交代勤務のために睡眠時間帯が頻繁に変化することで発症する「交代勤務睡眠障害」は、睡眠障害をはじめとするさまざまな精神・身体機能障害を引き起こします。ミズーリ大学のプラビーン・エダラ氏らの研究により、交代勤務睡眠障害を発症している人は、そうでない人に比べて交通事故を起こす確率が3倍高くなることが分かりました。

Sleep disorders and risk of traffic crashes: A naturalistic driving study analysis - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0925753521001405



エダラ氏は2006年から2015年にかけて作成された「第2回戦略的高速道路研究プログラム(SHRP 2)」のデータを通じて、アメリカの6つの州で記録された約1万8000件近くの運転に関するデータにアクセスし、睡眠障害が安全性にどのように影響するのかを調査しました。

調査の結果、「不眠症」もしくは「睡眠時無呼吸症候群」の症状がある人は、健康な人と比較して事故発生率が1.29〜1.31倍高かったのに対し、交代勤務睡眠障害の症状がある人は、健康な人と比較して事故発生率が2.96倍高かったことが分かったとのこと。事故発生率は年齢が上がるにつれ高くなり、65歳以上の不眠症のドライバーは2.05倍に、65歳以上の交代勤務睡眠障害のドライバーは5.89倍にまで高まっています。なお、睡眠時無呼吸症候群のドライバーに関しては、年齢層に対する有意な交互作用効果は見つからなかったとのこと。

また、睡眠の質が悪いと事故のリスクに悪影響を与えることも明らかになっています。睡眠の質に関して4段階評価で行われたアンケート調査において、睡眠の質が4段階中最も良い「満足」な人と、次に良い「やや物足りない」人を比較した場合には有意な関連がみられなかったものの、睡眠の質が4段階中最も悪い「非常に不満足か、ほとんど眠っていない」人は、次に悪い「著しく不満足」な人に比べて、事故発生率が1.32倍高かったとのこと。



エダラ氏は「この研究は睡眠の質と事故のリスクとを定量化した最初の研究の1つです。交代勤務睡眠障害を発症している人だけでなく、不眠症や睡眠時無呼吸症候群の人も事故に遭う確率は高く、企業などがドライバーに配慮することを推奨します」と述べています。