ゴルフ練習場/打ちっぱなし練習徹底解説。3段階の振り幅練習を伝授

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新型コロナウイルスの流行を機に、屋外で三密を避けて楽しめるスポーツとしてゴルフの人気が高まっています。ゴルフ練習場で、若い人たちの姿を見かける機会が多くなりました。

しかし、ゴルフは上達に時間がかかるスポーツでもあります。うまく打てるようにならず、上達を諦めてゴルフをやめてしまう人もいます。

せっかくゴルフを始めたのであれば、クラブフェースにボールが当たったときの気持ち良さをいち早く味わってもらい、上達意欲を高めてほしいところ。

プロのインストラクターにゴルフ練習場(打ちっぱなし)での練習法を教えてもらいました。

 

【お話を伺った人】


ハイランドセンター
郄橋玄さん

Naito Yuji School of Golfチーフインストラクター、東京ゴルフ専門学校教員。日本プロゴルフ協会ティーチングプロ。

ゴルフ練習場を利用する際の基礎知識

初心者が最初に打つクラブは9番アイアンが良い

ゴルフを始めたばかりの人は、どのクラブで練習を重ねたら良いか見当がつかないはず。

最初からフルセットのクラブをそろえる人はそれほど多くないと思いますが、初心者向けのハーフセット(7本の組み合わせ)もあり、ドライバーやフェアウェイウッド、ユーティリティやアイアン、ウェッジなどからどれを選べば良いか悩みますよね。

そのなかで、最初に練習するのに適したクラブは9番アイアンだと郄橋さんは言います。

「ひと昔前は、14本のクラブのなかで中間の長さの7番アイアンが、最初の練習に適したクラブと言われていました。しかし、それはアイアンが3番まで入っていた時代の話で、今はアイアンセットが6番からというメーカーが主流です。

そうなると、7番はアイアンのなかで長くて難しいクラブですから、もう少しボールがつかまりやすくて上がってくれる9番アイアンがちょうど良いでしょう。」

一方で、9番アイアンよりも短いクラブであるサンドウェッジやアプローチウェッジを最初に練習するクラブとして推奨しないのは、次のような理由があるからです。

「ウェッジはフェース面(ロフト)が寝ているのでボールが上がりやすく、初心者には良さそうに感じるのですが、うまく打てないとトップ(クラブの刃にボールが当たってゴロや低い打球になる)やダフリ(クラブがボールの手前の地面に当たってあまり飛ばない)しか出ません。

うまく打てたとしても、ボールを前に押す感触が得られません。最初のうちはうまく打てたときに『パチン!』と弾く感触がほしいので、フェース面が少し立っている9番アイアンをレッスンで使用します。」

では、9番アイアンを使えばいきなりボールを打ち始めて良いかというと、そうではありません。

打つ前の姿勢や動作を練習していく必要があります。正しい体の作り方や動かし方を習得することが、上達への近道となるため、本記事ではこれらを徹底的に解説。

次のパートからは、ボールを打つ前の練習として、

前傾姿勢の作り方 ボディドリル フェースの向きを合わせる動作

をレクチャー。それぞれ、細かい動きをなるべく細かく、ビジュアル多めで解説。

その後に、実際にボールを打つ練習方法を紹介していきます。

ボールを打つ前の準備

ボールを打つ前にしてほしいこと① 正しい前傾姿勢の作り方

ゴルフをまったくやったことがない初心者に郄橋さんが最初に教えるのはグリップ(クラブの握り方)です。

「グリップはフェース面の向きに直結しますから、かなり大事です。

多くの人は普通にクラブを握ると、フェースが右を向きやすいグリップになってしまいますから、クラブを上げて下ろしたときにフェースが真っすぐ向くグリップを最初に覚えてもらいます。」

しかし、ゴルフのグリップはとても奥が深く、それだけで1本の記事が書けますから、この記事では割愛します。グリップについて詳しく知りたい人はこちらの記事をご覧ください。

「グリップができたら、次は姿勢です。ゴルフは股関節から体を折って構えることが、上体をしっかりねじっていくうえで大切なので、その姿勢を覚えてもらいます。

最初は背中が丸まってしまう人が多いですから、クラブを背中に当て、頭と背中とお尻の3点を着けた状態で股関節から体を折ります。背中が丸まると腰が落ちるので、その瞬間に体が回せなくなるんです。

クラブを手で上げたり、体が伸び上がったりする原因になるので、必ず股関節から折り曲げます。」

9番アイアンを背中側で持ち、頭と背中とお尻の3点を着けます。

頭と背中とお尻の3点が着いた状態のまま、股関節から体を折り曲げます。

そのままつま先に体重をかけ、前のめりになりそうなところまで傾けます。

前のめりになる寸前で膝を軽く曲げ、腕をだらんと下に垂らすと正しい前傾姿勢になります。

ボールを打つ前にしてほしいこと② ボディドリル(正しい体の動かし方)

正しい前傾姿勢の作り方で説明したように、ゴルフはクラブを手で上げるのではなく、上体をしっかりねじって、その回転によってクラブを動かします。その動きを体感できるのが、ボディドリルです。

「ボディドリルは、正しい体の動かし方を覚えてもらうために行います。

クラブを肩に担ぎ、体を右にねじります。ボールはあってもなくても構わないのですが、ボールを置いたほうが軸ブレすることなく上半身をねじることができると思います。

上半身を右にねじったら、今度は頭の位置を残したまま左に体重移動します。そこから肩の上下を入れ替え、左にねじっていきます。最後は正面を向きますが、その直前までは下を向いたままです。」

ボールを打つ前に、まずクラブを肩に担ぎます。

クラブを肩に担いだまま、上半身を右にねじります。

上半身を右にねじったら、そこから左に少し体重移動します。

頭の位置はあまり動かさないようにしながら体を左にねじり、肩の上下を入れ替えます。

最後はボールから目を離し、右足のかかとを上げて上半身を左にねじります。

実際にやってみると分かりますが、ボディドリルは結構きつい体の動きです。しかし、この回転運動を使わないとボールを真っすぐ遠くに打つことができません。

正しい動きを知らないままゴルフを始めると、ボールにクラブヘッドを当てようとします。そうすると、腕でクラブの動きを操作してしまいます。

しかしながら、腕でクラブを操作するスイングだと再現性が低く、偶然うまく打てることはあってもミート率が上がりません。

体の回転を使ってクラブを動かす感覚が身に付くと、クラブヘッドに遠心力が働いて軌道が安定しますから、ショットの再現性が高まります。

その感覚をできるだけ早い段階で覚えることが、ゴルフ上達の近道になります。

ボールを打つ直前のセットアップ

フェースの向きを目標に正しく合わせる

実際にボールを打つ段階になったとき、大事なのがフェースの向きです。フェースが目標方向に真っすぐ向いていないと、ボールは真っすぐ飛びません。

当たり前の話のように思われるかもしれませんが、それができていない初心者は多く、経験者であってもミスショットの原因がフェースの向きであったりするケースもあります。

上級者であればあるほど、ショットの際のセットアップが丁寧です。その手順を郄橋さんに説明してもらいます。

「練習場でボールを打つのであれば、ゴルフマットを基準にして構いません。まずはつま先のライン、膝のライン、肩のラインがマットの縦のラインと平行になるように立ちます。」

ゴルフマットのラインとつま先のライン、膝のライン、肩のラインをそろえます。

「そして、クラブのリーディングエッジ(クラブフェースの最下部の直線的な部分)をマットの縦のラインと平行になるように置きます。

そこから左足を1歩前に踏み出し、右足を1歩後ろに踏み出します。9番アイアンの場合、ボールが足幅のちょうど真ん中になるようにセットします。」

左足と右足の間にフェース面が真っすぐになるように置きます。

左足を1足分前に出します。

右足を1足分後ろに出します。

「もう1つ大事なのは、グリップの位置です。

グリップの位置も真ん中だと思っている人が多いですが、ゴルフクラブはハンドファースト(手の位置がボールよりも前に来る)でボールをとらえるようにできていますから、グリップを少し前に出します。

具体的な目安としては、グリップエンドが左股関節を差すように構えてください。」

グリップエンドが左股関節を差すようにクラブを傾けます。

お待たせしました。ようやくボールを打つ練習に入ります。ただし、ここまでいきなりフルショットをすることはしません。

どのような練習をしていったら良いかを、3つのステップに分けて解説。ポイントは小さい動きから大きい動きへ、です。

ボールを打つ練習に取り入れてほしい3段階の振り幅

ボールを打つ練習は、ハーフショットから始めたほうが良い

郄橋さんは初心者にボールを打ってもらう際、最初は小さな振り幅からスタートし、ボールに当たるようになってきたら徐々に振り幅を大きくしていくと言います。

「最初は腰から腰の高さのハーフショットです。ボールを打つ前に素振りをしてもらって、フォームが良さそうだったら実際にボールを打ちます。

なぜハーフショットが良いかと言いますと、まずは体とクラブの一体感を覚えてもらいたいからです。肘を曲げたスイングだと分かりづらいので、ハーフショットで体感してもらいます。

それとゴルフはボールが高く上がって飛ばすイメージがあるので、最初はどうしてもすくい上げるような動きになってしまうんですね。

でも、実際はグリップを先行させて上から下にクラブを振り下ろし、ボールに当たるのが正しい形なので、『手首の角度があまり変わらないように、少し低い球が出るくらいで良いですよ。』という感じで打ってもらいたいのです。」

最初は腰から腰の高さのハーフショットで、体とクラブの一体感を覚えます。

ハーフショットで当たるようになったら、スリークォーターショットに移行

そしてハーフショットでボールが当たるようになってきたら、次はスリークォーターショット(3/4の振り幅)に移行します。

「『今度はトップで右肘、フォローで左肘をたたみましょう。』『クラブが立ち上がってきますよ。』とお伝えします。

こちらも最初は素振りをしてもらいますが、振り幅を確認する程度です。そして、適切な振り幅になったらボールを打っていきます。」

ハーフショットで当たるようになったら、スリークォーターショットで右肘の折りたたみ方を覚えていきます。

スリークォーターショットで感覚が掴めてきたら、フルショットの練習

そして、スリークォーターショットでもボールが当たるようになってきたら、今度はフルショットに移行します。

「最初のレッスン(1回50分)でフルショットまで行く予定で進めますけど、ボールが当たらないのに次のステップに進んでも当たらないまま終わってしまうので、進め方は人それぞれです。」

自己流でゴルフを覚えた人のなかには、フルショットだとうまく打てるけどハーフショットやスリークォーターショットが苦手という人が結構います。

そういう人は、腕の力でクラブを上げている可能性が高いです。それだとショットの応用力が身に付きません。

正しいスイングを習得するには、3段階の振り幅を行ったり来たりする練習が効果的だと言います。

「ゴルフを始めて半年から1年くらいまでの間は、練習場で100球打つとしたら50球は9番アイアンでハーフショット、スリークォーターショット、フルショットの混ぜ合わせでスイング作りをしたほうが良いと思います。

残りの50球で、作り上げたスイングをほかのクラブに当てはめていきます。」

スリークォーターショットで当たるようになったら、フルショットの練習も行います。

ゴルフの練習を始めてみると分かりますが、少し上手に打てるようになったからといって長続きしません。「昨日はうまく打てたのに、今日はうまく打てない」の繰り返しです。

これは初心者だけでなく、上級者も同じです。当たりが悪くなったら小さな振り幅に戻ると、どういうエラーが発生しているのか気付くことができます。

ゴルフの練習に使える時間とお金も人それぞれですから、できるだけ効果の高い練習で効率良く上達していきましょう。