「2人目を作らないなら離婚」という夫、妻は子育てに不安 内緒で避妊リングをつけたら、訴えられる?
「主人は2人目を欲しがっているのですが、勝手に避妊リングをつけたら訴えられますか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者の夫は、1人目の出産育児の時には、全く自分の生活を変えずに飲み歩いていました。現在も週の半分は飲みに行き、無断外泊も当たり前だそうです。
そんな夫の生活スタイルが変わるとは思えず、2人目についてはのらりくらりとかわしてきたという相談者。しかし、夫から「2人目を作らないなら離婚してくれ」と言われたり、何かにつけて「別居だ」「離婚だ」と言われたりするようになりました。
自分の身は自分で守ろうと、避妊リング(子宮内に挿入する避妊具)などをつけることも考えている相談者。夫に内緒で避妊リングをつけた場合、相談者が訴えられてしまったり法的に不利な状況になることはあるのでしょうか。鳥生尚美弁護士に聞きました。
●「相談者が訴えられるということは考えにくい」
「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「リプロダクティブ・ヘルス」は、妊娠・出産など生殖に関わるすべてにおいて、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であることを指します。
「リプロダクティブ・ライツ」は、産む・産まない、いつ・何人子どもを持つかなど、生殖に関することを自分で決める権利です。これらは、性や身体のことを自分で決めることができる権利で、女性の自己決定権として保障されるものです。
もっとも日本の社会においては、いまだこの概念についての理解が進んでおらず、性と生殖に関わる事柄の社会的な状況には課題があります。
相談者が、主体的にとりうる方法で避妊をすることは、上記の自己決定として認められます。それによって相談者が訴えられるということは考えにくいです。
むしろ、夫が「離婚」などの不利益を示して妊娠・出産を強いることは、妻の自己決定を軽視する不適切なものというべきでしょう。別の観点から、婚姻関係にあっても、相手が妊娠を望まないのに避妊に協力しないことはDV(性的な暴力)にあたります。
もっとも、夫が2人目の子を授かりたいと希望すること自体に問題があるわけではなく、それぞれの自己決定を互いに尊重した上で、どのような家庭、夫婦関係を求めるのかということに向き合う必要があると思われます。
それをしなかった、できなかったということで、法的な離婚原因ではなくとも、夫婦関係に影響する可能性はあります。
【取材協力弁護士】
鳥生 尚美(とりゅう・なおみ)弁護士
早稲田大学法学部卒業。2006年弁護士登録(第二東京弁護士会所属) 日本司法支援センターの常勤弁護士を経て、あけぼの綜合法律事務所を開設。 中心業務は離婚・相続などの家事事件、とりわけ子の親権、監護者指定、面会交流、養育費等離婚問題の中での子どもに関する事案を多数取り扱っている。
事務所名:あけぼの綜合法律事務所
事務所URL:http://www.akebono-sogo.jp