クールビズがダサく見えない着こなしはどうすればよいのでしょうか(写真:iStock/tdub303)

「夏のダサいクールビズは“崩さない”を守れば間違いなくおしゃれになる」と断言するメンズファッションバイヤーのMB氏。メルマガやブログが人気で、初のスーツ指南書となる『世界一簡単なスーツ選びの法則』を著したMB氏が絶対にダサくならないクールビズの着こなしを解説する。

クールビズのコツは、できるだけ崩さない

近年、夏、特に真夏になると、「クールビズ」と称し、ビジネスマンのスーツ姿を見かける機会がグッと少なくなりました。ノーネクタイだけでなく、ノージャケットの人も増えました。

オフィスの電気代を節約しましょう。見た目にも体感的にも暑苦しいので、無理してジャケットを着なくてもいいです。ネクタイをはずしましょう。そんなふうに始まったクールビズですが、逆にノーネクタイ、ノージャケットのスタイルが世のビジネスマンの悩みの種になってしまったと思います。

スーツをきれいに着こなせる男性の少ない日本ですが、とはいえ、スーツそのものについて何を着ればいいかがわからない人はまずいません。

スーツに必要なのは、ジャケットにスラックス、シャツにネクタイ、ベルトに革靴ということは誰もが知っています。ところが、いきなり「クールビズで夏場は軽装にしましょう!」と言われてとまどう人がすごく多いのです。

とりあえずジャケットを脱いでおけばいいのかな? 本当にネクタイをはずすだけでいいの? こんな居酒屋でリラックスしているような姿と同じでいいの? 結婚式の二次会帰りに見えたりしない?

私は、クールビズが日本人を一気にダサくしたと思っています。

クールビズはファッション的には「完成形であるスーツを崩す愚行」です。腰位置を絶妙に隠して足を長くスタイリッシュに見せてくれる「ネクタイ」を外し、腰位置を丸わかりにしてしまうように「ジャケット」を脱がせ、顔回りを小さく・格式高く見せてくれる「襟」をやめさせて寝た襟の「ポロシャツ」を着させる……。

「画竜点睛を欠く」という言葉がありますが、これは物事を完成させるための、最後の仕上げを忘れること。また、物事のもっとも肝心なところが抜けていること。完成形を少しずつ崩してなんとも中途半端なスタイルにしているのがクールビズです。崩してはいけないというグランドルールがあるにもかかわらず、あっさり崩しているのですから、かっこ悪くなるのも当然です。

とすれば、クールビズの対策はたった一つです。あくまでも仕事の場での「カジュアル化」ですから、崩しすぎるとだらしなく見えるだけ。崩せば崩すほど完成形から離れていき、野暮ったくなります。

「スーツという完成形からできるだけ崩さない」というのが、ロジックとしてのクールビズの正解。ビジネスマンの皆さんには、夏場のクールビズの際には、できるだけスーツの法則に近い形にしてもらいたいのです。

なぜか多くの人は、「クールビズだから、なるべくカジュアルに」「ネクタイがないぶんシャツに何かデザインがあったほうが……」と考えますが、それだとますます完成形から遠ざかることとなり、スーツの魅力をどんどん削ぐことにつながります。やるべきは逆です。

クールビズだからこそ、なるべくシンプルなもの、なるべくフォーマルなアイテム選びをすることで「崩しすぎない」ように心がけるべきなのです。

・シャツは白くツヤがありシンプルで細身のものを。

・スラックスはシワ感のないきれいなスラリとした細身のものを(裾の長さと幅が重要なのは言うまでもありません)。

・スラックスや革靴はなるべく礼服に近いダークトーンのものを。


「ドレス」を崩さないことが最大のコツ。ジャストサイズの白シャツ(長袖)と細めの黒のスラックスというシンプルなスタイルが正解(写真:岡戸雅樹)

要はスーツをシンプルに着こなしていれば、クールビズだからと何かを変えたり加えたりする必要はありません。一番やってはいけないのが、クールビズだからと言って、急にシャツなどに色や柄、無駄な要素を入れること。

こうした不安を払しょくするためにも、ここでは基本のクールビズスタイルを紹介していきたいと思います。

襟と袖をキメるクレリックシャツ

「なるべくスーツの完成形に近づける」のですから、ワイシャツは白シャツがベストなのは間違いありません。

しかし、シャツ1枚になるクールビズで、毎日、白シャツ(もしくは、それに限りなく近いもの)というのも面白みがないと感じるのもわかります。それになんとなく寂しいと不安になる気持ちも理解できます。

そこでしっかりおしゃれに見えて、かつドレスを崩さないもので、おすすめしたいのが、クレリックシャツです。襟と袖の部分が白いシャツで(白ではないものもあります)、牧師などが着用していた服に似ていることから、クレリック(聖職者)という名前がついています。

色が違う部分が「襟と袖」ということで、人の視線がとまる二箇所が切り替えられているということが最大のポイントです。襟(首元)は目につくところなので、ネクタイをはずすとVゾーンがとたんに寂しく見えます。だからといって、襟に派手な柄を入れると子供っぽくなりダサくなる。袖口も考え方は同じです。シャツとしての本筋を崩してしまいます。


おすすめのクレリックシャツ(写真:岡戸雅樹)

クレリックのように襟(と袖口)にシンプルな切り替えがあることで、ネクタイがなくてもカバーすることができます。

全体的に寂しい印象を与えることなく、ノーネクタイでもさわやかで誠実な印象を与えることができます。

クールビズに対応するなら、クレリックシャツは数枚持っているといいでしょう。もちろん、通年でも使えます。色はやはり薄いブルーや薄いピンクがおすすめで、ストライプも細いものを選ぶことで完成形を崩しすぎないスタイルにできます。


おすすめのホリゾンタルシャツ(写真:岡戸雅樹)

もう一つのおすすめは、ホリゾンタルカラー(襟)のシャツです。 一般的なワイシャツとホリゾンタルカラーシャツの違いは、襟の開いている角度です。

襟の形はおもに角度でわけられます。定番の形のレギュラーカラー、襟の開きが90度前後のセミワイドカラー、襟が100度から120度開いたワイドカラー、そして、襟の開きがほぼ水平、または180度以上ある、ホリゾンタルカラー(カッタウェイ)、 その他に、カジュアル派に人気のボタンダウン、襟先に丸みがあるラウンドカラー、襟先が前に折れていて蝶ネクタイなどに合わせるウイングカラーなどがあります。

「スーツ+ネクタイ」の場合は、レギュラーカラーの白シャツが定番ですが、ネクタイをはずし、かつ一番上のボタンを開けると、襟がクシャクシャっと遊んでしまうという難点があります。些細なことだと思うかもしれませんが、これだけで全体の印象はずいぶんとだらしないものになってしまいます。

ホリゾンタルカラーなら襟のサイズも小さく、しっかりと自立しているのでネクタイをはずしても襟が遊ばず、ボタンを開けても様になるのが特徴です。

これだけで、クールビズの印象も大きく変わります。ちなみにですが、会社でノーネクタイが推奨されていても、私はネクタイをするべきだと思います。


無地やシンプルな柄が多いので、お好みの色や柄を選べば問題ないクールビズ用に数本持っておけば、毎日の服選びを楽しめる。(写真:岡戸雅樹)

白シャツ1枚になったときでも、ネクタイを着用していれば体の中心にラインが生まれ、引き締め効果となって体型をきれいに見せてくれます。ですが、ノーネクタイになると、その効果もなくなり、だらしなく見えてしまいます。

もしも、自分だけネクタイをするとちょっと浮いてしまうんじゃないか……と不安に思うのでしたら、ニット素材のものを選んでみてはどうでしょう。

ツヤツヤに輝くシルクタイではなくニットタイを選ぶことで、「クールビズ」に見えるはずです。

ニットタイでホリゾンタルカラーのシャツにすると、少しクラシカルさが出るので、周りの着こなしとは差がつきおすすめです。

ポロシャツは台襟があるものを!

真夏になるとポロシャツをクールビズとして着ているビジネスマンも増えてきました。特に暑い日など、長袖シャツでだらだら汗をかいたり、汗でシャツが肌にはりついていたりするよりかは見た目にもさわやかで涼しげなので、「ポロシャツ推奨」の企業や職場も近年多くなっています。

そもそも、白いドレスシャツとスラックスをそのまま着るのは本来、バランス的にあまり美しくはありません。それは、ジャケットを脱ぐことで腰位置(ベルト部分)があきらかにわかってしまい、「胴長短足」に見えてしまうから。

その点から考えると、着丈部分で腰位置を隠せるポロシャツは全体のシルエットをスラッと見せるためには使い勝手がいいアイテムだと言えます。


各メーカーが「クールビズ用」と打ち出しているポロシャツはちゃんと襟が上がっている。まずは無地の黒を選んでおけば問題ない(写真:岡戸雅樹)

しかし、ここで忘れてはならないのが、ポロシャツといえど、あくまでドレスシャツの代わりだということです。

「真夏はポロシャツでもいいですよ」といわれ、特に何も考えず「スポーツタイプ」のポロシャツを着ている人がいますが、これは絶対にやってはいけない選択です。

スポーツタイプのポロシャツは、スポーツをするときに着用していたシャツの簡易版として発展したもので、暑苦しくなく、動きやすく、汗がたまらないように、首回りがシンプルに仕立てられています。

つまり、シャツに見られる台襟(襟の部分を支えて高さを出す部分)がなく、首回りに直接襟がくっついているものが一般的です。

台襟がないと襟に高さがなく、シャツの象徴的存在である襟が目立たず首元に一体化します。どちらかというとTシャツのような首回りのデザインとなります。

一方で台襟があるポロシャツは、襟に高さが生まれ、顔の近くまで襟が届き目立つようになります。どちらかというとシャツに近いデザインになります。

スーツの場合、襟の高さがないとバランスが崩れてしまいます。礼服であるほど襟は高くなるし、ネクタイを締めて高さを強調します。ここに高さがないとかっこよく見えないわけです。

クールビズをダサく見せないポイント

クールビズは「いかに完成形であるスーツから離れないか」がダサく見せないポイント。同じポロシャツでも台襟のあるものを選ぶことで「よりシャツに近いイメージ」でドレスライクな印象を作ることができるのです。


ちなみにユニクロでは、台襟があるポロシャツを毎シーズン扱っています。品名に「シャツカラー」と入っているのがそれです。

襟だけで印象が変わるのか? 

と思うかもしれませんが、ぜひ一般的な台襟なしのポロシャツと、台襟のあるポロシャツを試着してみてください。シャツカラーのほうが大人っぽくスーツライクな表情になることに気づくでしょう。仕事で着用するなら、台襟のあるポロシャツを選ぶことをルールと決めてください。