久保建英は今季マジョルカで公式戦31試合に出場【写真:Getty Images】

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【特別分析#1】元ブラジル代表DFジョルジーニョは久保の攻撃面での能力を高評価

 日本代表MF久保建英は、川崎フロンターレの下部組織を経て、10歳から13歳までの3年半をスペイン1部の名門FCバルセロナの下部組織で過ごす。

 帰国後、FC東京でプロ選手になり、2019年6月にレアル・マドリードへの移籍後は、レンタルでマジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ、そして現在のマジョルカでのプレーに至る。日本の未来を担う20歳のレフティーについて、かつて鹿島アントラーズに所属し、欧州サッカーも知る元ブラジル代表DFジョルジーニョ氏に訊いた。

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 2019-20シーズン以来2度目となるマジョルカへ加入した久保。シーズン途中には膝の怪我で離脱し、現地時間5月22日のリーガ・エスパニョーラ最終節オサスナ戦(2-0)で出番はなかったが、チームは無事に1部残留。自身も公式戦31試合に出場して2得点3アシストという結果を残した。

 今年1月のスペイン国王杯(コパ・デル・レイ)4回戦のエスパニョール戦(2-1)では華麗な直接フリーキック(FK)を沈め、ほかにも果敢な仕掛けでマジョルカの攻撃を牽引した久保。鹿島の第1次黄金期を支え、ドイツ1部レバークーゼンや名門バイエルン・ミュンヘンでプレーした経験も持つ元ブラジル代表DFジョルジーニョ氏の目にはどのように映ったのか。

「久保はとても攻撃的な選手だよね。ゴールに直結するための動きをする。そして、能力とクオリティーが非常に高い。その場に応じて、ドリブルやフェイントを非常に簡単そうにやってのける。1対1にも強い。プレーのスピードも早い。非常に器用なうえにインテリジェンスもある。ビデオ映像では、ボールを奪い返す場面はいくつか見たけど、基本的には攻撃の場面しか入っていないから、戦術的な規律やポジショニングなどを分析することはできないけどね。

 久保に関して言えるとすれば、試合に出なければならない。特に20歳という年齢を考えると、試合でプレーすることが非常に大事なんだ。だから、レアル・マドリードは彼をどこにレンタルするのがいいかを考えないといけない。彼がマジョルカで、もしくはこれまでのクラブでも、あまりプレーの時間を与えられていないのであればね。Jリーグでもう1度プレーすることだって、彼の成長には大事なことになるかもしれない。もしくはスペインで続けるとしても、彼ほどのポテンシャルがあるならば止まってはいられない」

スタメンとして継続してプレーすることを要求

 久保の場合、ベンチにいても、いざ投入されたら試合の流れを変えることができる。そのため、多くのスペインメディアやサポーターもそのクオリティーを認めている。もっとも、ジョルジーニョ氏は“切り札”的起用を自分で認めてはならないと見解を述べる。

「ただ、選手に対して、こういう見方をする監督もいるんだ。『彼は後半の選手だ』と。それは久保にとっていい傾向ではない。サポーターまでこう思い始める。『久保が投入されたら、試合を変えてくれる』と。だけど『では、なぜ、そういうプレーをスタメンの時にはしないのか』と。そういう印象が刻まれることを、自分自身が認めてはいけないんだ。『投入されたら、僕が試合の流れを変える』という考えに慣れてはいけない。久保がその状況に満足しているはずはないだろうけど、いざスタメンで試合を始めれば、同じようにはいかない。そうなってはいけないんだよね。

 もちろん、起用を決めるのは監督だ。久保が日々どうであるか、戦術的に監督が指示することを果たせているのかまで僕は知らないから、監督の方針に疑問を投げかけたいとは思わない。ただ、攻撃的な場面でのプレーの映像を見ただけでも、彼の技術的なクオリティーが非常に高いのは、はっきり分かる。だからこそ、スタメンとしてプレーしなければならない。もう日本のフル代表にも招集されているならば、継続してプレーすることが非常に大事になるんだ」

 久保がスペイン4年目でさらなる成長を遂げられるか。それには、スタメンとしてシーズンを戦い抜き、結果を残すことが求められるだろう。

[プロフィール]
ジョルジーニョ/1964年8月17日生まれ、ブラジル出身。アメリカRJ―フラメンゴ―レバークーゼン(ドイツ)―バイエルン(ドイツ)―鹿島―サンパウロ―ヴァスコ・ダ・ガマ―フルミネンセ。右サイドバック、ボランチとこなし、攻守でチームを支えたユーティリティーで、ブラジル代表としてワールドカップ優勝も経験。鹿島在籍4年間でJ1リーグ通算103試合17得点。リーグ優勝を果たした1996年にはMVPとベストイレブンに輝いた。2022年5月18日に母国ブラジル1部アトレチコ・ゴイアニエンセの監督に就任。(藤原清美 / Kiyomi Fujiwara)