関連画像

写真拡大

離婚するときに揉めるのがお金の問題です。弁護士ドットコムに相談を寄せたある女性は、夫から「離婚しても渡すお金なんてない」と言われてしまいました。

女性は夫と結婚して3年になりましたが、最近病気が発覚し、すぐには子どもが望めない状況になりました。すると、夫は「離婚したい」と言い始めたのです。

しかし、離婚の話を始めると、夫は「(女性から預かっていた)貯金は返すが、それだけ」と言い張るようになりました。

女性は働いていますが、給与は自分のお小遣いと携帯代、保険代を抜いた分は、全て夫に渡していました。そのため「私は全く何も貰えないのでしょうか」と夫の発言に疑問を感じています。

はたして共働きの場合、財産分与はどうなるのでしょうか。川見未華弁護士に聞きました。

●財産分与の割合は2分の1

--女性は夫に財産分与を請求できますか

離婚をする場合、相手方配偶者に対して、財産分与を請求することができます(民法768条1項)。

財産分与の法的性質としては、複数ありますが、中心的なものは「夫婦共同生活中に形成した共有財産の清算」という要素です。

そのため、婚姻中(多くは同居中)に夫婦が協力して形成した財産は、名義がどちらかにかかわらず、実質的共有財産として、財産分与の対象となります。

--財産分与の割合はどう決まりますか

分与割合は、配偶者の一方の特別な能力により資産形成がなされたなどの特別の事情がない限り、2分の1の割合での分与となります。

具体的には、婚姻中(同居中)に増加した財産の総額(預貯金であればその期間中に増えた分の合計)を計算し、その2分の1をそれぞれが保有できるよう、分与を行うことになります。

ただ、相続により取得した財産など、夫婦が協力して形成したとはいえない場合には、財産分与の対象となりませんので、注意が必要です。

●女性が夫に渡していたお金も財産分与の対象

--今回のケースのように共働きの場合はどうなるのでしょうか

共働きの場合は、婚姻中に、夫婦が各々名義の貯蓄を増やしたり、あるいは、どちらか一方名義の口座で貯蓄を形成することがありますが、どちらの名義であろうとも、夫婦が共同生活の中で協力して形成した財産とみることができますから、原則として、財産分与の対象となります。

そのため、女性が夫に渡していたお金はもちろん、夫が自分の収入により形成した財産(預金残高等)も、財産分与の対象となります。

--夫婦の収入に差があった場合は?

夫婦の収入に差があったとしても、原則として、2分の1の割合の分与が認められます。 先ほど述べたとおり、一方の特別な能力により資産形成がなされた場合など、分与割合が2分の1から変更されることもありますが、極めて例外的です。

--女性は自分の給料から自分のお小遣いと携帯代、保険代を抜いた全てを夫に渡していたそうですが返ってきますか

渡した金員が、現金や預金などの形で残っているのであれば、財産分与の対象とすることができます。他方で、仮に、夫がそのお金を使い果たしてしまっている場合には、財産分与の対象とすることは難しいでしょう。

とはいえ、夫が浪費をして、女性が渡していた貯蓄を食いつぶしてしまったなどの事情があるのであれば、女性としては、残りの財産について、2分の1よりも多い割合で分与を受けるなどの主張をすることが考えられるでしょう。

【取材協力弁護士】
川見 未華(かわみ・みはる)弁護士
東京弁護士会所属。家事事件(離婚、DV案件、親子問題、相続等)及び医療過誤事件を業務の柱としながら、より広い分野の実務経験を重ねるとともに、夫婦同氏制度の問題や福島原発問題等、社会問題に関する弁護団にも積極的に取り組んでいます。
事務所名:樫の木総合法律事務所
事務所URL:http://kashinoki-law.jp/