「痛みに効果がある」と続けている習慣や運動が、症状を悪化させているかもしれない。腰痛や関節痛について、10のテーマに応じて専門家に聞いた。第2回は「男と女」――。(全10回)

「国民生活基礎調査」(厚生労働省平成28年)によれば、病気やけがなどの自覚症状のうち男性にもっとも多いのは腰痛。女性では肩こりとなっている。その違いはどこから起こるのか。5万人以上の治療実績を誇る鍼灸師・福辻鋭記氏に話を聞いた。

■男性は腰痛、女性は肩こり

私の治療院の患者さんでも、腰痛は男性に多く、肩こりは女性に多いのが特徴です。なぜこのような違いがうまれるのでしょうか。それを理解するには、男女の骨格の違いを知ることが大切です。

写真=iStock.com/kokoroyuki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokoroyuki

男女の骨格で、大きく違うのが骨盤です。男性は「バケツ型」といってやや縦長で広がりがなく、女性は「タライ型」で、横に広がったかたちをしています。上半身では、肋骨の前面下部で左右の弓状の部分(肋(ろっ)骨(こつ)弓(きゅう))がつくる角度において男女差があります。おおむね男性のほうが広く、女性では広がりがありません。そこで、男性はいかり肩、女性はなで肩の人が多いのです。

これらの骨格の違いから、痛みが出る部位も変わってきます。

なで肩の人は、いかり肩の人よりも腕が下がった状態になるため、腕と手の重みが肩にかかり、肩こりになりやすいのです。そのため女性に肩こりが多い。また、女性は首が細く、頭を支える力が弱いというのも、女性に肩こりが多い原因だと考えられます。

■原因の特定できない慢性的な腰痛も多い

もう1つの女性のウイークポイントは「膝」です。50代を過ぎると、変形性膝関節症に悩む女性はとても多い。もともと女性は骨盤が横に広いうえに、かかとの高いヒール靴を履く機会も多いわけです。ヒール靴を履いて直立姿勢を取るには、太ももの大腿四頭筋がしっかり働く必要があり、この筋力が弱い女性ほど膝に負担がかかり、年とともに膝を支えきれなくなります。

足裏の「土踏まず」のやや後ろぐらいに体重がかかるような立ち方を心がけましょう。

一方、男性の骨格にはどんな危険があるのでしょうか。

腰椎椎間板ヘルニアは、20〜40代の男性に多いといわれます。原因の特定できない慢性的な腰痛も男性に多い。これには男性の骨格がかかわっています。男性は女性よりも、おおむね肋骨弓がつくる角度が広く、骨盤は広がりがない骨格をしているため、肋骨の下から太鼓腹がせり出すような状態に脂肪がつきやすい。すると、「反り腰」といって背中が反り返った姿勢になり、慢性的な腰痛を招く原因となるのです。また、男性は骨盤まわりのじん帯に柔軟性がなく、筋肉が固くなりがちなので腰痛を助長してしまいます。

人の体は骨盤を土台に背骨が立っていて、それを軸に肋骨があり、全身の骨格ができています。呼吸をすると肺を支えている横隔膜が動き、肋骨も少し閉じたり開いたりします。このとき、骨盤も動くような柔軟性があることが正常なのです。骨盤まわりのじん帯や筋肉が硬くなれば、腰痛を助長するだけでなく、背骨や肋骨も自由に動かなくなって内臓の働きを妨げる恐れまであるのです。

【結論】骨盤と肋骨の前面下部の開き具合で、痛む部位が変わる

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福辻 鋭記(ふくつじ・としき)
アスカ鍼灸治療院院長
日中治療医学研究会会員。施術歴30年以上で5万人以上の治療実績を誇り、「日本の名医50人」に選ばれた鍼灸師。カイロプラクティック、整体なども取り入れた独自の治療法が人気。
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(アスカ鍼灸治療院院長 福辻 鋭記 構成=南雲つぐみ)