餅月ひまりさん(左)、赤月ゆにさん(ゆにクリエイト提供)

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特定のファンがSNSで誹謗中傷を繰り返しているとして、被害を受けた動画配信者が異例の警告をした。

スタッフが抑うつ状態になるほど嫌がらせが続き、被害を公表するとともに関係の断絶を宣言した。トラブルの背景には何があったのか。

「勝手にストーリーを仕立て上げて発信」

キャラクターに扮して動画配信をする人気ユーチューバーの赤月ゆにさん、餅月ひまりさん(チャンネル登録者は合わせて約33万人)は2022年4月2日、執拗な嫌がらせを受けているとして、特定のツイッターアカウントを「ブロック」すると発表した。

2人のツイートによれば、所属会社「ゆにクリエイト」(東京都台東区)に関する虚偽の投稿を繰り返され、業務や活動に支障が出ているという。精神的ストレスから抑うつ状態になり退職せざるを得なくなったスタッフもいた。

同社の望月陽光社長は6日、J-CASTニュースの取材に「赤月ゆにが元気がないけど、これは事務所にいじめられているから、パワハラされているからと勝手にストーリーを仕立て上げて発信していました」と被害を話す。

デマや人格攻撃のツイートは1年以上続き、会社宛てに「事務所と餅月が結託して赤月を迫害している」とメールを送ってきたとも明かした。

取引先などから事実確認を求める問い合わせがあったり、採用活動に支障が出たりと影響は甚大だった。赤月さん、餅月さんのありもしない対立関係を煽られたため、共同での配信もしづらくなった。

加害者の動機

次第に、加害者の事実無根の情報に感化されるファンが出始めた。タレントや関係者の精神面も考慮し、事務所は苦渋の末に前述の"ブロック宣言"を決めた。

加害者はその後ツイッターで謝罪し、動機を「創業当時からのタレントなのだからもっと大切にして欲しい、という感情から始まったものではありました」と公に説明している。

赤月さんのファンを公言するこの匿名アカウントは、ただの疑問がいつの間にか確信にすり替わり、自身の言動を「まったく見当違いの暴走」「今考えてみると、とても冷静ではなかった」と振り返っている。

望月氏はこの弁明について「ファンが一生懸命その子を考えること自体は、アイドル的な存在とファンとの関係性として良いともとれますが、存在しない事実を現実であるかのように思い込み、不特定多数に発信し続けるのは許容できない」と断じた。

法的措置は検討中だという。訴訟に要する期間やコスト、相手の弁済能力の不透明さを考慮すると、すぐに決断できない背景がある。

今後の誹謗中傷対策については「良い意見以外を潰すつもりはないです。無名で一部の人にだけ褒められるのは言ってしまえばカルト的人気ということで広がりがない。ただ、行き過ぎた書き込みついては毅然とした姿勢は見せなければいけないと思っています」。

タレントやスタッフには、心無い書き込みへの向き合い方を伝えたという。

「例えばコンテンツが面白かったかそうでなかったかということ自体は発信されるのは仕方がないし、正当性があるものについては甘んじて受け入れないといけない。ただ同時に、その発言をどれくらいの重みで受け取るかは私たちでコントロールできます。正当性があるかについてはしっかり判断しないといけないよね、と指導しました」

Vチューバーへの誹謗中傷が深刻化

CGキャラクターを使った動画配信者は、一般的に「バーチャルユーチューバー(Vチューバー)」と呼ばれる。Vチューバーへの誹謗中傷は、業界全体で大きな問題となっている。

Vチューバー事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバーは21年9月、タレントへの誹謗中傷や権利侵害を伴う悪質画像の投稿により、2件の法的措置を講じたと明かした。発見者には、専用フォームからの通報を呼びかけている。

Vチューバーグループ「にじさんじ」を擁するANYCOLORは20年9月に「攻撃的行為及び誹謗中傷行為対策チーム」を立ち上げ、1年間で90件の対応をしたと公表した。中には殺害予告もあり、被害届を提出した例もあった。

トラブル増加を受け、モノリス法律事務所は22年3月、Vチューバー向けの専門チームを設け、法務支援を強化すると発表した。

ビックデータ分析の「ユーザーローカル」の調べでは、Vチューバーは17年12月から増え始め、21年10月には1万6000人を超えた。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)