年が変わり、年度末が近づくと訪れるのが確定申告の季節。個人事業主やフリーランスの人にとっては必須の確定申告ですが、会社員であっても、条件によっては節税につながることもあるのをご存じでしょうか。

この記事では、確定申告の種類や必要な書類について解説。会社員が確定申告をする場合に受けられる控除も紹介します。

確定申告に共通して必要なもの

まずは、確定申告の際、個人事業主・会社員に共通して必要な書類を紹介します。

確定申告には、決められた書類の用意に加えて添付書類も提出しなければなりません。次から詳しく見ていきましょう。

確定申告書

確定申告書B(画像素材:PIXTA)

確定申告書にはA・Bの2種類があります。

まず、申告書Aは確定申告書の簡易版ともいえるもの。申告書Bよりも記入項目が少なく、申告できる所得の種類が給与所得、雑所得、配当所得、一時所得のみと限られているのが特徴です。一般的に、会社員の確定申告では申告書Aが選択されます。

これに対し、申告書Bは申告できる所得の制限がなく、どの所得の申告にも対応しています。このため、個人事業主をはじめ会社員や年金受給者を除く幅広い職業の確定申告には、一般的に申告書Bが使用されます。

本人確認書類

確定申告に際しては本人確認書類も必要です。このとき、マイナンバーカード(個人番号カード)の有無で必要書類が変わります。

まず、マイナンバーカードがある場合。表面と裏面の写しを確定申告書に添付または提示すれば完了です。

マイナンバーカードがない場合は、以下の2種類を用意します。

「番号確認書類」…申告者のマイナンバーが分かる書類です。マイナンバー通知カードやマイナンバーの記載がある住民票の写し等のうち、いずれか一つを添付または提示します。

「身元確認書類」…運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポート、在留カード等のうちいずれか一つを添付または提示します。

銀行口座の情報がわかるもの(還付がある場合)

所得税の納付を口座振替で行ったり、還付金の口座振込を希望したりする場合には、銀行の口座情報を確定申告書に記入する必要があります。

銀行名や支店名、口座番号がわかるものを用意しましょう。

所得を証明できるもの

所得を証明できる書類も必要です。所得の種類によって用意するものが変わります。

まずは個人事業主。事業所得を申告する個人事業主は、後述する「青色申告決算書」または「収支内訳書」の提出が義務付けられています。売上台帳等を用意し、それらに1年の売り上げを記入しなければなりません。

会社員の場合は源泉徴収票や支払通知書などが必要でしたが、2019年4月1日以降、申告手続きの簡素化に伴い添付不要となりました。

参照元:国税局「国税関係手続が簡素化されました」

所得控除や税額控除の適用を証明できるもの

所得控除や税額控除を受けるためには、証明書を用意しなければなりません。

所得控除とは、個人の事情に応じて所得から差し引かれる控除のことです。代表的なものには雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、障害者控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、扶養控除などが挙げられます。

税額控除は算出された税額から直接差し引かれる控除を指します。代表的なものには配当控除や外国税額控除、公益社団法人等寄附金特別控除、住宅耐震改修特別控除などがあります。

これらの控除申請には、医療費控除の明細書や社会保険料(国民年金保険料)控除証明書、生命保険料や地震保険料の控除証明書など、希望する控除に応じた書類が必要です。

注意:印鑑は基本的に不要に、必要なケースとは?

2022年の確定申告から印鑑不要に(画像素材:PIXTA)

これまでは確定申告の際に用意する書類には申告者の押印が必要でしたが、令和3年度税制改正により、2022年の確定申告から基本的に印鑑は不要となりました。

納税証明書の交付請求などを代理人が行う際の委任状に関しても同様です。

ただし、納税の振替依頼書やダイレクト納付利用届出書に関しては、金融機関で使用している届出印(銀行印)が引き続き必要なので注意しましょう。

出典:国税庁「税務署窓口における押印の取扱いについて」

個人事業主の確定申告に必要な書類

個人事業主の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。ここからは、確定申告で必要な書類について、青色申告と白色申告に分けて解説します。

青色申告の場合

まずは青色申告。個人事業主が確定申告をする際、青色申告と白色申告から選ぶことができますが、より節税に効果的だとされているのが青色申告です。

青色申告をするためには、開業届とともにあらかじめ税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を出しておく必要があります。手続き方法や申告者の状況によって異なりますが、最大65万円の所得控除(青色申告特別控除)を受けられるのが大きな特徴です。

青色申告をする個人事業主は、確定申告書Bとともに「青色申告決算書」の作成・提出が求められます。

「青色申告決算書」は損益計算書、およびその内訳表、貸借対照表から構成されます。内訳表では仕入れから給料賃金、貸倒引当金繰入額、減価償却費など細目の記入も求められるため、毎日・毎月の収支をきちんと帳簿に記録しておかなければなりません。

また、前述した青色申告特別控除を受けるには、複式簿記による帳簿作成が義務付けられています。

白色申告の場合

続いては白色申告。青色申告のような特別控除が受けられないなどのデメリットがあるものの、手続きや記帳が比較的簡単に済ませられるのが特徴です。

青色申告では「青色申告決算書」が必要であったのに対し、白色申告は「収支内訳書」の作成・提出が求められます。

「収支内訳書」は青色申告ほど細かくはないものの、収入や経費の額、売上先や仕入先別の内訳などを記入する欄があります。また2014年以降は、簡易的ではあるものの帳簿への記録も義務付けられています。

会社員の確定申告に必要な書類

会社員は、雇用主である会社が源泉徴収による税金の天引きと年末調整をしているため、基本的に確定申告は必要ありません。

ただし、住宅ローン控除や医療費控除、ふるさと納税の控除など、ケースによっては確定申告したほうが節税になることがあります。

住宅ローン控除を受ける場合

住宅ローン控除とは、住宅ローンの残高に応じて還付が受けられる制度です。

会社員の場合は、基本的に会社の年末調整でまとめて申告が行われます。しかし、初年度の住宅ローン控除のみ、年末調整では手続きができないため確定申告をする必要があるのです。

申告の際には、住宅借入金等特別控除額の計算明細書や借入金の年末残高証明書、マイナンバーが記されている書類、土地・建物の登記事項証明書、不動産売買契約書(請負契約書)、特例要件(耐震改修や認定長期優良住宅など)を証明するための書類の写しなどの提出が求められます。

医療費控除を受ける場合

医療費控除もまた、会社員であっても確定申告が必要な場合があります。医療費が10万円を超えた場合に対象となります。また、年間所得が200万円未満の場合は、所得の5%が控除対象です。

医療費控除に際しては、明細書の作成・提出が必要です。また、2017年分の確定申告から領収書の提出は不要となりました。

ふるさと納税をした場合

ふるさと納税とは、納税者が自分で選んだ自治体に寄附をすることができる制度。ふるさと納税を行うと、寄附金控除という税額控除を受けられるとともに、自治体からは返礼品を受け取れます。

申請の際は「寄附金の受領証(領収書)」、または特定事業者が発行する「寄附金控除に関する証明書」が必要となります。

近年では1年間の寄付先が5自治体以内の場合など、条件によっては確定申告の必要のない「ワンストップ特例制度」が登場。より手軽にふるさと納税ができるようになりました。

電子申告により省略できる書類

電子申告だと省略できる添付書類が多い(画像素材:PIXTA)

確定申告の提出方法には①窓口提出、②郵送、③電子申告・納税(e-Tax)の3種類があります。そのなかでも近年増えているのが電子申告です。

電子申告は、国税庁が運営するウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」にて申請ができるというもの。他の手続き方法で求められる添付書類(第三者作成書類)を省略できるというメリットがあります。

代表的なものとしては以下のような書類が提出不要となります。

●生命保険料控除の証明書
●地震保険料控除の証明書
●小規模企業共済等掛金控除の証明書
●住宅ローン控除の借入金年末残高証明書(適用2年目以降のもの)

出典:e-Tax「所得税及び復興特別所得税についてよくある質問」

また、電子申告の手続きではマイナンバーカードと専用の読み取り機器か対応機種のスマートフォン、または税務署から発行されるID・パスワードが必須となります。

まとめ

「確定申告は面倒」というイメージを抱かれがちですが、きちんと準備をしておけばそれほど困難な作業ではありません。年末年始に必要書類を取り寄せ、早めに準備を進めれば、何かと忙しい年度末の時期も余裕を持って申請することができます。

今回解説した内容をふまえて、スムーズに取り組んでみてくださいね。