放置すると危険! 便秘の怖さと対策について教えて!

写真拡大 (全5枚)

食事をしている限り避けられないのが、その副産物ともいえる大便の排せつだ。大便をいつまでも抱え込んでいると、どのような悪影響が考えられるのだろう。そこで、便秘の怖さと解消法について、「しらはた胃腸肛門クリニック横浜」の白畑先生から、詳しい話を伺った。対策のカギとなるのは「バランス」だと言う。

監修医師:
白畑 敦(しらはた胃腸肛門クリニック横浜 院長)

昭和大学医学部卒業。昭和大学藤が丘病院や山王台病院、横浜旭中央総合病院などの勤務を経た2017年、横浜市内に「しらはた胃腸肛門クリニック横浜」を開院。消化器に関することならなんでも相談できる、話しやすいクリニックを心がけている。医学博士。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、日本がん治療認定医、日本大腸肛門病学会専門医ほか資格多数。

慢性の便秘は、潰瘍や大腸炎に発展する危険性も

編集部

便秘を放置していると、やがてどうなるのでしょう?

白畑先生

いいわけがないですよね。大きく分けて、「疾患リスク」「機能低下」「生活の質」の3点で、悪影響が考えられます。

編集部

順番に教えてください、まずは「疾患リスク」から。

白畑先生

大腸内に残った大便のことを「宿便」といいます。この宿便が腸壁を圧迫すると、その部分の血流は滞ってしまいます。この状態は、「宿便性潰瘍(しゅくべんせいかいよう)」や「虚血性腸炎(きょけつせいちょうえん)」を生じさせる大きなファクターです。ほか、肛門付近のうっ血による「痔」も起こりえます。

編集部

続いて「機能低下」についてもお願いします。

白畑先生

大腸の運動が低下することで、腸の筋肉を弱くさせてしまいます。すると、大便を押しだしにくくなるため、排便がより困難になるでしょう。便秘の慢性化という悪循環を招きかねません。

編集部

最後は「生活の質」ですね?

白畑先生

これは、わかりやすい感覚だと思います。おなかの張った重たい感じ吐き気や食欲減退老廃物がたまることによる肌荒れなど、さまざまな症状をもたらします。また、「便秘が解消しない」と考え込んでしまうストレスも問題です。

メンタルな要因が少なくない便秘の仕組み

編集部

便秘の定義とは何でしょう?

白畑先生

学会ごとに違っているようで、昨今まとめられた『慢性便秘症診療ガイドライン』でも、ざっくりとした定義になっています。引用すると「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」です。排便できない日数などが“明確”に決まっているわけではありません。ご本人の気持ちによるところが大きいですね。

編集部

便秘はどうして起きてしまうのですか?

白畑先生

大きく3つの要因が考えられます。以下にまとめてみました。
・器質的便秘
例えば大腸がねじれているなど、体のどこかがおかしいことで生じる便秘。
・機能的便秘
臓器自体に異常はないものの、通過障害や便意を感じにくくなることで生じる便秘。
・精神的便秘
自律神経の乱れや、ストレスなど気持ちの問題によって生じる便秘。

編集部

過度なダイエットなども関係してきそうですよね?

白畑先生

そうですね。便そのものの量が少ないですし、体形や見た目といった何かしらの負い目・ストレスを抱えていらっしゃると思います。一方で、3回の食事が正しく取れ、ストレスのかかりにくいダイエットをしていれば、便秘にならないこともあるでしょう。

編集部

外部環境による影響はありますか?

白畑先生

人事異動や入学、クラス替えなどの多い春先は、便秘の患者さんが多くなるようです。やはり、ストレスによる外部環境が関係しているのでしょう。

特定の改善方法に頼らず、幅広い「腸活」を

編集部

自分でできる整腸の方法はありますか?

白畑先生

良く言われることですが、これもまとめてみました。
1日3回の食事を規則正しく取る
食物繊維が多く含まれる食べ物を適量に取る
適度な運動によって、腸や腸周りの筋肉を動かす
・朝の決まった時間に便座へ座るクセをつける
・あまり考え込まない、ストレスをためない

編集部

市販薬を使うのはどうでしょうか?

白畑先生

市販薬は刺激が強すぎる傾向にあります。強いだけに、使い始めはすぐに効くものの、次第に体が慣れてきてしまうのです。ですから、薬に頼るのではなく、根本原因を解決していきたいですね。

編集部

誤った対処法、好ましくない方法は?

白畑先生

排便前に“水洗便座”で肛門を刺激する悪習です。自然な便意を遠ざけますし、衛生的にも問題ですので、絶対にやめてください。100%良くありません。

編集部

医院での治療としては、どのような方法がありますか?

白畑先生

まずは器質的便秘の有無、つまり臓器の不具合がないかどうかをしっかり検査します。器質的便秘でなければ、生活習慣の指導に加え、原因にあわせたお薬を調整していきます。最初のうちは刺激性の強いお薬を使うこともありますが、様子を見ながら、刺激の弱いお薬に切り替えていきます。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

白畑先生

便秘の原因を簡単に言うなら、「バランスの乱れ」になるでしょうか。睡眠にしても、栄養にしても、ストレスが関わる自律神経にしてもです。医師ができることとしたら「お薬を処方する」ことですが、お薬だけで解決するものではありません。ですから、「一つの答え」を安直に求めず、多方面から取り組んでいってください。何ごとも多すぎず、少なすぎず、バランスが肝要です。

編集部まとめ

便秘は大腸の筋肉を弱め、慢性化という悪循環をも招きかねません。慢性化は、腫瘍や大腸炎のリスクを、さらに高めます。そんな便秘は、考えていたよりデリケートな問題で、さまざまな「バランスの乱れ」から生じるとのこと。便秘を治すというより、日常の中の悪い部分を正し、その結果により快方へ向かうのがコツかもしれません。ただし、「やらなきゃ感」はストレスの基。理想的な自分になるというポジティブシンキングを持ってください。