なぜバックドアは跳ね上げ式が主流? 激レアな横開きバックドアのクルマとは
横開きのバックドアを採用するモデルが減少!?
近年4ドアセダンや2ドアクーペの販売は苦戦が続き、日本国内では軽自動車やコンパクトカー、SUV、ミニバンなどが隆盛を極めています。
これらのクルマに共通しているのが、大きな「バックドア」を備えているということです。メーカーや車種によってバックドアの名称は異なりますが、「リアゲート」や「リアハッチ」、「ハッチゲート」あるいは「テールゲート」などとも呼ばれています。
【画像】横開きバックドア車が激減! 新車で買える貴重なモデル(36枚)
このバックドアにも種類があり、ルーフ側にヒンジがあり下から上へと開く「跳ね上げ式」が主流ですが、近ごろ減少傾向なのが前席のドアのように開閉する「横開き式」です。
跳ね上げ式はヒンジをルーフに、ドアのキャッチをバンパーに追いやることができるため開口部を広く取れ、そのバックドアが庇(ひさし)がわりになって雨をしのげるのがメリット。デメリットは高い位置まで上がるバックドアの開閉に力が必要なことです。
一方の横開き式のメリットは跳ね上げ式のように開閉に力がいらず、後方にスペースがあまりなくても少しだけドアを開ければ荷物を出し入れできることです。逆に、風の影響を受けやすいことや、雨天時に雨が吹き込みやすいのがデメリットになります。
それぞれ一長一短あるのですが、近年横横開き式は跳ね上げ式に押され気味。それというのも、軽量な樹脂製バックドアや電動開閉機構の採用で、操作が重いという跳ね上げ式のデメリットがだいぶ改善されたからにほかなりません。
横開き式の代表的な車種だった日産「キューブ」は生産終了となり、ダイハツ「ムーヴ」は跳ね上げ式に転身してしまうなど、いま新車で購入できる横開き式のモデルはほとんどないのが現状です。
とはいえ、限られたスペースで荷物を出し入れしたいと考えるユーザーも決して少なくはありません。
そこで、今回はレアな存在となった横開き式バックドアを採用するモデルを通じて横開き式バックドアの魅力を紹介します。
軽自動車でありながら、高い悪路走破性を誇る本格派のオフロード4WDとして人気のスズキ「ジムニー」。2018年に発売された現行型は4代目にあたりますが、じつは初代から現行まで一貫して横開き式を採用する筋金入りのモデルです。
とはいえ、1970年のデビュー当初はオープンカーのみの設定だったため、リアにはトラックのように下向きに開く「あおり」があるのみ。横開き式のバックドアは、1972年にエンジンが水冷化されたタイミングで追加されたバンモデルで初採用されました。
当時のカタログのバックドアの説明に「補助席(後席)の乗り降りにとても便利」と記載されていたことからも分かるように、跳ね上げ式ではなく横開き式を採用したのは、室内からの開閉を考慮してのこと。
バックドアの室内側には「埋込式バックドアインサイドドアハンドル」が標準で装備されていました。
1981年に登場した2代目も横開き式ですが、フロントのドアを大きくしたり、「助手席ウォークイン機構」や「前倒れシートバック」を設定するなど、後席へはバックドアからではなく助手席側のドアからのアクセスするようになっています。
2代目以降はバックドアにダンパーを装着。現行型はドアハンドルを引くと、ダンパーの効果により自動でバックドアが全開になります。
軽い力で開閉できるため便利ではあるのですが、狭いところでは勢いあまって障害物に当たってしまうこともあり、注意が必要です。
しかし後方にスペースがあまりなくても荷物の積み下ろしができるのが横開き式のメリットでもあるため、段階的に開けることができる社外品のダンパーに交換するオーナーも少なくないそうです。
背面タイヤを装着するクロカンには横開きバックドアが多い
●トヨタ「ランドクルーザープラド」
クロカン四駆に横開き式のバックドアが多かったのは、スペアタイヤをバックドアに背負う「背面タイヤ」がブームだったからです。
大きく重い背面タイヤごとバックドアを跳ね上げるのは不都合が多く、結果として横開き式が採用されました。
トヨタ「ランドクルーザー」も例に漏れず、といいたいところですが、歴代ランクルは横開き式だけでなく観音開き式や上下分割式などさまざまなバックドアが混在。同じモデルでもグレードによって異なるということもあります。
一方、徹底して横開き式を続けているのは「ランドクルーザープラド」のみ。2代目から現行型の4代目まで継続して採用されています。
ちなみに、観音開き式は横開き式と同様に背面タイヤごとバックドアを横向きに開けますが、上下分割式では背面タイヤのキャリアがバックドアとは別に用意され、最初に背面タイヤキャリアをどけてからバックドアを開ける構造になっています。
現行型ランクルプラドは横開き式バックドアを採用していますが、海外仕様には背面タイヤを装着するものもあります(国内仕様は未装着)。
ちょっとした荷物の出し入れができるようバックドアのウインドウ部だけ開閉できるようになっているのが特徴で、この部分は跳ね上げ式のため横開き式バックドアながらちょっとした雨避けにもなります。
●メルセデス・ベンツ「Gクラス」
高級サルーンの代名詞的存在であったメルセデス・ベンツが、1979年に登場させた本格的なオフロード4WD。
当初は「ゲレンデヴァーゲン」の名で販売されていましたが、1993年の「Cクラス」登場から始まったメルセデス・ベンツの新しい車名の法則に則り、1995年から「Gクラス」の名称に変更されました。
そんなGクラスの現行型は3代目になりますが、徹底したキープコンセプトによりスタイリングは初代の面影を色濃く残します。
2代目とはアウタードアハンドルとウィンドウウォッシャーのノズル、スペアタイヤカバーぐらいしか共通部品はありませんが、両車はよく似ていて、メルセデス・ベンツはフルモデルチェンジとは公式にアナウンスしていません。
Gクラスのバックドアは、初代から継続して横開き式を採用。ほかの横開きのクルマほど車幅いっぱいには開かない狭めな開口部なことから、利便性よりボディ剛性を優先していることがわかります。
バックドアの開く向きが国産車とは逆になっているのは、「輸入車あるある」といったところでしょう。
向かって左側にヒンジがあり、右側から開けるのは、右側通行の道路での使い勝手を考えてのもの。左側通行の日本では車道側に立つことになるため、開閉の際は注意が必要です。
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バックドアは横開き式と跳ね上げ式のほか、観音開き式と上下分割式が昔からある定番のスタイルです。
そんななか、2015年にまったく新しいバックドアとして誕生したのが、ホンダ「ステップワゴン」の「わくわくゲート」です。
これは跳ね上げ式でありながら、横開きのサブドアが備わるという優れもの。コスト面やデザイン面で好き嫌いが分かれるスタイルではありますが、こうした新しいアイディアも登場しています。