映画館、再開後の見通しは 全興連が感染拡大予防ガイドライン策定
27日、全国47都道府県の映画館が参加する全国興行生活衛生同業組合連合会(以下、全興連)が都内で記者会見を行い、映画館の営業再開にあたり発表した「映画館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に関して説明を行った。
国の緊急事態宣言が解除され、各地では営業を再開する劇場も出てきている。東京においては、映画館が休業要請の緩和行程を3段階で示すロードマップの「ステップ2」にカテゴリー分けされており、早ければ今月末にも要請が解除される見通しとなっている。
会見には、全興連理事長でシネマサンシャインなどを運営する佐々木興行株式会社の代表取締役社長・佐々木伸一氏が一人で出席。営業再開あたり佐々木氏は「映画館も含まれる興行場は、興行場法の認可のもと営業が行われております。興行場法と言いましても、各都道府県で基準が違いますが、そもそもが厳しい換気基準をクリアしないと営業ができない。一般のお客さまには、映画館というのは閉じられた空間というイメージがあるかもしれませんが、映画館は密閉空間ではないということは、ご理解いただきたいし、業界としても周知していきたい」と訴えかける。
ガイドラインでは、感染リスクが高い3密(密閉・密集・密接)を避け、感染拡大を防ぐため「映画館入り口の消毒液の設置」「ロビーや客席のソーシャルディスタンスの確保」「キャッシュレス決算の推奨」「マスクや手袋の着用」「こまめな消毒と清掃」を提唱。また「チケットは観客同士の間隔を空けて販売」「飛沫(ひまつ)感染が予想される舞台あいさつ、トークショーなどのイベントは当面、行わない」「来館者に対する感染防止策の周知を徹底」といった対処も実施する。
佐々木氏は「前後左右を空けて。最大でも50%の座席(チケット)しか販売いたしません。また飛沫(ひまつ)感染防止のために、当面の間は舞台あいさつなどは行いません」と説明。「一般的に演劇などと比べても、映画は稼働率が低くても成り立つと言われています。ただ、それも土日の繁忙期があってのこと。それぞれの映画館で座席数が減らされるのは厳しい。また、幕あいの入退場・入れ替えに関しても、今まで20分でできたことが40分くらいかかるかもしれない。それはつまり上映回数が減るということ。非常に厳しいが、感染防止が第1歩」と語った。
昨年の全国の映画観客動員数はおよそ1億9,500万人となり、2億人の手前に迫った。佐々木氏は「今年こそは、という機運が高まっていたのですが。4月、5月と東京の映画館がほとんど営業できなかったことは大きい。しかし、これからは配給会社も新作を出す機運が高まっていますし、需要の高まりは期待できます。ただ果たしてどうなるか……。前年の50%くらいは覚悟しないといけないかもしれません」と吐露する一幕も。「ただし、今日は暗い話ではなく、映画館が再開するという明るい気持ちを伝えたい」。
また現在は、自宅で楽しめるストリーミング配信もより脚光を浴びている。佐々木氏は「映画文化を守ることが大前提だが、映画館文化も守らないといけない。これは既得権を守るということではなく、映画の作り手に一番多くのリターンをもたらすのは、まず映画館で出していただくことが一番大きいと確信を持っている」と言及。「そのためには、映画館も歯を食いしばって、映像制作の方に無視されないように、映画館文化を守っていきたい」と力強く語っていた。(取材・文:壬生智裕)