SNSのプロフィールの自撮り写真。アップした日付は2年ほど前。友人や家族と写っている写真はなかった

写真拡大

 誘拐と強制わいせつの疑いで逮捕された男はSNSに「彼女がいないので最近、寂しい」と書き込んでいた。家族とも疎遠、友達もいない……、誰にも相手にされない男が目をつけたのは抵抗しなそうな障害者だった。

【画像】「人相の悪い」非モテ中年男の送検時やSNSの“出会い系コミュ”

障害者を狙った非モテ中年男

《彼女がいなくて最近、寂しい》──。

 SNSの自己紹介欄にそう書き込んでいた男が9月5日、わいせつ目的誘拐、強制わいせつの疑いで逮捕された。

 東京・世田谷区の土木業、神山秀和容疑者(46)。

「パトカーに乗せられる男性を見ました。白髪の混じった短髪で、ちょっとうなだれたような感じでした。おとなしく(警察官に)従っていました」(近くの女性住民)

 神山容疑者は7月4日午後4時ごろ、世田谷区内の路上で女性(20代)に「俺んち来ない?」と声をかけ、築27年の自宅アパートに無理やり連れ込み服を脱がせて身体を触るなどわいせつな行為をした。

 昨年11月に路上で被害者を見かけたときに好意を持ち、今年5月に同じ場所で見かけた際、神山容疑者は声をかけた。その会話から、女性に知的障害があることに気づいたという。

 犯行当日、女性を待ち伏せし、声をかけた。「行きません」と拒絶した女性の肩を無理やり抱き、8畳ワンルームの部屋に連れ込み、犯行に及んだ。最初から、知的障害のあるその女性を狙った犯罪で、

「彼女に対する気持ちを抑えきれなくなった。知的障害があるから正常な判断ができず、家に来てくれると思った」

 そう供述しているという。

 障害者、障害児に対する性暴力の実態について調査、撲滅を啓発するNPO法人「しあわせなみだ」の理事長、中野宏美氏は、

「内閣府の調査では、被害者の障害の有無にかかわらず、性暴力の8割が顔見知りによる加害です。今回の事件でも、加害者は被害女性に何度か声をかけ、性暴力を完遂できるか見定め、実行したと考えられます」

 と犯行に至るまでの計画性を読み解く。さらに、

「加害者が性暴力をふるうのは相手が従うだろうと判断するからです。おとなしそう、支配できるから、ばれない、と考えます。障害があっても抵抗されそうな人にはしません」

 実際、神山容疑者の日常には、女性を物色していた形跡が数多く残されている。

SNSは出会い系ばかりの非モテ男

 SNS上では、『婚活』『30代以上の人との出会い』『ぽっちゃり』『障害者との出会い』など、出会いを目的にしたコミュニティーに多数参加していた。セックスや恋愛に関する診断テストを受けることも大好きだったようで、『欲求不満測定』や『あなたのことが好きな人の誕生日』『人生最後であなたとエッチする相手』などに個人データを登録し、診断結果を得ていた。

 数年前、SNS上で少しやりとりをしたという女性は週刊女性の取材に、「(直接の)面識はありません。ただ“仲よくしたいですけど、まだ婚活しています”というメッセージをもらったことがあります」と振り返る。

 神山容疑者の犯行かどうかは定かではないが、容疑者の自宅近くでは、障害者が狙われる出来事もあったという。証言するのは、近くの障害者施設で働く職員だ。

「今年の夏前です。うちの利用者さんで60代の女性ですが、ひとりで通勤したり、日常生活が送ることが可能なくらいの程度の障害です。朝、自転車に乗った若くない人から“お茶でも飲みに行かない?”と声をかけられたそうです。女性が“作業所に行くので”と断ると追いかけてきて、相当しつこく誘ってきたそうです。顔は細くてつり目の男だったそうです」

 神山容疑者に余罪があるのかどうかは、今後の取り調べの過程で明らかになるが、「弱者を狙った卑劣な事件です」(前出・職員)という唾棄すべきわいせつ事件。

 神山容疑者の特性について、昔からの知人男性は明かす。

「結婚もしていないし、彼女もいなかった。仕事は主に道路の舗装工事などをやっていました。普段は穏やかで、仕事熱心でした。ただ切れやすい面もあって、かなり短気。仕事中は、周囲とトラブルにならないように、必死で抑えていたらしい」

 土木の仕事柄、男性ばかりの職場で、たまに女性の話になることがあっても、神山容疑者は自分からそういう話をしたことはなかったという。「彼女が欲しいとか結婚したいという願望は感じましたけどね」(前出・知人男性)

 と、非リア充で非モテで女っ気ゼロの生活を送っていたと明かす。そればかりか、

「友達もいない。いつもひとりだった」

 と付け加え経済や家族関係でも恵まれていなかったことを、

「お金がなく、キャバクラなどに飲みにも行けなかった。妹さんにかなりの額を借金していて、月々返済をしていると聞いたことがあります。それに両親とも不仲でほとんど付き合いがないようでした。それ以上の詳細は知らないけど、複雑な家庭環境をにおわせていましたね」

 神山容疑者は東京・横田基地近くで育ち、地元の小中学校を卒業後、都立の農業高校に進学したという。

「おとなしい感じで、まじめなタイプでしたよ。いつもひとりで行動していて何を考えているのかわからなかった。彼は畜産科だったので、放課後も動物の世話をしたりしていました。女性にモテるようなタイプではなかった」

 証言するのは高校時代の男性同級生だ。

 子ども時代を知る実家近くの男性住民は、「昔と全然違いますね」と、逮捕時の画像を見て大きくのけぞり、こう続けた。

「いつもニコニコしながら“行ってきます”ってあいさつもしてくれたんだけど……。最近は、ほとんど実家にも戻っていないみたい。(盆や正月にも)まったく見ない」

神山容疑者の父親に取材

 自宅を訪ねてみると、70代と思われる父親が玄関の扉を少し開け、取材に答えた。

「今……お話しすることはできません。妻が倒れてしまって……。息子が起こした事件が相当ショックだったので、精神的におかしくなっています。自宅で療養しています」

 神山容疑者の結婚願望については、

「……あったと思いますよ」

 と父親は小声でぼそぼそと応対。そう言い終わると、扉を閉め、カギをかけた。

 前出の知人男性が「障害者の施設でボランティアをしたこととかはまったくない。興味があると聞いたことがない」と証言するように、結婚願望をこじらせる神山容疑者は、性のはけ口として知的障害者をターゲットにしたのか。

「恋愛感情があった、同意があった、と言う加害者は多いですが、そうは思えません。恋愛感情があれば相手を尊重します。性暴力は相手を尊重しない。性的に相手を支配し欲求を満たしているんです」

 と前出・中野氏は憤る。

 さらに被害者に障害があることが想定されていない司法制度の現状も問題視する。

「今回は事件が明らかになりましたが、障害によっては被害を認識することが難しい場合がある。特に知的障害や精神障害、発達障害がある人の場合、(被害を訴えても)信じてもらえない、と諦めることもあります。裁判でも、被害者の証言の信憑性に疑問が呈され、加害者が無罪になるケースが少なくありません」

 不足するのは法整備だけではない。前出・中野氏。

「性暴力を受けた障害者が相談できる窓口がほとんどないのも問題です。相談ができなければ被害の回復や被害者の支援もできませんからね」

 それらをひとつひとつ整えるのも社会全体の課題だ。