コロナ禍が変える 企業の東京圏一極集中

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■国内人口の30%は東京圏に

 多方面で東京圏一極集中が続いている。国内の人口は年々減少しているのに対し、東京圏(1都3県)の人口は増え続け、特に東京都の人口は約1400万人に上る。

 また東京圏に属する神奈川県・埼玉県・千葉県の人口は、神奈川県(約920万人)、埼玉県(約740万人)、千葉県(約630万人)となっており、これらに東京都の人口を合計すると、約3700万人。

 総人口のおおよそ10%が東京都に、30%が東京圏に在住していることになりその多さが実感できるだろう。また東京圏への集中は人口だけではなく、企業数においてもその傾向が表れている。

■本社を東京圏に置く理由

 6月2日に帝国データバンクが発表した全国「本社移転」調査によると、2019年に東京圏へ転入した企業は312社となった。

 一方で、東京圏から転出した企業数は246社となり、転入企業数が転出企業数を上回る、転入超過の状態となっている。また転入超過の状態は9年連続ということも判明しており、企業においても東京圏一極集中の状態が続いていることが判明した。

 政府はこうした現状を打破し、地方経済の活性化を実現するために、東京23区から地方へ本社機能を移した企業などが税制の優遇措置を受けられる制度を設けている。

 しかし、企業移転によるメリットよりも、東京圏が大規模市場のため取引が有利に働く点や、人材の採用面における利便性がそれらを上回っていることが転入超過の要因となっているのだろう。

 “よって、この状態は今後も続くと思われる…”と、これまではまとめていたのだろうが、今年に入り状況が大きく変わってきたのは言うまでもない。

■コロナ対策で本社を移転

 コロナ時代に突入した今日、今までの流れがガラッと変わる可能性がでてきた。その一番の理由としては、やはり新型コロナウイルス感染症対策によるものだ。

 東京都千代田区に本社を置く東証1部上場の三菱マテリアル(株)は、新型コロナウイルス感染症への対応として、3月上旬より従業員は原則在宅勤務にしたほか、東京都の新規感染者数が急増した4月上旬以降は従業員の罹患リスク回避のため、在宅勤務は維持しつつ一時的に本社機能をさいたまオフィスに移転(現在は原則在宅勤務を継続し、本社機能を再度東京に移転している)。在宅勤務に加え、最小限のBCP要員は都外への通勤にすることでリスク回避に取り組んだ。

 各社でこのような取り組みが進めば、本社を東京圏以外の地方に移す企業も現れ、東京圏一極集中の流れは変化する可能性がある。

■東京圏である必要性が減る?

 近時は新型コロナウイルスの感染拡大がトリガーとなり、多少は業務のデジタル化が進みテレワークなどの取り組みは進んだが、都道府県をまたいでの本社移転の情報は聞かれない。

 しかし今後は、サテライトオフィスの活用や完全テレワークでの業務などを実施する企業の増加に比例して、東京圏から本社機能を移す、もしくはオフィスすら置かない企業も増えてくることが予想される。

 コロナ禍が企業の体制を大きく変える日は近いのかもしれない。