一切のサービスを控えるという徹底ぶり!

 一時に比べれば落ち着きを見せている、日本国内での新型コロナウイルス感染状況。連日、テレビなどのメディアでは、経済活動の本格的再開に向け、飲食店などが熱心な感染予防対策を講じて営業している姿が報道されている。

 新車販売現場においても店舗間で差はあるものの、入店時の消毒やスタッフのマスク着用は、ほぼ当たり前となっている。熱心なところでは、商談テーブルの真ん中に透明なアクリルボードを設置し、商談時の飛沫感染予防を行ったり、点検終了時の車両消毒、飲み物を提供する際には使い捨ての紙コップの使用や、一部スタッフについては医療用の使い捨てゴム手袋の着用などを行っているところもある。ただ、同じ販売会社でも店舗によって感染予防対策のレベルに差があるなど、業界全体での統一感があまりないのは気になるところではある。

 しかし、先ほど究極の感染予防対策を講じている新車ディーラーに遭遇した、それはレクサス店である。

 店舗を訪れると、受け付けの女性が応対してくれたので、「新車を見に来た」と伝えると、ショールーム内の展示車のある場所まで案内してくれたものの、そのままフェードアウト(立ち去って)してしまった。ビフォアコロナの時代から、違和感を覚える接客と感じていたレクサス店であったが、いつにも増して強い違和感を覚えた。

 とりあえず展示車を眺めていると、ウインドウに何やら貼り紙があった。内容を要訳すると、「新型コロナウイルス感染予防のために、店頭での車両説明、商談、下取り査定、試乗は中止しております」というものであった。いい歳のオジさんとなる筆者であるが、久しぶりに強い衝撃が走った。一瞬取り乱したものの、勇気をふりしぼり受け付けの女性に「新車販売はしていないということですか?」と聞くと、全面的に中止しているというわけではなく、希望があれば対応しているとのこと。

 その後、セールスコンサルティング(レクサスではセールスマンをこう呼ぶ)がやってきたので、「店頭で商談しないということは、新車は売っていないのですか」と聞くと、「そういうわけでもないですけど……」と返答に困っていた。レクサスはもともと訪問販売を行わない、一度接客したひとへの積極的な店頭再誘致の声がけも行わないのが大原則。それなのに、店頭で商談しないということは「新車販販売活動を全面的に中止しております」と言っているのに等しい。新車ディーラーが「商談はしません」と公言している姿は、筆者からするとまさに“アメイジング!”。

新しい“おもてなし”を模索しているのかもしれない

 商談しないとしているだけでなく、店頭での飲み物の提供や、点検・整備を待つラウンジでの雑誌類の提供など、ありとあらゆるサービスの提供が中止となっている。さらに、訪問したのは梅雨入り前にしては非常に蒸し暑い日だったのに空調すら作動していなかったようで、店内は暑かった(これも感染予防対策?)。

 レクサス以外の新車ディーラーは、感染予防対策を行い、厳しい販売環境のなかでも、必死に激減傾向の顕著な新規の新車購入見込み客への販売促進や既納客への熱心な新車への乗りかえ案内をしている。その姿とは、あまりにも対照的なレクサスの姿はとにかく衝撃的であった。

 入念な感染予防対策を講じることはもちろん大切なことであるし、それ自体を否定するつもりはない。ただ、WITHコロナの時代となり、新型コロナウイルスと共生していかなければならなくなったいまでは、継続性があり、それでいて効果的でもある感染予防対策が必要と考えると、自らの中心業務をほぼ全否定するような対策以外の方策がなかったのかという疑問が残る。

 ビフォアコロナの時代は、“おもてなし”をウリにしていたレクサス店だったが、WITHコロナの時代には、いまのところ“おもてなし”は“封印”しているといっていいだろう。

 レクサスブランドの公式ウェブサイトには、このような感染予防対策を行っていることは書かれていないので、たまたま訪れた店舗だけの対応なのかもしれないが、WITHコロナの時代となり、新しい生活様式が求められるなか、レクサスも何か“新しい新車販売様式”を模索しているのかもしれないと前向きに考えることにした。

 (写真はすべてイメージであり、記事内に登場する店舗とは異なります)