6月8日付のスポーツ新聞各紙は1面や最終面などで2人が未成年と飲酒していた問題を大きく報じました(東洋経済オンライン編集部撮影)

TOKIOと山口達也さんの騒動から1カ月あまり。再びジャニーズ事務所のアイドルが渦中の人となっています。

しかも、今回も飲酒絡みであり、相手は未成年の19歳女性。事態を重く見たジャニーズ事務所は、素早く当事者のNEWS小山慶一郎さんを活動自粛、加藤シゲアキさんを厳重注意に処したことを発表しました。

さらに、6月7日夕方の生放送番組「news every.」(日本テレビ系)で小山さんが、同8日朝の生放送番組「ビビット」(TBS系)で加藤さんが、相次いで謝罪。前回の教訓を生かしたかのようなスピーディな対応で、ダメージコントロールを図っている様子がうかがえます。

しかし、この対応には、いくつかの疑問点がありました。本人、番組、事務所の対応から、世間の感覚との温度差を感じてしまったのです。

小山の反省と藤井キャスターの激励

まず小山さんは、活動自粛の報道からわずか1時間足らずで「news every.」に藤井貴彦キャスターと並んで登場しました。

小山さんは、「飲食の場に19歳の女性が参加していたことがわかりました。私はその女性から『20歳』と聞いていたため、未成年者であると知りませんでした。しかし、結果として未成年者がいる飲み会に参加し、飲むことをあおるような声を掛けてしまいました」と謝罪。

さらに、「こうした振る舞いは、報道番組として、さまざまなニュースをお伝えし、時には厳しい意見も述べてきた『news every.』のキャスターとして不適切であることは言うまでもありません。当面、出演をお休みさせていただき、その期間、活動も自粛し、今回のことを反省し、自分をしっかりと見つめ直す時間にしていきたいと考えております」と反省の意を表しました。

一方、藤井キャスターは、「今回の件で本人はこれからいくつもの後悔を抱えながら反省の日々を過ごすことになると思います。同じ番組で仕事する仲間ですから、背中を押すような言葉をかけてあげたい気持ちもありました」と情を見せつつも、「しかし、このように『テレビで皆様からのご批判を正面から受け止め、反省することが今最も大切だ』と理解している本人には、『無意味な優しさなどはかえって不要なものだ』と感じています」と厳しい姿勢で接していくことを示唆。

最後は「隣にいるのに今言うことではないと思いますけど、しっかりと反省をして、自分を見つめ直してほしいと思います。そして、その先に見違えるほどの変化や成長を見せてもらいたい。それが私と私たちの切なる願いです」と激励でコメントを締めくくりました。

まるで「復帰ありきの休養会見」

気になるのは、小山さんの「当面、出演をお休みさせていただき」、藤井キャスターの「しっかりと反省をして自分を見つめ直した先に、見違えるほどの変化や成長を見せてもらいたい」というフレーズ。

「あれ? これは謝罪の場ではなく、叱咤激励の場だったの? それどころか、ただの休養会見?」と感じてしまったのです。形としては謝罪しているものの、両者とも“復帰ありき”のコメントであり、違和感を覚えた視聴者は少なくなかったでしょう。私は2人の姿を見て、リカレント(就労と教育を繰り返す生涯教育)を思い出してしまいました。

本人としては「しっかり謝罪して復帰したい」、番組としても「しっかり謝罪させて復帰させたい」。また、「今回の件を糧に、本人と番組を成長させたい。私たちの結束と復活を見せたい」という気持ちも伝わってきましたが、小山さんが出演しているのは報道番組。「誰が伝えるか」という信頼性の担保が重要な番組だけに、違和感は拭えません。

各メディアの記事に紐づくコメントを見ても、SNSの書き込みを見ても、小山さんのファン以外は、「謝罪はしなくていいから、もうニュースは読まないほうがいい」「えっ?まさか戻るつもりでいるの?」「もともとアイドルがキャスターやることに無理がある」という声が大半を占めているのです。

一部で休日出勤して生出演した藤井キャスターを称える声もありますが、これは企業で言えば社長にあたる番組の顔である以上、ごく一般的な対応。しかし、謝罪や反省よりも温情や激励が上回るそのコメントは、クライシス・コミュニケーション(危機管理広報)としては、うかつなところがあったのです。

次に加藤さんは『ビビット』で、「私事で申し訳ございません。この度、私が訪れた飲食の場で同席していた『20歳』とお聞きしていた女性が、実際には当時19歳であることがわかりました。そして、飲み物をあおるような掛け声を止めることができなかったこと、深く反省しております」と反省。

さらに、「この『ビビット』でさまざまな物事に関してコメントしてきたことを思うと、情けない気持ちでいっぱいです。情報番組に関わる者として自覚が足りなかったと思います」と謝罪しました。

その後、国分太一さんの問いかけに答える形で、「19歳であることはネットで知りました。会話の中で『20歳』と話しているのは聞きました」「その場の空気を悪くすることができなかった。強く言えなかったということです。今思えば、たとえその場の空気が壊れても、僕が嫌われることとなっても、必死で止めるべきだったと反省しています」と語りました。

小山さん以上に反省の意は伝わってきましたし、今後に関することなどの利己的なフレーズもなし。しかし、「止めることができなかった」というフレーズに、視聴者との温度差が表れていたのです。

「いや、反省するのはそこじゃないでしょ?!」と……。

アイドルが20歳の子と飲み会していいの?

「若い世代に夢を見せるアイドルなのに、20歳の子と飲み会していいの?」「もう30代の大人なのに、一気なんかしてるの?」「報道・情報番組に出演しているのに、ずっとそういう場に参加していたの?」「ここ数年、先輩たちの騒動が続いているのに、気をつけようと思わなかったの?」

多くの視聴者は、成人間近の19歳がお酒を飲んだことについて、とやかく言おうとは思っていないでしょう。それより気になるのは、彼らの交友関係と出入りする場所、人を見る目のなさと自分に都合のいい解釈、自覚と危機回避の希薄さ……。視聴者は、『ビビット』で真矢みきさんがコメントしたように、「飲酒した、しない以前の問題」を語ってほしかったのです。

ただ、「視聴者が語ってほしかった」という点では、小山さんに対する不満のほうが大きいでしょう。小山さんには、昨年も旅館で派手な宴会をしたときの音声流出騒動があり、そのことに関してコメントをしていなかったのです。

「そもそもどういう知り合いなの?」「何が目的の飲み会なの?」「飲み会だけでその先はなかったの?」「旅館のとき、未成年はいなかったの?」「他に未成年女性の知り合いはいるの?」

2度の音声流出騒動に見舞われた小山さんは、すでに「これらを説明しなければ、信頼を取り戻せない」という苦境に陥っています。どんなに反省して変わった姿を見せても、過去の疑念を晴らしておかなければ、本当の信頼は得られません。だからこそ、クライシス・コミュニケーションでは、できる限りのことを開示して、膿を出し切っておくことが大切なのです。

タレントキャスター化を進める日テレの落とし穴

少し目線を変えると、「news every.」を放送している日本テレビは、この1カ月あまりで大きなダメージを受けました。

山口達也さんの騒動による「ZIP!」と「ザ!鉄腕!DASH!!」へのダメージ。さらに今回の騒動では、「news every.」に加え、NEWSの楽曲「BLUE」をテーマソングとして起用したサッカーワールドカップロシア大会の日本テレビ系中継、7月スタートの加藤シゲアキさん主演ドラマ「ゼロ 一獲千金ゲーム」もダメージをくらってしまったのです。

しかし、これは裏を返せば、「さまざまなジャンルの番組にジャニーズ事務所のアイドルを起用したからであり、そのリスクを承知で勝負していた」ということ。特に日本テレビはアイドルに限らず、朝の「スッキリ」から夜の「NEWS ZERO」まで、報道・情報番組におけるタレントのキャスター起用が多いだけに、起きるべくして起きたことと言えます。

そもそもキャスターはニュースの専門家であり、信頼性や説得力のために「他ジャンルの番組には出ない」のが普通の職種。海外の人々から見たら、日本テレビの成功を受けてタレントのキャスター起用が相次ぐ日本は異様な現象でもあり、安易な視聴率対策やショーアップ化は、そろそろ見直すべき時期に来ているのかもしれません。

現在、多くの視聴者が報道・情報番組に求めているのは、安心・安全と信頼性。テレビや新聞などの既存メディアに不信感が芽生え、ネットに玉石混交の情報が飛び交う中、報道・情報番組のキャスターには、安心・安全と信頼性を体現する人物がフィットするもの。しかし、そこにはまる人物を見つけられないのが、民放各局の課題となっています。

もう1つ挙げておきたいのは、ジャニーズ事務所の対応。今回のスピーディな対応とマスコミ向けの文書は、山口達也さんの騒動時と比べると進歩を感じさせました。

しかし、初動対応としては、おおむね問題ないものの、ディテールには疑問符をつけたくなってしまったのも事実。ジャニーズ事務所も前述した視聴者が知りたい核心に触れず、NEWSの過去もスルーしました。特に「未成年飲酒騒動がきっかけで2人のメンバーが抜けた」という過去は、今回の騒動とは切り離せない過去であり、なかったことにしてはいけないはずです。

それ以外にも3人のメンバーが脱退して当初の9人から4人に減ったこと、残ったメンバーも女性スキャンダルが続いていたことなど、マネジメントがうまくいっていないことは明らか。しかし、グループのマネジメントを手掛けるジャニーズ事務所が、その失敗を認めることはありません。

近年、ジャニーズ事務所の騒動を立て続けに見てきた人々は、「それらが個人の問題ではなく組織的な体質によるもの」と感じるようになりました。「組織的な体質改善が必要」「それができなければブランドイメージは低下する一方」という意味では、どこか日大の構図と似ています。ジャニーズ事務所は、所属タレント以上に、組織自体のダメージコントロールを考えたほうがいいのではないでしょうか。

「未成年が嘘をつく」リスクは芸能人の共通認識

昨年から今年にかけて、狩野英孝さん、小出恵介さん、山口達也さんに、未成年女性との淫行や強制わいせつ騒動がありました。今回の小山さんと加藤さんは飲酒のみではありますが、私たちが考える以上に芸能人たちと未成年の接点は多いようです。

しかし、私が知る限り、テレビ出演の多い芸能人たちは、「未成年が年齢を偽って飲みの席に来ることは、珍しいことではない」「だから気をつけなければいけない」というのが共通認識。未成年をターゲットに入れたアイドルなら、なおのことであり、関係者からも注意を受けているでしょう。

それでもリスクを排除できないのは、芸能人になったときの「目立ちたい」「モテたい」という気持ちなのか。それとも、日ごろの仕事やプレッシャーによるストレスなのか。いずれにしても、人気商売に従事するプロフェッショナルらしからぬ脇の甘さを感じざるを得ません。

今ごろ、芸能事務所の内部で「ウチは気をつけろ」という声が間違いなく飛び交っているでしょう。それでも他山の石とはならないところに芸能界の難しさがありますが、それは一般企業も似たところがあるのではないでしょうか。

今回の騒動は、単なる未成年の飲酒だけでなく、マネジメントサイドの問題点を考えさせるものであり、みなさんも「ウチの会社は性善説で任せてしまっていいのか?」と考えるきっかけになる気がしています。