3月26日と29日に行なわれたU-24日本代表とU-24アルゼンチン代表のテストマッチは、1勝1敗に終わった。初戦を0対1で落とした日本は、中2日の再戦で3対0の勝利をつかんだ。南米予選を首位通過した東京五輪のメダル候補と、勝利を分け合った。

 しかし、手放しでは喜べない。

 第1戦を前にした両チームは、過去の映像をもとに対策を練っていた。日本は去年1月の南米予選を頼りにしたが、スカウティングの素材としては鮮度が低い。当時は出ていなかった選手も、今回のメンバーには含まれていた。

 アルゼンチンが頼りにした素材も古い。おそらくは、昨年1月のAFC U-23選手権だっただろう。しかし、海外組は食野亮太郎ひとりだけのチームが、どこまで参考になったか。

 つまり、日本もアルゼンチンも不確定要素を抱えながら、第1戦のピッチに立ったわけである。一方、29日の第2戦はお互いに細心の情報を手にすることができていた。

 互いに手探り状態で戦った第1戦と、情報をアップデートして臨んだ第2戦──どちらの勝利に価値を見出すべきか。個人的には第1戦に勝てなかったことを、重く受け止める。五輪のグループステージの初戦は、まさにそういった戦いだからだ。

 大会前にはスカウティング部隊が、出来る限りの情報を集めるだろう。それでも、地域予選後にオーバーエイジが加わってくると、チームのスタイルは変わってくるものだ。また、クラブチームと代表で違う役割を与えられる選手もいる。相手のすべてを熟知したうえで戦うことは、おそらくかなわない。

 だからこそ、26日のアルゼンチン戦のような状況で、勝ち切れる力が必要なのだ。中2日で修正したのは素晴らしいが、五輪のグループステージで同じことは通用しない。それでは手遅れなのである。

 ともあれ、選手は良く戦った。一人ひとりのパフォーマンスは、満足できるレベルにあったと言っていい。

 どのポジションも厚みがあるのは頼もしい。リオ五輪のチームはセンターバックと左サイドバックにケガ人が出たことで、オーバーエイジ(OA)の選考が変わってしまった。しかし今回は、「このポジションにはOAが必要だ」と、多くの人が不安視するポジションはない。日本サッカー全体が底上げされてきた、と理解できる。

 とはいえ、OAなしでメダルを狙える、ということではない。可能性を拡げるためには、OAを招集するべきである。センターラインを太くするのだ。

 CBに吉田麻也、ボランチに遠藤航を招集したい。彼らふたりに24歳以下の冨安健洋が加わることで、最終ライン中央が盤石になる。

 五輪は中2日の連戦である。それはつまり、次の試合への練習が2回しかできないということでもある。そのうち1回はセットプレーの確認に充てられるはずだから、戦術的な修正に費やせる時間は限られる。

 できることならば、次の試合へ向けた攻撃の確認をしたい。そのためにも、守備の安定が必要なのだ。ディフェンスの修正をする必要がなければ、限られた練習を攻撃に充てることができる。吉田と遠藤を招集することで、勝ち上がっていくための条件を整えることができる。

 吉田は12年、遠藤は16年の五輪を経験している。短期決戦を肌で知る選手を迎えることも、チームのプラス材料だ。

 もうひとりは最前線の選手だ。第一の候補は大迫勇也だろう。所属クラブで好調の浅野拓磨も、リオ五輪で悔しい思いを味わった。彼を加えるのもアリだろう。大迫の招集が実現したら、スピード系のFWは前田大然でOKだ。

 U―24日本代表の次の活動は6月だ。ここまでにOAを使うのかを判断し、並行して所属クラブと交渉を進めていく。ここから先は、ピッチ外でのマネジメントの重要性が増してくる。