日本人のモラルのよさはどこにいった! 持続化給付金の不正受給が6000人、総額80億円ってマジか!?
いったい日本人のモラルはどうなってしまったのか――。新型コロナウイルスの影響で、困窮している個人事業主らに支給する持続化給付金を不正に受け取った人が、トンデモなく多いことがわかった。
警察の逮捕を恐れて自分から「お金を返したい」と申し出た人だけで約6000人。その騙しとった額は合計で約80億円近くになるという。
ネットでは、
「これは氷山の一角。みんなやっていると、武勇伝のように自慢する輩が多すぎる」
と、怒りの声が殺到している。
「捕まるのが怖いから返したい」人が殺到
持続化給付金持続化給付金は、今年(2020年)4月から始まった、コロナ禍で打撃を受けた中小企業や事業者に対する支援制度の一つだ。中小企業には最大200万円、個人事業主らには最大100万円の現金を支給する。
主な条件は、コロナ禍によって収入が半減した場合などで、打撃をうけた人に素早く支給するために、ネットを通じて申請するのが一般的。本人確認も窓口ではなく、ネットを通じて書類で行なったため、特殊詐欺にはもってこいとなり、全国で逮捕者が続出した。
こうした逮捕報道を受けて、不正に受給した多くの人が「自分も逮捕されるのではないか」と心配になり、経済産業省(中小企業庁)や全国の消費生活センターなどに返還を申し出る人が続出しているというのだ。
主要メディアの報道を総合すると、「持続化給付金」はこれまでに約363万件、4兆7000億円が支払われているが、各地で不正受給が発覚したため、経産省では「誤って申請した人」などから、返還の申し出を受け付けてきた。
これまでに「事業をやっていないのに申請した」「収入源の金額を誤って記載した」など、返還の申し出は10月29日時点で6028件にのぼる。
このうち、751件分にあたる約7億9200万円がすでに返還されたが、経産省は申し出に不正が疑われる場合は調査を行うとしている。残りの件数の総額を単純計算すると、約67億9000万円というトンデモない額になる。仮にこれら全部が不正受給だとすると、合計75億8000万円分も詐欺の片棒を担いだ人々がいるわけだ。
しかも、自分から正直に「返還したい」と申し出た「氷山の一角」だけで、これだけの巨額だ。日本人のモラルは地に落ちてしまったかのようだ。
税理士事務所には整理券を持った不正受給の行列
もともと持続化給付金については開始当初から「特殊詐欺の格好の餌食になっている」といわれてきた。全国初の逮捕者(大学生)を出した沖縄県の地元紙「沖縄タイムス」は9月12日付の「税理士事務所に『行列』 コロナ給付金不正キャバクラなどに情報出回る 若い女の子やアジア系外国人がひっきりなしに」が、こう伝える。
「持続化給付金を巡り、那覇市松山(編集部注:那覇市最大の繁華街)のキャバクラなどの飲食店従業員のあいだで4〜5月ごろ、『従業員でも受け取れる』といった情報が出回り、申請者が一時急増していたことが飲食関係者などへの取材で分かった。紹介した報酬として『数万円を受け取った』と明かす人も複数いる」
そして、沖縄タイムスは不正受給のバックに税理士事務所がいると指摘する。
「不正受給に関与した疑いで県警の調べを受けている税理士事務所には、申請手続きのために行列ができていた。受給に関する口コミが広がっていたのは今年4〜5月ごろ。飲食や接客業の従業員らの間で『マルチ商法的に』広がり、申請者が増えていった。『確か紹介料は2万〜3万円ほどだった』(関係者)と話す人もいる」同紙は、こう続ける。
今回、県警の任意聴取を受けている税理士事務所には、飲食事業などを手掛ける正当な受給対象事業者に加え、本来対象ではない人の申請も相次いでいたとみられる。
ある飲食店オーナーは、「事務所に行くと、20人ぐらいの列ができていた。周囲の路上駐車もひどかったですね」。事務所では整理券が配られ、スタッフが手際良くさばいていたという。列を成して申請者が殺到していたのを目撃した近隣の男性は「若い女の子やアジア系の外国人がひっきりなしに来ていた」。別の60代男性も「外車やベンツ、ワゴン車が4〜5台、路上駐車していて、何だろうと思った」と語った。
今回の持続化給付金のケタ外れの不正受給騒ぎについて、ネットでは怒りの声があふれている。
「正直にやっているのがバカバカしくなっちゃいます」
元特捜部主任検事の前田恒彦氏は、こう投稿した。
「返したからといって詐欺の事実は消えてなくならない。うっかりミスを理由に返還しても、調べてみれば故意の不正受給だったケースも相当あるはず。警察も検察も不正受給には厳しい姿勢で対応している。特に指南役の助言にもとづいて組織的かつ大規模に行われた事案は、たとえ末端の不正受給者であっても、立件されることがあり得ると覚悟しておく必要がある。警察庁長官も『刑事事件として取り上げるべきものがあれば、厳正に対処する』と述べていますし、法務大臣も全国の検察庁の次席検事を集めた会議で『新型コロナ感染拡大に伴い、持続化給付金の不正受給など、国民の不安につけ込む犯罪が発生している』と指摘し、厳正に対処するように指示しているところだ」
ITジャーナリストの高橋暁子さんも、こう指摘した。
「不正内容が悪質な場合は詐欺罪で告発されますし、不正受給がわかった場合のペナルティは厳しいものです。まず、支給額に年3%の延滞金を加えた額に2割を上乗せした金額を返還する必要があります。不正内容の度合いによっては屋号やペンネームなどが公開される可能性もあります。逮捕が相次いでいますので、身に覚えがある人はすぐに返還手続きをとったほうがいいでしょう」
それにしても、あまりに巨額の不正が行われていたことに驚く人が多かった。
「6000件...。多すぎに驚いた。本当に迅速に支給を待っていた人たちがこの不正した人の後になったとしたら簡単に許せるものではないですね。きちんと返還し、そのうえで適切な罰則を与えてほしいです」
「知り合いの中小企業の社長は、友人にヤンキーあがりの個人事業主が多い。その友人たちが『帳簿を操作して給付金を貰ったって、武勇伝のように自慢し、そんなことみんなやっている』と言っていたため、羨ましがっていた。私は『そんなことすれば必ずバレるよ』と忠告したが、その社長は納得していなかった。だが、このような逮捕者が出て、やらなくてよかった、と思ったはず」
「これ、早かれ遅かれ必ずバレますからね。私が働いている社会福祉協議会の緊急小口貸付も虚偽申請者が多数。今、警察と職員総出で1件1件勤務先等の確認作業中だから、年末から来年いっぱいにかけどんどん逮捕があがる。ある日突然、警察が職場や自宅にやってくる。大きな代償を払うことになる」
持続化給付金をもらった人からは、こんな声があがっている。
「6月に受給しましたが、本当に助かりました。不正して受給したらどうなるとかは、ちゃんと明記してある。返せばいいというものじゃない。それなりの処罰を受けるべきです」
「私も自営で4月から売り上げが落ち、5月の自粛でさらに輪をかけ、家賃すら払えなくなり...持続化給付金と都の感染拡大防止協力金が支給され、ホントに助かりました。不正に給付を受けた者はキッチリ裁かれるべき」
最後にもらわなかった人の声を紹介したい。
「自動車販売・整備業です。幸いにも大きな打撃を受ける業種ではないのですが、簡単な申告でもらえる100万円、喉から手が出るほど欲しかったです。売上操作して受給することも可能でしたが、インチキしたり人を騙したりしてまでお金をもらうことはできませんでした。こんなに不正していた人がいたなんて知ると、正直にやっているのがバカバカしくなっちゃいます」
(福田和郎)