※この記事は2013年05月04日にBLOGOSで公開されたものです

　ゴールデンウィークも後半戦！

　とはいえ、会社員でない自分にとっては、なんら関係のない話であるとともに、ちょっと出かけようにも混み合っていてめんどくさいことこの上ない。

　ゴールデンウィークに唯一自分に関係があることといえば、メーデーくらいである。今年も様々な場所で大小取り混ぜた集会が行われ、労働者のシュプレヒコールが日本中を覆った。(*1)

　ということなのだが、各地で行われたメーデーで主張されたことなどを、アップされた写真や記事などから伺うに、どうも疑問に思うことが多い。

　TPP反対は、メーデーの趣旨とも一致するし、当然、主張されるべき議題だと思う。

　逆に「アベノミクス反対」というのは、あまりに短絡的な批判であり、アベノミクスの何がどう悪いのかを細かく主張しなければ、単純に株価が上がっているという事実に勝つことはできないだろう。少なくともシュプレヒコールやプラカードで主張するには、難しい議題である。

　さらに「オスプレイ反対」なんてのは、果たしてメーデーで行うべき主張だろうか？　オスプレイの配備が労働者の問題と、一体何の関係があるのか。僕には全くわからない。

　ましてや「原発ゼロ」などという主張は、もはや参加者同士で殴り合いの喧嘩が起こってもおかしくない主張ではないか。節電要請や電気代の上昇で煮え湯を飲まされている中小企業の従業員からすれば、原発ゼロどころか早期可動こそ訴えたいことなのではないだろうか？

　しかし、メーデーでそうした意見の対立があったとは聞かない。 　アベノミクスの何に反対するのかとか、なぜオスプレイ反対なのかとか、本当に原発ゼロが労働者のためになるのかとか、そうした対立があったとは聞かない。

　みんな仲良く横断幕やプラカードを手に、意気揚々とシュプレヒコールを行ったと聞いている。 　「絆」なのだろう。

　主義主張の細部が違っても、そのことを問わない絆。いろんな立場の人がいても、それを気にしない絆。

　普段は正社員として労働しながら、毎年１度のビッグイベント。意見を対立させるよりも、みんなで仲良く楽しいデモ更新。終わった後はみんなで居酒屋にでも行って、ビールで喉を潤すのだろう。なんと素晴らしい絆だろうか。出会い……は期待できないか。参加者の年齢層を考えるに。

　僕はデビューして以来、幾度も「労働者を分断しようとしている」という批判を受けてきた。要するに、僕の主張が、正規労働者とと非正規労働者の間に線引をし、分断し対立を煽っているという批判である。

　しかし、それからもう６年以上が過ぎ、彼らの行なっているデモを見ると、「やはり労働者を分断しているのは、彼ら自身であり、僕はそれを指摘しているに過ぎない」ということが、ハッキリと分かる。

　メーデーのシュプレヒコールにおいて、細かな差異を抱える、多種多様な人々の問題は、その精査がされることもなく、すべて左派的なイデオロギーに吸収されてしまう。

　労働者の意見など、実際にはどうでもよく、左派的な大きく括った話題に対して賛同することのみを求められる。デモの参加者は主体的な労働者ではなく、単なる人間拡声器に過ぎない。

　その結果、電気料金で困っていても原発ゼロを主張することを、その空気をもって強要される。

　シュプレヒコールを上げる側になるならまだマシで、シュプレヒコールを上げているプチブルたちの生活のために働く非正規労働者は、デモにも参加せずにコツコツと働いている。

　こうして出来上がった「絆」の上に立ち、彼らは「正規も非正規も共闘せよ」とか言うわけだ。何が悲しくて非正規の人間が正規のベアや雇用を守れと叫ばなければならないのか。

　しかし、作られた「絆」で麻痺した人たちは、いつまで経っても他者からの不満に気づかない。

　そして今年もこうしてイデオロギーに染まりきったデモを繰り返す。そんな不毛な「絆」が、今年も再確認されただけだった。

*1：全労連メーデー、原発ゼロも訴え　「正規雇用を当たり前に」（47NEWS）http://www.47news.jp/CN/201305/CN2013050101001192.html

プロフィール
赤木智弘（あかぎ・ともひろ）
 1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。

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