広島から2年連続の新人王なるか 社会人出身のドラ1選手の“即戦力度”
◆ 大学のスター選手に隠れて新戦力としての期待大
大半のチームがメンバー編成を終え、2021年のシーズンに向けて調整を続けている。今年は大物外国人の入団も話題だが、新規外国人選手の入国制限や隔離期間などもあり、合流はまだまだ先になりそう。新戦力という意味では、新人選手にも大きな注目が集まることになるだろう。特に、大学球界で名を馳せた佐藤輝明(阪神)や早川隆久(楽天)らには、早くも新人王を期待する声もある。
佐藤や早川らスター揃いの大学生に比べ、それほど注目度が高くないのが、社会人野球出身の選手たち。昨年のドラフト会議では、社会人野球出身の選手がドラフト1巡目指名を受けたのは広島が指名した栗林良吏のみ。2巡目指名を見ても、西武が獲得した佐々木健、阪神が指名した伊藤将司のふたりだけだった。
しかしながら、社会人出身選手の多くは即戦力を期待されている部分が大きい。昨季も西武の宮川哲投手や、楽天の小深田大翔選手が1年目から活躍。早い段階から主力選手としての活躍が期待できるという部分では、彼らの躍進がチームの順位に影響を与える部分もあるだろう。
◆ 投手も野手も粒ぞろいの社会人出身選手たち
近年の社会人野球出身の選手たちは、1年目から首脳陣の期待に応える活躍をしているのだろうか? ここでは、過去10年(2010年〜2019年)のドラフトで1巡目指名された社会人野球出身選手のルーキーイヤーの成績と通算成績を調べてみた。過去10年においては、投手19人、野手5人の計24選手が対象となる。
▼ 2010年(2名)
・須田幸太投手(JFE東日本→横浜/18年引退)
初年度: 17試合登板 2勝 6敗 防御率5.29
通 算:166試合登板 16勝19敗1S37H 防御率4.81
・榎田大樹投手(東京ガス→阪神/現西武)
初年度: 62試合登板 3勝 3敗1S33H 防御率2.27
通 算:237試合登板 29勝25敗3S60H 防御率4.16
▼ 2011年(3名)
・武藤好貴投手(JR北海道→楽天/17年引退)
初年度: 9試合登板 0勝0敗 防御率5.14
通 算:85試合登板 4勝4敗1S8H 防御率4.96(2017年引退)
・安達了一選手(東芝→オリックス)
初年度: 50試合 打率.159 0本塁打 4打点
通 算:964試合 打率.244 35本塁打 283打点
・十亀剣投手(JR東日本→西武)
初年度:41試合登板 6勝0敗9H 防御率2.72
通 算:206試合登板 52勝49敗3S13H 防御率4.04
▼ 2012年(3名)
・松永昂大投手(大阪ガス→ロッテ)
初年度: 58試合登板 4勝 1敗1S1H 防御率2.11
通 算:359試合登板 16勝15敗1S135H 防御率2.91
・石山泰稚投手(ヤマハ→ヤクルト)
初年度: 60試合登板 3勝 3敗10S21H 防御率2.78
通 算:344試合登板 23勝28敗75S64H 防御率3.34
・増田達至投手(NTT西日本→西武)
初年度: 42試合登板 5勝3敗5H 防御率3.76
通 算:422試合登板 25勝26敗136S86H 防御率2.73(現役)
▼ 2013年(5名)
・吉田一将(JR東日本→オリックス)
初年度: 15試合登板 5勝 6敗 防御率3.81
通 算:226試合登板 18勝20敗2S55H 防御率3.74
・柿田裕太(日本生命→DeNA/17年引退)
初年度:一軍登板なし
通 算:一軍登板なし
・加治屋蓮(JR九州→ソフトバンク/現阪神)
初年度:一軍登板なし
通 算:112試合登板 7勝4敗37H 防御率4.62
・石川歩(東京ガス→ロッテ)
初年度: 25試合登板 10勝8敗 防御率3.43<※新人王>
通 算:160試合登板 63勝55敗5H 防御率3.56
・小林誠司(日本生命→巨人)
初年度: 63試合 打率.255 2本塁打 14打点
通 算:621試合 打率.217 14本塁打 134打点
▼ 2014年(3名)
・竹下真吾(ヤマハ→ヤクルト/17年引退)
初年度:一軍登板なし
通 算:1試合登板 0勝0敗 防御率13.50
・野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜→中日/17年引退)
初年度:3試合登板 0勝0敗 防御率10.13
通 算:3試合登板 0勝0敗 防御率10.13
・横山雄哉(新日鉄住金鹿島→阪神/20年引退)
初年度:4試合登板 0勝2敗 防御率6.75
通 算:9試合登板 3勝2敗 防御率4.67
▼ 2016年(1名)
・山岡泰輔(東京ガス→オリックス)
初年度:24試合登板 8勝11敗 防御率3.74
通 算:92試合登板 32勝32敗 防御率3.64
▼ 2017年(2名)
・鈴木博志(ヤマハ→中日)
初年度:53試合登板 4勝6敗 4S12H 防御率4.41
通 算:84試合登板 4勝8敗18S13H 防御率5.18
・田嶋大樹(JR東日本→オリックス)
初年度:12試合登板 6勝 3敗 防御率4.06
通 算:42試合登板 13勝13敗 防御率3.93
▼ 2018年(1名)
・近本光司(大阪ガス→阪神)
初年度:142試合 打率.271 9本塁打 42打点<※新人王、盗塁王>
通 算:262試合 打率.281 18本塁打 87打点
▼ 2019年(4名)
・河野竜生(JFE西日本→日本ハム)
初年度:12試合登板 3勝5敗 防御率5.07
通 算:12試合登板 3勝5敗 防御率5.07
・小深田大翔(大阪ガス→楽天)
初年度:112試合出場 打率.288 3本塁打 31打点
通 算:112試合出場 打率.288 3本塁打 31打点
・佐藤直樹(JR西日本→ソフトバンク)
初年度:一軍出場なし
通 算:一軍出場なし
・宮川哲(東芝→西武)
初年度:49試合登板 2勝1敗13H 防御率3.83
通 算:49試合登板 2勝1敗13H 防御率3.83
ドラフト1巡目で指名された24選手中、石川歩、近本光司が新人王を受賞しているが、新人王に届かずとも1年目から数字を出している選手は多い。
投手で1年を通じて先発ローテーションを守ったのは石川と8勝を挙げた山岡泰輔のふたりだけだが、セットアッパー、クローザーとしてシーズン40試合以上に登板した選手は7人いる。なかでも2012年に指名された松永昂大、石山泰稚、増田達至の3人は大成功といっていいだろう。1年目からブルペンでフル稼働していながら故障も少なく、3選手とも在籍8年で300試合以上に登板するなどチームを支え続けている。
一方で、近年好調なのが野手だ。近本や小深田大翔は1年目からレギュラーを摑み、近本は新人王、小深田も同投票で2位に付けた。野手5人中、一軍出場がなかったのは昨季の佐藤直樹だけと、社会人野球出身のドラフト1巡目野手は期待に答える活躍を見せている。
これらを見る限り、広島が昨年のドラフトで1本釣りをした栗林良吏投手も即戦力としての活躍に期待がかかる。昨年の新人王に輝いた森下暢仁に続き、2年連続の新人王が生まれる可能性も十分に考えられそうだ。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)
大半のチームがメンバー編成を終え、2021年のシーズンに向けて調整を続けている。今年は大物外国人の入団も話題だが、新規外国人選手の入国制限や隔離期間などもあり、合流はまだまだ先になりそう。新戦力という意味では、新人選手にも大きな注目が集まることになるだろう。特に、大学球界で名を馳せた佐藤輝明(阪神)や早川隆久(楽天)らには、早くも新人王を期待する声もある。
しかしながら、社会人出身選手の多くは即戦力を期待されている部分が大きい。昨季も西武の宮川哲投手や、楽天の小深田大翔選手が1年目から活躍。早い段階から主力選手としての活躍が期待できるという部分では、彼らの躍進がチームの順位に影響を与える部分もあるだろう。
◆ 投手も野手も粒ぞろいの社会人出身選手たち
近年の社会人野球出身の選手たちは、1年目から首脳陣の期待に応える活躍をしているのだろうか? ここでは、過去10年(2010年〜2019年)のドラフトで1巡目指名された社会人野球出身選手のルーキーイヤーの成績と通算成績を調べてみた。過去10年においては、投手19人、野手5人の計24選手が対象となる。
▼ 2010年(2名)
・須田幸太投手(JFE東日本→横浜/18年引退)
初年度: 17試合登板 2勝 6敗 防御率5.29
通 算:166試合登板 16勝19敗1S37H 防御率4.81
・榎田大樹投手(東京ガス→阪神/現西武)
初年度: 62試合登板 3勝 3敗1S33H 防御率2.27
通 算:237試合登板 29勝25敗3S60H 防御率4.16
▼ 2011年(3名)
・武藤好貴投手(JR北海道→楽天/17年引退)
初年度: 9試合登板 0勝0敗 防御率5.14
通 算:85試合登板 4勝4敗1S8H 防御率4.96(2017年引退)
・安達了一選手(東芝→オリックス)
初年度: 50試合 打率.159 0本塁打 4打点
通 算:964試合 打率.244 35本塁打 283打点
・十亀剣投手(JR東日本→西武)
初年度:41試合登板 6勝0敗9H 防御率2.72
通 算:206試合登板 52勝49敗3S13H 防御率4.04
▼ 2012年(3名)
・松永昂大投手(大阪ガス→ロッテ)
初年度: 58試合登板 4勝 1敗1S1H 防御率2.11
通 算:359試合登板 16勝15敗1S135H 防御率2.91
・石山泰稚投手(ヤマハ→ヤクルト)
初年度: 60試合登板 3勝 3敗10S21H 防御率2.78
通 算:344試合登板 23勝28敗75S64H 防御率3.34
・増田達至投手(NTT西日本→西武)
初年度: 42試合登板 5勝3敗5H 防御率3.76
通 算:422試合登板 25勝26敗136S86H 防御率2.73(現役)
▼ 2013年(5名)
・吉田一将(JR東日本→オリックス)
初年度: 15試合登板 5勝 6敗 防御率3.81
通 算:226試合登板 18勝20敗2S55H 防御率3.74
・柿田裕太(日本生命→DeNA/17年引退)
初年度:一軍登板なし
通 算:一軍登板なし
・加治屋蓮(JR九州→ソフトバンク/現阪神)
初年度:一軍登板なし
通 算:112試合登板 7勝4敗37H 防御率4.62
・石川歩(東京ガス→ロッテ)
初年度: 25試合登板 10勝8敗 防御率3.43<※新人王>
通 算:160試合登板 63勝55敗5H 防御率3.56
・小林誠司(日本生命→巨人)
初年度: 63試合 打率.255 2本塁打 14打点
通 算:621試合 打率.217 14本塁打 134打点
▼ 2014年(3名)
・竹下真吾(ヤマハ→ヤクルト/17年引退)
初年度:一軍登板なし
通 算:1試合登板 0勝0敗 防御率13.50
・野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜→中日/17年引退)
初年度:3試合登板 0勝0敗 防御率10.13
通 算:3試合登板 0勝0敗 防御率10.13
・横山雄哉(新日鉄住金鹿島→阪神/20年引退)
初年度:4試合登板 0勝2敗 防御率6.75
通 算:9試合登板 3勝2敗 防御率4.67
▼ 2016年(1名)
・山岡泰輔(東京ガス→オリックス)
初年度:24試合登板 8勝11敗 防御率3.74
通 算:92試合登板 32勝32敗 防御率3.64
▼ 2017年(2名)
・鈴木博志(ヤマハ→中日)
初年度:53試合登板 4勝6敗 4S12H 防御率4.41
通 算:84試合登板 4勝8敗18S13H 防御率5.18
・田嶋大樹(JR東日本→オリックス)
初年度:12試合登板 6勝 3敗 防御率4.06
通 算:42試合登板 13勝13敗 防御率3.93
▼ 2018年(1名)
・近本光司(大阪ガス→阪神)
初年度:142試合 打率.271 9本塁打 42打点<※新人王、盗塁王>
通 算:262試合 打率.281 18本塁打 87打点
▼ 2019年(4名)
・河野竜生(JFE西日本→日本ハム)
初年度:12試合登板 3勝5敗 防御率5.07
通 算:12試合登板 3勝5敗 防御率5.07
・小深田大翔(大阪ガス→楽天)
初年度:112試合出場 打率.288 3本塁打 31打点
通 算:112試合出場 打率.288 3本塁打 31打点
・佐藤直樹(JR西日本→ソフトバンク)
初年度:一軍出場なし
通 算:一軍出場なし
・宮川哲(東芝→西武)
初年度:49試合登板 2勝1敗13H 防御率3.83
通 算:49試合登板 2勝1敗13H 防御率3.83
ドラフト1巡目で指名された24選手中、石川歩、近本光司が新人王を受賞しているが、新人王に届かずとも1年目から数字を出している選手は多い。
投手で1年を通じて先発ローテーションを守ったのは石川と8勝を挙げた山岡泰輔のふたりだけだが、セットアッパー、クローザーとしてシーズン40試合以上に登板した選手は7人いる。なかでも2012年に指名された松永昂大、石山泰稚、増田達至の3人は大成功といっていいだろう。1年目からブルペンでフル稼働していながら故障も少なく、3選手とも在籍8年で300試合以上に登板するなどチームを支え続けている。
一方で、近年好調なのが野手だ。近本や小深田大翔は1年目からレギュラーを摑み、近本は新人王、小深田も同投票で2位に付けた。野手5人中、一軍出場がなかったのは昨季の佐藤直樹だけと、社会人野球出身のドラフト1巡目野手は期待に答える活躍を見せている。
これらを見る限り、広島が昨年のドラフトで1本釣りをした栗林良吏投手も即戦力としての活躍に期待がかかる。昨年の新人王に輝いた森下暢仁に続き、2年連続の新人王が生まれる可能性も十分に考えられそうだ。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)