立花 岳志 : 習慣化コンサルタント)