「後ろの列車が遅れているため、この列車も停車します」といったアナウンスを聞いたことがあるかもしれません。なぜ後ろの列車のために、定刻通り走っている列車まで止めるのでしょうか。

カギは各駅での分散乗車

「後ろの列車が遅れているため、この列車もしばらく停車します」

 乗車中にこのようなアナウンスを聞いたことがあるかもしれません。駅で急病人が発生したり、非常停止ボタンが扱われたりと、鉄道は様々な理由で遅延が発生しますが、運行本数が多い路線では特に、直接その原因にはなっていない列車までしばらく停車するケースがあります。

 つまり、定時運行していたはずの前方の列車までもが時間調整をし、あえて発車を遅らせるわけです。なぜ、一見無関係の列車が停車するのでしょうか。


時間調整中、列車はドアを開けてできるだけ利用客を乗せ、駅ホームに人が溢れないようにする。写真はイメージ(画像:写真AC)。

 結論からいえば、列車単位でなく路線全体の遅延拡大を抑えるためです。遅延の拡大を招く、各駅ホームの過剰な混雑を防止することに主眼が置かれています。

 例えばA駅、その一つ先のB駅、さらにその一つ先のC駅にも列車がそれぞれ停車している状態で、A駅の列車でトラブルが発生したとします。A駅の列車が発車できない間、もしB・C駅の列車がダイヤ通りに発車してしまうと、その後のB・C駅には定刻で来るはずのA駅の列車を待つ利用客が滞留し始めます。

 仮に10分後、A駅の列車が運転を再開したとしてB駅に向かうと、B駅には普段の利用客に加え、遅延した10分間にホームに来た利用客も待機しています。B駅に到着した列車は混雑のため乗降に時間がかかり、発車する頃にはさらに遅延が拡大します。次のC駅でも同様のことが起き、以後、後続の列車に遅延が波及していくのです。

 ではB・C駅の列車が時間調整をし、しばらく停車しているとどうなるでしょうか。それぞれの駅では、遅延している10分間分の利用客も停車中の列車に乗れます。遅延の直接原因ではない各列車も遅れますが、後から来るA駅を発車した列車はB・C駅で、普段と同じほどの利用客を乗せれば済みます。つまり利用客を分散乗車させることで、路線全体での遅延拡大を防ぐことができます。

 なお、駅ホーム上はスペースにも限りがあります。特にホームドアが整備されていない駅では、利用客が溢れかえることで線路ぎりぎりで列車を待たなければならなくなるでしょう。時間調整による分散乗車は、危険防止のうえでも有効といえます。

【動画でスッキリ】遅延してない列車も発車を遅らせる理由