桜沢エリカさん

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 週刊女性で4世代にわたる美容師を舞台にした『こまどりの詩』を連載中の桜沢エリカさん。19歳でデビューして以来、魅力的な女性を描く作品を多数発表。第一線で活躍し続けてきた桜沢さんに、作品が生み出される “マンガの現場”について聞いた。

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伝説の美容師にも取材を刊行

「『週刊女性』から連載の話をいただいたときに、編集長から“美容室に置かれることが多いので、美容師が主人公の漫画はどうか?”と、提案がありました。日本の美容のお話だとベタになりすぎるかな? と悩みましたが、美容師さんの話を聞いているうちに、いまの美容業界は女性たちが女性のために作ってきたものだとわかってきたんです」

 と桜沢さん。“海外大物美容師の落としダネ”といったキーワード、愛憎劇や出生の秘密を絡ませるなど、舞台を美容業界全体に定めたことでストーリーが広がったと話す。制作にあたり、伝説の美容師たちに取材もしている。

「明治28年に横浜で創業し超有名なシバヤマ美容室の社長にお会いしました。バブル期の狂乱の話がおもしろかったです。(主人公の)椿のように、ご自身の名前で美容室をつくられた方としては遠藤波津子さんや山野愛子さんがいらっしゃいますが、山野さんの息子さんと結婚されたマダム路子さんにも取材できました」

 椿や藤子のモデルは?

「今回の登場人物のモデルになっている人はいないです。人物よりも美容の歴史が興味深いと感じたので。強いて言えば、海外大物美容師のモデルがヴィダル・サスーンだというくらいでしょうか」

 4世代を描くうえで、意外な苦労があったという。

「背景の街を描くのが難しいんですよ。いま'80年代の終わりをちょうど描いているんですが、街の様子がわかる資料って意外とないんです。戦前や戦後、昭和の時代は多いんですけどね。なので、その時代の映画をしらみつぶしに探したりしています。時代ごとの服やヘアメイクも難しい。

 資料として古本も買いますがなかなかコレ! っていうのが見つからない。すごく参考になったのは、ネットフリックスで見た『全裸監督』(笑)。ちょうどこの時代が描かれているんですね」

“仕事は週3〜4日”で終わらせる

 30年以上のキャリアを誇るベテランだが、

「週刊誌はプレッシャーもあるけど、いろんな発見があって、おもしろいです。ネタが出ないときですか?“果報は寝て待て”じゃないですが、カリカリしていてもしかたがない。お風呂にゆっくり浸かったりすると、むしろアイデアが浮かんだりします」

 タイトなスケジュールだが“仕事は週3〜4日”で終わらせるのが桜沢さんのペース。

「お話を考えて、セリフを紙におこし、担当編集にLINEで送ります。それを見ながら話の詰め方や、人物の入り方など細かいやりとりをして、原稿を仕上げます。そういった仕事をするのは週3〜4日、できれば3日で終わらせたいですね。それぐらいでないと週刊誌はやれないです。

 残りの日は取材とか資料集め、あとは自由時間。この春ぐらいまでは火曜日に組み紐のお稽古、土曜日にお茶のお稽古などに通っていたのですが、顔にケガをしたり夏バテに突入したりで、いま仕事以外の日はのんびりしています。秋からはまたバレエのレッスンを始めたいなと思って」

 桜沢さんのブログを見ていると、着物を着てバレエ鑑賞をしたり、鎌倉へお散歩に出かけたりと、なんとも優雅!

 だが、実際は何をするにしても“これもマンガにつなげられるかな?”と思ってやっている。言わば作品づくりの種まきをしているのだ。

 そんな桜沢さんが今後、描いてみたいマンガは?

「もう1度、バレエ漫画を描きたいですね。あとは、大好きな一条ゆかり先生の『デザイナー』のように、ファッション業界を実際の人物をモデルにして描きたい。いろんなものをたくさん見て、そこで脳内スクショをためてマンガに生かせれば、と思います」

(取材・文/安川ヤス子)

《PROFILE》
桜沢エリカさん ◎東京生まれ。10代でデビューして以来、コミック誌を中心に多方面で活躍。女性の心情をリアルに描写した漫画を多く手がけ、ファッションセンスにも注目が集まる。公言している趣味はバレエ鑑賞と着物、ときどき歌舞伎。ハローキティとロックバンド『KISS』が大好き