長屋と共同住宅には明確な違いがある!? 法令上の制限や共通点も解説!
長屋、共同住宅と聞くと、似たような建物をイメージする人が多いかもしれません。ですが、両者には建物の作りや法律上の扱いといった、明確な違いがあります。
この記事では、長屋と共同住宅の間にどのような違いや共通点があるのか、建築基準法や都市計画法などの関連法の内容を交えて詳しく解説していきます。
長屋とは?
まず、長屋とはどのような建物を指すのか見ていきましょう。長屋とは、2戸以上の住戸からなる集合住宅で、外から各住戸へ直接出入りができるものをいいます。建築基準法において長屋は一般的な住宅に分類され、その多くが木造です。
長屋というと、下町にある平屋の住宅を想像するかもしれませんが、近年では2階建てや3階建ての「現代版長屋」ともいえる住宅が増えており、「テラスハウス」や「タウンハウス」などと呼ばれます。
テラスハウスとは、戸建て住宅のような独立した住戸が連続している長屋建築のことです。各住戸は隣接する住戸との間にある壁のみを共有しています。タウンハウスも独立した住戸が連続している長屋建築ですが、敷地を共有しているため、共用の敷地内に庭や駐車場などが設けられている点が特徴です。
また長屋には、横並びに住戸が連続している棟割長屋と、上下の階で独立した住戸になっている重層長屋があります。
なお、二世帯住宅のうち、住戸それぞれの出入口が独立していて、中でもつながっていない住宅も長屋に該当します。
共同住宅とは?
対する共同住宅とは、複数の住戸からなる集合住宅のうち、エントランスや廊下、階段といった共用部分があるものを指します。外から各住戸へは、共用のエントランス・廊下・階段を通ってアクセスする作りです。
一般的なアパートやマンションは共用の廊下や階段などを有しており、共同住宅に分類されます。ただし、アパートと呼ばれるものの一部は外から各住戸へ直接出入りできるため、長屋に該当するケースもあります。
後ほど詳しく解説しますが、共同住宅は建築基準法上の特殊建築物に分類され、耐火性や消火設備の設置基準など、一般的な住宅である長屋に比べて規制が厳しいのが特徴です。
こうしたことから、共同住宅は軽量鉄骨造や鉄筋コンクリート(RC)造が多くなっています。
長屋と共同住宅の明確な違いとは?
長屋と共同住宅には構造面・法律面それぞれにおいて明確な違いが存在します。両者の具体的な違いについて詳しく紹介していきます。
共用部分があるかないか
構造上の違いは、先述のとおり共用部分の有無です。共同住宅には共用部分があるのに対し、長屋にはありません。
共同住宅はエントランス・廊下・階段・エレベーターといった共用部分を通り抜けて住戸へ入りますが、長屋には共用部分がなく、外から各住戸へ直接出入りします。外部に面して各住戸の玄関ドアが並んでいるようであれば、その建物は長屋です。
特殊建築物かどうか
法律上の違いは、特殊建築物に該当するかどうかという点です。長屋は建築基準法上の特殊建築物に該当しないのに対し、共同住宅は該当します。
特殊建築物は建築基準法第2条2項で定められており、不特定多数の人が利用したり、周辺環境に大きな影響を及ぼしたりすると考えられる建物に対し、防火や避難に関する規制が設けられています。
特殊建築物に求められる主な要件は次のとおりです。
● 耐火性基準を満たすこと(3階より上の階を耐火建築物にしなくてはならない)
● 建物定期報告を実施すること(3年ごとに専門家による調査・点検を行い、自治体に報告しなければならない)
● 一定の消防設備を設置すること(階数や面積などに応じ、消火器・スプリンクラー設備などを設置しなければならない)
特殊建築物に該当しない長屋は、建築基準法上のこうした要件を満たす必要がないため、防火や避難などに関する規制が共同住宅に比べて緩いといえます。
長屋と共同住宅の共通点とは?
構造面や法律面で明確な違いがある長屋と共同住宅ですが、両者には共通点もあります。続いては、長屋と共同住宅の共通点を順番に見ていきましょう。
どちらも集合住宅の一種
長屋と共同住宅の一つ目の共通点は、どちらも集合住宅の一種であるということです。
集合住宅とは、1棟の建物の中に独立した住戸が複数ある住宅を指します。共同住宅と集合住宅は同じような意味で使われるケースもありますが、集合住宅に共用部分の有無は関係ありません。
つまり、集合住宅をさらに細かく分類したものが、長屋と共同住宅ということになります。
どちらも市街化抑制地域、工業専用地域には建築できない
「市街化調整区域」と「工業専用地域」には建築できないというのも、長屋と共同住宅に共通するポイントです。
市街化調整区域とは、都市計画法で定められた都市計画区域による区域区分の一つであり、市街化を抑制する目的で設定されます。
一方、市街化がすでに進んでいる地域や、今後優先的に市街化を図るべきとされる地域に設定されるのが市街化区域です。市街化区域は用途に応じた13の用途地域を定めることになっており、そのうちの一つが工業専用地域です。
工業専用地域は名前のとおり、工場を建てるための地域であるため、住宅や店舗、学校などは建築できません。
どちらも一般住宅よりも火災等のリスクが高い
長屋と共同住宅の違いの項で解説しましたが、長屋は建築基準法上の特殊建築物ではありません。そのため共同住宅と異なり、住宅用火災報知器以外の消防設備の設置や、消防点検の実施は義務付けられていません。
しかし、長屋も共同住宅と同じ集合住宅である以上、一般住宅よりは火災等のリスクが高いと考えられます。特殊建築物ではないといっても、一般住宅以上に防火対策をしっかり講じなければならないという点では共同住宅と共通しています。
また、地方自治体が定める条例によっては、長屋のほうがより厳しく制限される場合もあるため注意が必要です。
まとめ
似たような意味合いで捉えられがちな長屋と共同住宅ですが、共用部分の有無や特殊建築物に該当するか否かという点において、明確な違いがあります。特殊建築物に該当する共同住宅と該当しない長屋では、防火や避難などに関する規制内容も大きく異なります。
一方、長屋も共同住宅も集合住宅の一種であり、市街化調整区域・工業専用地域には建築できないといった点では共通しています。
長屋や共同住宅の購入や賃貸を検討する際には、こうした両者の違い・共通点を理解したうえで、物件選びをするとよいでしょう。