いまや富豪でも入手困難! NSX-Rという「乗ればわかる」日本最高のスポーツカー
この記事をまとめると
■ホンダのかつての最高峰スポーツカー「NSX-R」について振り返る
■ベース車比で120kgの軽量化や空力パーツの追加が行われていた
■今や中古車市場に滅多に出てこない幻のクルマとなっている
ホンダスポーツの最高峰「NSX」を振り返る
ホンダが誇るスーパースポーツであるNSX。しかし、初代NSXは、その凄さが伝わりにくいスーパースポーツカーである。
大人しい内外装デザイン、決して超高性能とは言えない280馬力(5速MT車。4速AT車は265馬力)&30.0kg-mの3リッターV6 NAエンジン(1997年登場の6速MT車用3.2リッターエンジンは31.0kgm)、「人間中心」のコンセプトに基づいた日常域でも扱いやすいパッケージングなど、見た目とエンジンスペックの派手さこそがもっとも重要な従来の(そして現在の)スーパースポーツカーとは真逆の価値観を備えていた。
なお、量産車世界初のオールアルミモノコックボディこそデビュー当時においてもインパクト絶大で、「人間中心」の設計思想はのちに現れるスーパースポーツカーにパラダイムシフトを迫るものとなったが、それでも初代NSXの「控えめなスーパースポーツカー」という印象を覆すには至っていない。
そんなNSXには、走りに特化したバージョンとして作られている、約120kgの軽量化に加え、内外装やパワートレイン(ただしエンジンの最高出力&最大トルクに変更なし)、ボディ、シャシー、空力などの細部にまでファインチューンが施された「タイプR(登場時NSX-R)」が存在し、それはもはや職人の世界と言っていい。
2002年に発売されたNA2型タイプRは、マイナスリフトや「空力操安」こと空力を利用したシャシーセッティング実現のため、専用のエアロパーツを数多く装着しているので、外観の変化はまだ多少なりともわかりやすくなっている。
だが1992年発売のNA1型タイプRは、エンケイ製超軽量アルミホイールや赤バッジを除けば外観の変更点が少ないため、クルマに詳しくない人にはベース車との違いが恐らく伝わらないだろう。
ホンダスポーツはNSX抜きには語れない!
しかしながら、NSX-Rの凄さは、運転すればすぐにわかる。ベース車の初期型5速MT車をかつて所有していた筆者としては、そちらも充分に素晴らしい走りだったが、NSX-Rには敵わない。
「速い、楽しい、とにかく気持ちいい!」
自動車ライターにあるまじき語彙力のなさで大変恐縮だが、NSX-Rを走らせたときの印象はこれに尽きる。いやむしろ、あまりに凄すぎるからこそ、語彙力を失わざるを得ないのだ。
絶大なスタビリティのなか、すべてが滑らかに動き、意のままに操れるため、運転を楽しむことに集中できる。そしてだからこそ、遥かに高いエンジンスペックや派手なスタイルを持つ、同時代同クラスのスーパースポーツカーと並んでも、状況によっては互角以上に速く走ることも不可能ではない。
ただし、その代償として、公道ではハードすぎる乗り心地や、パワートレインやタイヤなどからのけたたましいノイズに、常時苛まれることになる。だがそれすらもあばたもエクボ、大きな魅力の1つに感じられてしまうのだから面白い。とくに「ホンダミュージック」と形容できる、鋭く甲高く滑らかなエンジンサウンドは絶品だ。
そんなわかりにくい凄さこそがNSX、そしてNSX-Rが持つ最大の魅力であり、日本の匠たちが作り上げた、唯一無二のスーパースポーツカーたらしめている。
今や「価格応談」ですら中古車情報サイトに掲載されることが稀になり、財力があっても入手困難になってしまったNSX-R。現オーナーはもちろん、これから所有することになる並外れた幸運の持ち主にも、ぜひ一生手放さず、ガレージに眠らせたままにはせず、大事に乗り続けてほしいと願わずにはいられない。