欧州宇宙機関、宇宙船の自動運転技術を開発 小惑星探査ミッションに使用へ
欧州宇宙機関(ESA)は、宇宙船の先進的な自動運転技術を開発している。この技術は、小惑星探査ミッション「ヘラ」で最初に使われる予定だ。その開発手法は自動車の自動運転技術と同様の発想に基づいている。
【こちらも】欧州宇宙機関、太陽の3000兆倍の質量を持つ巨大銀河団の写真を公開
■小惑星の軌道を変える実験
もし小惑星が地球に衝突すれば、落下した場所によっては相当な被害を引き起こす可能性がある。地球に向かって来る小惑星の回避方法を確立するため、NASAとESAは連携して「小さな」小惑星の軌道を変えるプロジェクトを推進している。この試みは、小惑星ディディモスとその周りを周る小さな衛星ディディムーンを目標としている。計画では、2022年にNASAの二重小惑星方向転換テスト(DART)でディディムーンに宇宙船を衝突させ、2026年にヘラがディディムーンの質量とクレーター形状を詳しく観測する予定となっている。
■宇宙船の自動運転技術
ヘラの探査ミッションは地上から手動で完全に制御するように設計されている。中核となる目標が達成され、より高いリスクを冒す余裕が出来れば、新しい自動運転技術がテストされることになる。ヘラの最も重要な入力装置は小惑星観測用カメラだ。このカメラはスタートラッカー※、レーザー高度計、熱型赤外線カメラ、および加速度計を含む慣性センサーからの入力を組み合わせて観測データを生成する。(※スタートラッカー:探査機が恒星配置を見て自分の姿勢(向き)を知るための装置)
カメラからのデータ解析の結果として得られる自律性により、ヘラはディディムーンの表面から200メートルの距離で安全に航行できるようになる。特に、1ピクセルあたり2cmまでの高解像度の観測画像を取得可能とする。
自動運転技術は、ESAが計画している人工衛星の改修や宇宙ゴミの除去を目的とした宇宙サービス、火星サンプル回収ミッションなど、他の多くの任務にも幅広く使用される。一度実用性が検証されれば、この技術は惑星探査機を低コストで深宇宙へと進ませる有効な手段の一つとなるだろう。