古米の新たな活用法!味糀(あじこうじ)の作り方【神谷よしえさんの12カ月の手仕事 #5】
11月の手仕事:古米を使って味糀(あじこうじ)作り
四季折々、さまざまな風景や風情が感じられる日本には、代々受け継がれる季節の手仕事があります。便利になって日常ではなかなか目にできなくなったものもありますが、こうした先人たちの知恵に今一度目を向けるのも、ひとつの季節の楽しみ方といえるでしょう。
第5回のテーマは、「味糀(あじこうじ)」です。
味糀とは、温かいごはんに米糀と塩を加え、ごはんの熱で発酵させたもの。塩糀やぬか床と同じような使い方ができる、発酵食品のひとつです。そんな味糀を、神谷さんはこの季節に余りがちな古米を使って作っているそうです。
「11月は、新米を目にする機会が増えてきます。近ごろは古米も新米もそれほど味に違いはありませんが、やはり新米を見ると早く食べたくなるのが日本人の性(笑)。そこで私は、古米を味糀にして使い切るようになりました。
簡単に作れて、塩糀やぬか床に比べて扱い方が楽なのでおすすめですよ。何度も繰り返し使えますし、そうして素材の旨味がぎゅっと濃縮された味糀はみそ汁やお鍋のだしとして最後までおいしくいただけます」
古米を活用した味糀のレシピ
調理時間:約半日(発酵時間含む)
保存期間:冷暗所で約2週間~1カ月
「温かいごはんに米糀とお塩を加えるだけなので、発酵時間を除けば調理時間は1分ほど。とってもお手軽なんですよ!発酵時間を短くするために、少し粗熱を取った炊き立てのごはんを使うのがポイントです。
味糀はぬか床と同じように野菜を漬け込むことができますが、ぬか床と違って毎日かき混ぜなくても大丈夫。一定の温度に保つ必要もありません。
冬場は基本的には冷蔵庫に入れなくても問題ないですが、水分が出はじめたら塩分濃度が下がって傷みやすくなるので冷蔵庫で保管してくださいね」
材料(作りやすい分量)
・ごはん……320g(約1合)
・米糀……30g
・塩……70g(ごはんと米糀の約20%)
「発酵食品の人気の高まりから、米糀もスーパーで手に入れやすくなったように感じます。生タイプのものもありますが、乾燥タイプのほうが手に入れやすいですし扱いやすいでしょう。でも、どちらでも仕上がりに違いはありません。
甘味を強くしたい場合は、米糀の量を増やしてください。塩分濃度20%を守れば、失敗しないと思います。お塩は普段使っているもので大丈夫ですよ」
作り方
1. ごはんに米糀と塩を混ぜ合わせる
チャック付きの袋やフタ付きの容器に温かいごはんを入れ、米糀と塩を加えて混ぜ合わせます。
「ごはんは温かいほうが発酵の進みがよくなります。冷やごはんを使う場合は、一度温めてから使いましょう。
ただし、ごはんが熱すぎると糀菌が死んでしまいます。粗熱を取ってから米糀を入れるようにしてくださいね」
2. 半日ほどかけて発酵させる
そのまま常温で半日ほど置き、発酵させたら完成です。
「30℃くらいのぬるいごはんのときは発酵が緩く進んでいる状態です。ごはんがしっかり冷めたら、発酵終わりのサイン。できあがった味糀は冷暗所で保存しましょう」
味糀の使い方
1. 野菜を漬ける
「私がもっともおすすめする使い方です。味糀で漬けた野菜は、ぬか漬けのように色がくすまず色鮮やか。軽く塩ゆでしたような、野菜本来の美しい色合いに仕上がります。
軽く風味を付ける程度なら、3時間ほど漬け込むだけでおいしく食べられますよ。サラダ感覚で食べたいときは1日、しっかり味をつけたければ2日漬け込んでください」
2. 肉や魚を漬ける
「味糀は、塩糀と同じようにお料理の下ごしらえにも活用できます。多くの酵素を含む糀の力でお肉がやわらかくなり、甘味が引き立つジューシーな食感が楽しめますよ。
お肉やお魚を漬け込む場合は、味糀をチャック付きの袋やフタ付き容器で量を多めに作っておくと便利です」
3. 鍋に加える
「味糀のよいところは、何度も繰り返し使うことができる点。使い込むことで野菜やお肉などのエキスが味糀にたっぷり含まれていきます。そんな旨味のつまった味糀は、最後は鍋のだしとして使うのがおすすめ。いつもの鍋に投入するだけで、格段においしさがアップします。
『味糀の発酵臭が強くなったな』とか、『ちょっと失敗しちゃった』とか、『水分が出すぎてもう使えないかも』というような味糀も、最後まで無駄なく使い切ることができますよ」
味糀の楽しみ方
とても手軽に作れるうえに、活用法の幅も広い味糀。神谷さんがこの冬イチオシの楽しみ方を最後に教えてくださいました。
「冬が近づくと温かいものが恋しくなり、サラダやマリネなどの冷たい食べ物は敬遠しがちに。でも、煮物やスープは作るのに時間がかかるし、色合いがちょっと暗くなっちゃうんですよね。
そんなときにおすすめしたいのが、味糀で漬け込んだ冬野菜を使ったサラダごはん。糀の甘味が染み込んだ野菜はお米との相性がよく、野菜だけでごはんが進みます。
お好みでかぼすや、お酢、バルサミコ酢、黒こしょうなどをかけると味のバリエーションが広がります。冬のヘルシーメニューとして重宝すると思いますよ!
また、サンドイッチもおすすめです。味糀で漬けた野菜を刻んでハムや卵と一緒にパンではさめば、色鮮やかな萌断サンドイッチの完成!ぜひ試してみてください」