物価上昇、電気代高騰…「GDP」2期ぶりのプラス成長も楽観視できない理由は？ 専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」（毎週月曜〜金曜 6:00〜9:00）。今回の放送コーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「去年10月〜12月のGDP、2期ぶりのプラス成長」。情報社会学が専門の学習院大学 非常勤講師・塚越健司さんに解説していただきました。
内閣府が発表した去年10月〜12月までのGDPの速報値は、物価の変動を除いた「実質」の伸び率が、前の3ヵ月と比べてプラス0.2％となりました。これが1年続いた場合の年率に換算すると、プラス0.6％で、2期ぶりのプラス成長となっています。
◆GDPは2期ぶりのプラス成長…どう見る？
吉田：2期ぶりのプラス成長となりましたが、これはどうしてなのでしょうか？
塚越：年率換算で0.6％のプラスですが、民間のシンクタンクなどの事前予測は、年率換算で1〜3％のプラスだったので、市場予想よりは低いです。注目はやはりGDPの半分以上を占める個人消費で、前の3ヵ月と比べて0.5％のプラスです。
昨年はコロナ第8波もありましたが、全国旅行支援などもあり国内旅行も増えたこと、飲食も含めサービス消費の好調が要因として挙げられます。ただし、全体として物価上昇と実質的な賃金の目減りの影響もあったので、大きな伸びとは言えません。
輸出も1.4％のプラスです。昨年10月に水際対策を緩和したことで外国人観光客が増え、インバウンド需要が増えた点もGDPの押し上げにつながっています。一方で企業の設備投資は0.5％のマイナス。前の期に半導体製造装置の支出が大きかったことの反動があると内閣府は見ています。他にも、世界的な景気後退が懸念されたことがマイナス要因だと思われます。
また、輸入も0.4％のマイナスです。こちらも前の期に海外への広告関連の支払いが大幅に増えた反動もあると考えられます。全体的に言えば、GDPはプラスですが、GDPに合わせて発表された「雇用者報酬」では、前の3ヵ月と比べて実質マイナス0.2％となっており、物価上昇に賃金の伸びが追いつかない現状です。
吉田：GDPの速報値を、塚越さんはどのように受け止めましたか？
塚越：まず全国旅行支援もあって個人消費が伸び、インバウンド需要も増えた点は良いです。一方で、昨年から続くエネルギーの高騰や物価高、実質賃金の目減りによって、コロナとは別に買い控えや外出制限が増えるとも考えられるので、今回の発表よりも次の1月〜3月期との比較も重要です。
また、海外の動向もやはり重要です。アメリカは年率換算で2.9％のプラス。個人消費などがプラスで、他国と比べても好調ですが、金利引き上げの影響で景気後退になるリスクも常々報じられています。ドイツやフランスといったユーロ圏19カ国のGDP伸び率は、前の3ヵ月と比べて0.5％のプラスです。7期連続のプラスですが、こちらもエネルギー価格の高騰やインフレの影響で成長のスピードは鈍化しています。
中国については、内閣府の試算では0.0％と横ばいです。ゼロコロナ政策は緩和されましたが、その後の急速なコロナの拡大などさまざまな問題がありました。このようにみると、中国のコロナの影響も含め、世界経済は景気後退リスクがあり、日本もこれにどこまで影響を受けてくるかというところです。
◆「Withコロナ」かつ「With節約」の時期に？
ユージ：次の1月期から3月期の比較も重要との話がありましたが、日本GDP、今年1月〜3月はどうなるとみられていますか？
塚越：IMF（国際通貨基金）の予測では、今年の日本の成長率はコロナからの回復が欧米よりも遅かったので、回復も大きくなると予測されていますが、欧米と比べると日本も随分「Withコロナ」が当たり前になってきています。「Withコロナ」だからというよりは、それなりに人出が増えている感じがありますね。
例えば、国内旅行に関しては昨年10月の段階で、コロナ直前の2020年2月と比べて98.7％の水準まで回復しています。旅行支援があったにせよ、（以前の水準と）ほぼ変わりません。回復期だからというよりは、すでに以前の水準に戻っていると見てもいいと思います。そうなると、（今よりも）もっと伸びるかというと、これからどうなるのだろう？ という部分もあります。
ユージ：日常が戻りつつあるので、ここからさらに伸びるということがないかもしれませんよね？
塚越：難しいと思います。やはり問題なのは物価上昇、エネルギー、電気代の高騰。これはみなさんも感じていると思います。そういう意味ですと楽観的な見方はできないと思いますので、残念ながら節約志向、「Withコロナ」であり「With節約」になってきます。そのあたりも注目しながら、今後も推移を見たいと思います。
＜番組概要＞
番組名：ONE MORNING
放送日時：毎週月〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ：ユージ、吉田明世
番組Webサイト：https://www.tfm.co.jp/one/
※写真はイメージです
内閣府が発表した去年10月〜12月までのGDPの速報値は、物価の変動を除いた「実質」の伸び率が、前の3ヵ月と比べてプラス0.2％となりました。これが1年続いた場合の年率に換算すると、プラス0.6％で、2期ぶりのプラス成長となっています。
◆GDPは2期ぶりのプラス成長…どう見る？
吉田：2期ぶりのプラス成長となりましたが、これはどうしてなのでしょうか？
塚越：年率換算で0.6％のプラスですが、民間のシンクタンクなどの事前予測は、年率換算で1〜3％のプラスだったので、市場予想よりは低いです。注目はやはりGDPの半分以上を占める個人消費で、前の3ヵ月と比べて0.5％のプラスです。
昨年はコロナ第8波もありましたが、全国旅行支援などもあり国内旅行も増えたこと、飲食も含めサービス消費の好調が要因として挙げられます。ただし、全体として物価上昇と実質的な賃金の目減りの影響もあったので、大きな伸びとは言えません。
輸出も1.4％のプラスです。昨年10月に水際対策を緩和したことで外国人観光客が増え、インバウンド需要が増えた点もGDPの押し上げにつながっています。一方で企業の設備投資は0.5％のマイナス。前の期に半導体製造装置の支出が大きかったことの反動があると内閣府は見ています。他にも、世界的な景気後退が懸念されたことがマイナス要因だと思われます。
また、輸入も0.4％のマイナスです。こちらも前の期に海外への広告関連の支払いが大幅に増えた反動もあると考えられます。全体的に言えば、GDPはプラスですが、GDPに合わせて発表された「雇用者報酬」では、前の3ヵ月と比べて実質マイナス0.2％となっており、物価上昇に賃金の伸びが追いつかない現状です。
吉田：GDPの速報値を、塚越さんはどのように受け止めましたか？
塚越：まず全国旅行支援もあって個人消費が伸び、インバウンド需要も増えた点は良いです。一方で、昨年から続くエネルギーの高騰や物価高、実質賃金の目減りによって、コロナとは別に買い控えや外出制限が増えるとも考えられるので、今回の発表よりも次の1月〜3月期との比較も重要です。
また、海外の動向もやはり重要です。アメリカは年率換算で2.9％のプラス。個人消費などがプラスで、他国と比べても好調ですが、金利引き上げの影響で景気後退になるリスクも常々報じられています。ドイツやフランスといったユーロ圏19カ国のGDP伸び率は、前の3ヵ月と比べて0.5％のプラスです。7期連続のプラスですが、こちらもエネルギー価格の高騰やインフレの影響で成長のスピードは鈍化しています。
中国については、内閣府の試算では0.0％と横ばいです。ゼロコロナ政策は緩和されましたが、その後の急速なコロナの拡大などさまざまな問題がありました。このようにみると、中国のコロナの影響も含め、世界経済は景気後退リスクがあり、日本もこれにどこまで影響を受けてくるかというところです。
◆「Withコロナ」かつ「With節約」の時期に？
ユージ：次の1月期から3月期の比較も重要との話がありましたが、日本GDP、今年1月〜3月はどうなるとみられていますか？
塚越：IMF（国際通貨基金）の予測では、今年の日本の成長率はコロナからの回復が欧米よりも遅かったので、回復も大きくなると予測されていますが、欧米と比べると日本も随分「Withコロナ」が当たり前になってきています。「Withコロナ」だからというよりは、それなりに人出が増えている感じがありますね。
例えば、国内旅行に関しては昨年10月の段階で、コロナ直前の2020年2月と比べて98.7％の水準まで回復しています。旅行支援があったにせよ、（以前の水準と）ほぼ変わりません。回復期だからというよりは、すでに以前の水準に戻っていると見てもいいと思います。そうなると、（今よりも）もっと伸びるかというと、これからどうなるのだろう？ という部分もあります。
ユージ：日常が戻りつつあるので、ここからさらに伸びるということがないかもしれませんよね？
塚越：難しいと思います。やはり問題なのは物価上昇、エネルギー、電気代の高騰。これはみなさんも感じていると思います。そういう意味ですと楽観的な見方はできないと思いますので、残念ながら節約志向、「Withコロナ」であり「With節約」になってきます。そのあたりも注目しながら、今後も推移を見たいと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
＜番組概要＞
番組名：ONE MORNING
放送日時：毎週月〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ：ユージ、吉田明世
番組Webサイト：https://www.tfm.co.jp/one/
