【新聞チェック】これさえ読めば分かる！　民主党代表選をめぐる各紙のスタンスは？ - BLOGOS編集部

2022年3月30日 0時0分

※この記事は2011年08月20日にBLOGOSで公開されたものです

迫りくる民主党代表選をめぐり、「ポスト菅」レースがさらに過熱してきた。

今回の代表選はまさに「乱立」状態。
しかも、今後さらに誰が立候補するかで各陣営の戦略が丸っきり変わってしまうというここ最近では見られなかった混迷ぶりだ。

そんな中、ポスト菅レースについての２０日の各紙報道は、それぞれの新聞の"色"が出ていて非常に興味深い。

今回は以下で簡単に各紙の違いを紹介していく。(BLOGOS編集部・野村)

朝日２面「主役は小沢氏」

朝日新聞は１面で今回の民主党代表選を、立候補の意向を表明した海江田万里・経済産業相と、有志議員の立候補要請に前向きな姿勢を示した鹿野道彦・農林水産相を挙げて「乱立の様相を帯びてきた」と述べ、両者が小沢氏とさほど遠からぬ関係にあることから、「小沢氏の動向が焦点となってきた」と伝える。

２面では「代表選　主役は小沢氏」と見出しをつけて海江田氏と鹿野氏が融和を掲げ、小沢氏に支援を求めて擦り寄っていると指摘。
党所属の国会議員４００人による投票で行われる今回の代表選において、約１２０人とされる小沢グループの支持獲得がカギとなることから、「『脱小沢』を掲げた菅政権の終焉（しゅうえん）も近づき、小沢一郎元代表が復権しそうだ。」とする。

海江田氏は３０～４０人程度の鳩山グループに属しており、現状では支持基盤に乏しいものの、１９日午後に小沢氏を国会内の事務所に訪ねて会談を行っている。
直近でも「ここ１年、民主党のあらゆる力を結集してことに当たれなかった現実がある。党の総力を挙げなければいけない」と述べるなど、小沢氏の党員資格停止"解除"をちらつかせているとされる。

一方の鹿野氏は９７年の新進党の党首選で小沢氏と一騎打ちを演じ、確執が残るとも言われるものの、週明けに小沢氏と会談する方向で調整中と伝えられる。
鹿野氏は１９日に国会内で２６人の党内議員から立候補要請を受けており、「内閣総理大臣としてふさわしい政治家は鹿野さんしかいない」とする文書を手渡されており、小沢氏や鳩山氏との会談を行った上で、近々正式に立候補を表明するのではと予測されている。

しかし、こうした情勢を伝えながらも朝日新聞は、両者が小沢グループの支持を受け、代表選を勝ち取った場合には、仮に首相の座を射止めてもマニフェストの修正と連立拒絶の方針から、「野党対策にてこずるのは必至」と論じる。

さらに、前原グループ・野田グループの動きについても同紙は、「仙谷氏の基本戦略」を以下のように分析している。

・在日外国人からの献金問題で辞任した前原誠司前外相は温存し、今回は野田氏を擁立
・「脱小沢」路線を主導した前原・野田両グループの計約７０人を巻き込み、多数派を形成する

だが、野田氏が掲げる増税路線・大連立構想に対し、小沢氏に対する「中間派」議員らによる「財務相のいいなり」といった異論が噴出したり、小沢グループの拒絶を招くなどの反発が相次ぎ、その路線をあいまいにするなど修正に追われている。

その上、世論調査や選挙基盤の弱い若手議員を中心に人気の前原氏と１７日に会談した際、野田氏は前原氏に支援を要請したが、その返事を保留されている状態だ。
前原氏が立候補を「決めかねている」状況だけに、ここが揺らげば一気に「脱小沢」票を食い合い、窮地に追い込まれる可能性すら残る。

こうした状況から、いずれの可能性をも考慮する仙谷氏は、小沢グループの反発を抑えるために１８日の前原グループ会合でこう強調したとされる。

「だれが好きとか嫌いとかいう政治は、乗り越えないといけない」

読売４面「前原氏にやきもき」「鳩山G、3分裂の様相」

読売新聞も１面は「小沢元代表に支援要請　海江田・小沢鋭氏」と、こちらも両氏の「小沢詣で」による党内融和路線を伝える。
その中で、小沢氏が９１年の自民党総裁選で宮沢喜一・三塚博・渡辺美智雄の３氏を事務所に呼んで「面接試験をした」というエピソードを持ち出すほど。

だが、政治面での解説の見出しは「前原氏にやきもき　出馬なら各陣営戦略見直し」。
野田氏が危機感を募らせる前原氏の出馬について、野田グループ会合では「前原氏が出馬したら、票が割れる」との声が相次いだと伝え、週明けに前原氏と再会談の上、改めて野田氏への支援を求める考えと伝えている。

また、出馬に意欲を示しながらも、直近で代表選への対応に触れていない樽床議員にも、同様の理由で前原グループの動きが影響しているとの見方を伝える。
「小沢一郎元代表グループも前原氏の動向を注視している」とした上で、「小沢元代表は（これまで意中の候補を明らかにしていないため、自らの復権のため、前原氏の擁立をひそかに画策しているのでは」との観測まで伝えるなど、２０日の読売新聞はこの点で際立っていた。

一方で、鳩山グループも今回の海江田氏出馬表明で「３分裂に陥っている」とし、「『鳩山裁定』により、海江田氏か小沢鋭仁氏かに候補を一本化し、グループ分裂を極力回避すべきだ」との声も強まっていると伝えるが、鳩山氏も「小沢一郎元代表の考え方をうかがいながら決めたい」とも語っており、結局は「小沢元代表の決断待ち」との見方を報じている。

この他にも４面の中では、「ポスト菅を問う」というコーナーでは「復興増税やむを得ない」という江田五月法相へのインタビューも掲載していた。

毎日２面・岩見隆夫氏コラム「『中連立』がいいのでは」

毎日新聞は代表選関連の話題を２・５面で報じたが、こちらも基本的な論調は「"小沢詣で"で票奪い合い」といったもの。
だが、中では海江田氏を支持する赤松元農相が１８日、同氏と支持基盤が重なる小沢鋭仁元環境相に対し、「一緒にやった方がいい」と電話をかけたエピソードなどを紹介し、「両者を一本化する動きも出始めた」とも報じている。

この他にも、鹿野農相が小沢一郎元代表のみならず、同時に非小沢系の渡部恒三最高顧問にも面会を要請した情勢を伝え、同氏が「早期に特定のグループ色がつくことを避けたと見られる」と報じたり、旧民社党グループが川端達夫前文科相を念頭に独自候補擁立を目指す動き（本人は慎重姿勢）を伝えている。

中でも目立ったのは２面の目立つ場所に掲載される客員編集委員・岩見隆夫氏のコラムだ。

大連立構想を語る野田財務相に対し、小沢元代表を「大連立仕掛けの先輩」と位置づけ、

　かりに３党大連立が実現した場合、衆院与党は４４２議席、全議席の９２％を占める。超巨大与党の出現だが、それでいいのか。野田支援の民主党幹部は、

　「１年とか期間限定の救国内閣が望ましいが、４００議席を超すと多すぎてまとまりにくい。この際、民主、自民とも基本政策で大きく食い違う人たちとはたもとを分かって、３００議席前後の中連立の方がリーズナブル（合理的）ではないか」

　と、政界再編の意図ものぞかせる。大連立と吹っかけて中連立で収める、という再編戦略も悪くないかもしれない。

と述べるコラムは、小沢元代表が「４年前の画策を思えば、野田構想には反対しにくいに違いない」と論じた上で、「この非常時、いっとき、損得を脇に置く勇気を持ってほしい」と大連立、いや、中連立に期待をかける内容となっている。
　
この点が他紙より際立っている中、５面では票の奪い合いが進む代表選で政策論争が希薄となっている現状を伝える紙面となっている。

日経３面「意欲続々　見えぬ対決構図」

日経は他紙と同様の論調で、「前原」「小沢」に党内の視線が注がれていると伝える一方、３面では最後に『「小沢神話」に陰り』として、以下のように伝える。

政治とカネの問題を抱える上、前回代表選で菅首相に敗北するなど「小沢神話」に陰りも見えるだけに、（小沢氏は）勝てる候補を支援するのが基本戦略だ。

今回の代表選は小沢元代表が直前まで対応を表明しない状況から、「大本命」が出てくることなく、候補者が乱立する事態となっていると分析している。

【次ページ】産経・東京は独自路線？

産経社説「耳疑う小沢氏処分の解除」

産経は社説にて、今回の代表選で小沢元代表に対する党員資格停止処分の解除を求める動きについて、「政権政党として耳を疑う」と「主張」を展開。

　民主党は今年２月、「法に基づき国会議員本人が起訴された事実は重い」として小沢氏の党員資格停止処分を下したばかりだ。具体的には判決確定まで党の役職に就けず、公認や活動資金も得られないなどの内容だ。いったい、どんな理屈をつければ代表選実施が処分解除につながるのか。党のけじめをつけたのではなかったか。

　強制起訴の裁判も進んでいないのに、党倫理委員会などで検討を重ねた正式決定の変更を安易に論じる状況そのものが、党への信頼をさらに失わせている。

２面では「猫もしゃくしも　小沢詣で躍起」「数にひれ伏す」など全面批判モード。
　
また、３面では菅首相の資金管理団体が北朝鮮による日本人拉致事件の容疑者の長男が所属するとされる政治団体「市民の党」から派生したとされる「政権交代をめざす市民の会」に対して政治献金を行っていた問題を「法抵触の疑いも」と徹底追及。

社説でも「菅直人首相も、外国人からの違法献金や北朝鮮と関係の深い政治団体への不適切献金の問題を抱えながら、真相を明らかにしない。退陣でうやむやにできると踏んでいるのだろうか。」と述べた上で、「小沢氏の問題」と絡めて「政治とカネをめぐる問題のけじめこそ、代表選で改めて問われなければならない。」と文を締めていた。

東京新聞３面「次の首相『脱原発』ゼロ」

「政治とカネ」問題からのアプローチとなった産経論調に対し、東京新聞のアプローチも同紙の色が出る。

３面・「核心」に掲載された「次の首相『脱原発』ゼロ」とした見出しの文章は、「菅直人首相の後継を決める民主党代表選は、首相が『脱・原発依存』に踏み込んだ原子力エネルギーをどうするかが、大きな争点になる」と始まり、名前が出ている候補のうち誰が首相になっても「脱・原発依存」のスピードは遅くなると指摘する。

同紙による野田氏の対原発政策への評価は「『原発維持＝経済成長』という古い政治の枠組みを離れていないように見える」と厳しく、他の候補についても「方向性は大差はない」と断言する。

その上で、