コミットメントライン契約締結社数

写真拡大 (全3枚)

 コロナ禍を背景に、上場企業の資金調達に伴う情報開示が増えている。

 上場企業では、現時点において新型コロナによる重大な影響を受けていなくても、今後の業績見通しの判断が難しい状況に置かれているため、手元資金を厚めに確保するケースが多くなっているようだ。

 資金調達の手段は様々だが、近頃上場企業の適時開示情報でよく目につくのが「コミットメントライン契約」の締結。

 同契約の特徴は、企業が金融機関と契約を結び「あらかじめ設定された期間」かつ「融資枠内」であれば審査なしで融資を受けられる約束(コミット)をする契約で、金利とは別に手数料がかかるものの、スムーズな資金調達が可能になるとともに金融機関と当該企業の関係性を判断するひとつの指標となる。

 帝国データバンクでは2020年1月1日から7月31日までの適時開示情報から、コミットメントライン契約の締結を公表した上場企業を集計した。

※コミットメントライン・・・一定期間において貸出極度を設定し、その範囲内であれば何度でも資金の借入・返済ができる融資形態

■新型コロナへの対策

 2020年1月1日〜7月31日にコミットメントライン契約の締結を発表した上場企業は136社。昨年の同時期は26社であり、前年と比べ110社増、約5.2倍となった。

 また、136社のうち、新型コロナウイルス感染症による事業環境の変化や、不測の事態に備えるための財務基盤の安定化が主たる目的であるとした会社は84社確認され、全体の約61.8%を占めた。

 契約金額の合計を見ると、2020年1月1日〜7月31日の間に締結されたコミットメントライン契約の合計金額は約1兆7933億円。昨年の同時期は約2694億円であり、約6.7倍に増加した。

 また、約1兆7933億円のうち、新型コロナウイルスの影響に備えた契約金額は約1兆1044億円であり、全体の約61.6%を占めた。

■機動的かつ安定的に

 業種別に社数をみると、「サービス業」が34社で最多であった。次いで「その他」33社(31社が持ち株会社)、「製造業」(28社)、「小売業」(16社)、「卸売業」(15社)と続いた。

 契約金額では「その他」が最多(約6214億円)となり、次いで「製造業」(約4807億円)、「サービス業」(約3603億円)、「建設業」(約1200億円)と続いた。

 2020年1月1日〜7月31日は前年同期に比べて、コミットメントライン契約社数、契約金額、共に大幅に増加した。公表資料の中で新型コロナに言及する会社が全体の6割以上あり、感染拡大に伴い、財務基盤の安定性向上のために手元の資金を確保しようとする動きが目立つ。

 現在、全国の新型コロナ感染者数は再び増加傾向にあり、今後も事業環境の変化、影響が一定程度長期化するリスクがあり、見通しは不透明である。

 コロナ禍の長期化に備え、コミットメントライン契約をはじめとした機動的かつ安定的な資金調達手段を確保する動きは今後も続くだろう。