嵐、斎藤工、藤田ニコル…続々と誕生する「芸能人ユーチューバー」明暗の分かれ道
芸能人による“ユーチューバー化”が止まらない。YouTube上で動画を配信し、再生数に応じて広告収入を得ている人をユーチューバーと呼ぶが、'19年は斎藤工や水嶋ヒロといった俳優たち、錦戸亮や渋谷すばるといった元ジャニーズ、お笑い芸人などが続々と自身のYouTubeチャンネルを開設した。
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次世代ユーチューバーを紹介するポータルサイト『ユーチューバーNEXT』の調査によると、'19年にチャンネルを開設した芸能人は100人以上。その登録者数ランキングのベスト3は、嵐(224万人)、藤田ニコル(58・7万人)、Six TONES(33・4万人、数字はすべて11月1日時点)と続く。
順調なのは「お笑い芸人」たち
「テレビがメディアとして頭打ちになっているということとコンプライアンスや世論も厳しくなっていくなかで、より活動のしやすい場所ということでYouTubeを選んでいるのだと思います」
そう話すのは前出の『ユーチューバーNEXT』を運営し、弁護士として法律や事件を解説する動画を配信する、ユーチューバーの『アトム法律事務所』代表の岡野武志氏。
現在、YouTubeで順調に再生数を稼いでいるのがお笑い芸人たちだ。キングコングの梶原雄太は、1年足らずでチャンネル登録者数が100万人を突破。ロバートの秋山竜次は“架空のクリエイター”に扮したインタビュー動画を配信、イベント開催やコラボ商品を発売するほどに。ヒロシは趣味であるキャンプに特化したチャンネルで、再ブレイクを果たしている。彼らの成功の理由とは。
「自分から主体的に取り組んでいて、自分の強みを生かした企画でツッコめているところがいい。YouTubeも結局ブログの延長であり、“動画のブログ”なんです」
と、岡野さん。かつては芸能人はホームページしか持っていなかったが、'00年代初頭にブログが生まれ、日常的に自分のことを発信するようになった。
「日本ではそこにサイバーエージェントが上手に絡んで、多くの芸能人がアメーバブログを始めるようになった。そのような形でYouTubeチャンネルも持つようになる。今年が芸能人ユーチューバー誕生の“元年”になって、これからもっと増えていくと思います。
例えば、若手の芸人などは、いまはテレビを目指して頑張るよりも、YouTubeで配信していったほうが稼げるし、人の目にも触れやすいという状態なので、いいところしかない」(岡野さん)
ユーチューバーで厳しい芸能人は?
チャンネル登録者数が213万人、総再生回数はなんと13億回を誇るコンテンツとなった『なーちゃんねる』。動画を配信する“なーちゃん”さんは2児のママで、おもちゃやお菓子を紹介する動画などを配信し、“ファミリー系ユーチューバー”としてカリスマ的人気を博している。彼女に話を聞いてみると“芸能人がYouTubeで成功する要素”は3つ。
(1)本気でやる「芸能人で成功する方の共通項は、“ガチでやってる”ことです。逆に、知名度にあぐらをかいてナメてかかる人は再生されません。有名であることで、登録者数は増えやすいですが、再生回数には反映されにくいのです。
YouTubeで再生されるのは、面白いコンテンツ。“え、ここまでやるんだ!”とか“こんなことするんだ!”と、視聴者をいい意味で驚かせるくらいの企画ができる人が成功します。梶原さん、秋山さん、ヒロシさんは、コンテンツ作りに本気で取り組んでいるので成功したと言えます」(なーちゃんさん、以下同)
(2)ファンがいる「ファン層がしっかりしている方も強い。本田翼さん、嵐さんは、もともとファンが多い方々。辻希美さん、ダルビッシュ有さんは、ブログやTwitterを通じてインターネット上にファンが多い。特にこのインターネット上のファンは、本人に強烈な関心があるため、テレビの視聴者よりもコアなファンといえます。こういったファンを抱えている人はYouTubeでも成功しやすいです」
芸人たちが成功する一方で、再生数が伸びない芸能人も少なくない。水嶋ヒロは料理が得意ということで料理に特化したチャンネルを開設したが、登録者数は13万人、直近の投稿動画の再生数は3・2万回と思いのほか伸び悩んでいる。斎藤工も登録者数は10・5万人で直近の再生数は7・2万回と微妙な数字だ。
「自分のファンが“どんな人たちであるか”を想定できない人は、知名度があってもYouTubeでは成功しにくいのです」
ドラマや映画が主戦場の俳優など、ファンと接する機会が少ない芸能人は、実際に自分たちのファンがどのような人なのか、実は把握できていなかったりするようだ。
(3)テレビとの違いをわかっている「YouTubeはテレビとは全く違うメディアです。企画の立て方も、戦略もすべてがテレビとは異なります。その点を理解してコンテンツを作ることも非常に重要です」
前出の岡野さんもYouTubeの特異性について、
「YouTubeはスマホの小さい画面で見るものなので、そこに特化したコンテンツが作れているか。画角であったり、YouTube特有のスピーディーに話が進んでいくような編集をしている人は伸びています。
逆にテレビの編集をそのままやっているような人、またアカウントの作成であったり事務所に全部セッティングしてもらって、編集もお任せみたいな人も多いですが、そういった人は伸びないと思いますね」(岡野さん)
ウケがいい・悪いの差
テレビとは違うYouTubeというメディアに合っている内容とは!?
「テレビは数チャンネルのみなので、視聴者層を細かく分けることができません。例えばメイクの紹介なら“冬のデートに映えるメイク”のような企画になります。対してYouTubeは、チャンネルが無数にあります。そのため視聴者のターゲットを非常に細かく設定することができると思います。メイクの例なら“奥二重の人に合うメイク”といったコンテンツが作れます。奥二重の人が、どんなふうにアイメイクをすると魅力的に見えるか、髪型や服装は……などと企画が広げられます。
テレビだと、“奥二重”の方だけに特化したメイク企画はしにくいです。その時間帯、二重や一重の人が視聴しなくなってしまうからです。逆にYouTubeで“冬のデート”だけがテーマだと無数のチャンネルの中に埋もれてしまいます。こういった特性の違いが、すべてのジャンルにありますね」(なーちゃんさん、以下同)
逆にYouTubeでウケがよくない内容は?
「ターゲットが広すぎる内容は、ウケが悪いです。YouTubeでは、ターゲットを絞って深く刺す戦略が有効なので、大衆向けというか、多くの層にウケようと思うと、どの層にもウケません」
最後に、芸能人に限らずYouTubeで成功するために必要なことを聞くと、
「ジャンルによって再生させたり、登録者数を増やす戦略は違います。しかし、どのジャンルでも人気のユーチューバーになるには、“ターゲットの求めていることをする”ことです。
YouTubeは、『好きなことで、生きていく』という標語ですが、これを“(自分の)好きなことで 生きていく”ととらえている人は伸びません。“(ターゲットの)好きなことで 生きていく”という考え方ができる人が、YouTubeで成功します。自分のしたいことではなく、“見る人が自分にしてほしいと思うであろうこと”をできる人です」
HIKAKINなどトップに君臨するユーチューバーと肩を並べる芸能人は出てくるだろうか。