同窓会で不倫するなんて、都市伝説だと思っていた」(写真:Yue_/iStock)

筆者は、「不倫している女性」のインタビューを5年ほど続けている。彼女たちを観察していて気が付くことは、自分より低スペック(学歴や年収など)な夫を持つ妻は、不倫する傾向があることだ。

同窓会で不倫するなんて、都市伝説だと思っていた」と、寺田真知子さん(仮名・39歳)は疲れをにじませた表情をしながらも、頬をかすかに赤く染めた。

夏ツイード素材の半そでワンピースから剥き出しになっている白い二の腕は、質感がなめらかで太く、エロティックだ。真知子さんは身長155センチのぽっちゃり体型で、胴回りも太くバストも大きい。「出産後、60キロ以上になっちゃったんですけれど……」と恥ずかしそうに笑う表情がかわいらしい。


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彼女は東大卒の父親と、専業主婦の母親の一人娘として父親の赴任先のアメリカで生まれる。1歳のときに日本に帰国し、東京郊外の住宅地に定住する。地元の幼稚園に通い、小学校時代を過ごすも、中学校から両親の望む学校に進学するべく猛勉強をし、名門女子中高一貫校に進学する。その後は名門私立大学に進み、大学卒業後は東京都内の教育関連団体で働いている。

同窓会がすべての始まり

30歳で結婚し、すぐに男の子が生まれた。夫は大学時代の友人の紹介で出会った世界的メーカーに勤務するエンジニア。2年の交際後に籍を入れた。人柄も穏やかで収入も安定していることが決め手で、不満はあるものの、穏やかな結婚生活が続いていた。しかし、去年、真知子さんは小学校の同窓会に出席し、夫とは別の男性と初めて恋愛をする。

「中学受験をしたので、地元の友達とは疎遠だったのですが、実家に案内のハガキが来ていたので行ってみようと思ったことが、すべての始まりです」

夫も「ゆっくり遊んできな」と9歳になる息子とともに送り出してくれたという。当日の服装は、2年前に購入したユニクロのVネックのドレープブラウスにベージュのガウチョパンツを合わせた。セミロングの髪は軽く巻いてからアップして、フランス産のかごバッグを持ったという。“初夏のお嬢さん”ファッションは、目がクリっと大きく、どこか清楚な感じがある真知子さんに似合うだろう。

「会場は、地元で法事や食事会に使われる料理店の2階の宴会場を貸し切って行われました。学年全体での会だったのですが、約200人中約100人が出席していて、先生たちもたくさん来ていました」

記憶からこぼれおちていた、12歳当時の思い出は、あっという間によみがえる。そして、当時のスクールカーストが瞬時に再現されたという。

「ボスキャラだった女の子は、オバサンになった今でもハキハキしていてかわいく、元女の子達をあっという間に子分にしていました。あとは、勉強ができない子同士が結婚して地元で居酒屋を経営し、そこそこ成功させていたり、いじめっ子だった男の子が内装会社を立ち上げて、都内のマンションのクロス張替えを一気に引き受けているなど、“あ〜あるある”という感じ」

驚いたのは、地元に残っている同級生の多さだった。

「私は久しぶりで浦島太郎状態なのに、周囲の女子たちは、子どもの話をしたり、旦那さんの愚痴を言って盛り上がっていたんです。きっと地元を出ずに過ごしてきたんだな……と」

真知子さんに声をかけてきたある男性

疎外感を覚える真知子さんに声をかけてきたのが、ある同級生の男性だった。ポロシャツにチノパンという軽装で、全体的に清潔感があったという。余談だが、筆者がインタビューした多くの不倫している女性が好む男性のファッションが、襟付のシンプルなトップスにチノパンというスタイリングだ。

「彼は地元の進学高校に進み、現役で日本大学に進学。10年間、住宅メーカーで働いた後、実家の事業を継いだと言っていました。私は同級生の誰とも話がかみ合わず、出席したことを後悔していた矢先に、彼が話しかけてくれたことがうれしかった。驚いたことに、それをきっかけに、多くの男子が私のところに群がり始めたのです」

真知子さんは、小学生のときに学校一の美少女として有名だったという。当時は体型もほっそりしており、色白で黒髪で物静か。憧れの存在として、男子からの人気はナンバーワンだったという。

「今では太って、若手から“白ブタ”と陰で言われているオバサンなのに、同級生の男達は少女のときの印象を忘れないのでしょうか。39歳になった今でも“高嶺の花の美少女”という感じで接してくれて気持ちよかったですね。久しぶりに旧姓で呼ばれるのも快感でした。そんな男子達を、牽制している彼の姿に、恋心が芽生えました。すっかりお姫様気分になり、2次会、3次会のカラオケまで参加し、気が付けば彼と一緒にラブホテルの一室にいました」

酔いから意識が回復したのは、コトが起こっている最中だった。性的な感情がまったくない時期に出会った男性と、あられもない格好で行為に及んでいる背徳感が快感だったという。

「後で振り返ると、どうも彼は最初からそのつもりで参加していたみたいで、途中からウーロン茶に切り替えていました。私も3次会で彼の隣に座ってから、肌がカッと熱くなり、触れてほしくてたまらなくなり、それを紛らわすかのようにお酒を飲んでしまったことを覚えています」

婚活サービスで知られる「パートナーエージェント」が2017年に25〜39歳の男女220人に対して「同窓会での出会い」についてのアンケート調査を行った。同窓会に参加する際に、同級生との恋愛を期待するかどうかという質問に対し、「とても期待する」「なんとなく期待する」と回答した人は、男性が63.6%、女性が41.8%だったという。男性のほうが、同窓会に何らかの下心を抱いてきている人が多いのだ。

夫に対する罪悪感は…

真知子さんに夫に対する罪悪感を聞くと「ない」と即答。

「不満はあったのですが、気付かないふりをしていたんです。子育てで忙しいときに、私にすべてを丸投げして、ドイツ、アメリカ、フランスと海外出張に行きまくっていましたからね。あのときの恨みは忘れません。それに、夫はケチだから、生活費として毎月15万円しかくれなかった。住宅ローンの返済、子どもの塾代、家族の食費、光熱費ですべてが吹き飛んでしまう」

不倫相手とデートを重ねる真知子さんが許せないと感じたのは、夫の節約体質だ。

「バイキングでガツガツ食べたり、飲み放題とわかったとたんに高級な酒からオーダー。それに、家族旅行のときも缶ビールやお茶を持参するんですよ。旅館やホテルで食事をしても、食事中には注文せず、お冷(水)で済ませ、部屋に帰って持ってきたビールを飲むんです。そんな生活を続けてきたので、スマートでおしゃれな彼とのデートは楽しかったですよ」

デートは、東京が地元の2人とは関係ない、横浜と大宮で行ったという。彼から平日の夜に呼び出されたらすぐに応じていた。デート時間は19時に待ち合わせて、食事をして、23時に帰宅するというパターンが多かった。その間、息子はどうしていたのだろうか。

「1人でお留守番させていました。もう9歳だから、夕飯さえ作っておけば、なんとかなります。最初の頃はデート中も心配で、家の電話に連絡していましたが、夢中で『マインクラフト』(ゲーム)をしている息子は“大丈夫だから連絡しないで”と言ってきたんです」

働く母の子どもは孤独に強く、自立も早い。筆者が不倫女性を取材した中では、小学校1年生(6歳)の子どもを1人で留守番させていた母親がいた。

真知子さんが不倫相手とデートをした回数は、今までに4回。最初のデートはレストランで食事を一緒に楽しんだが、2回目以降は居酒屋でサッと食べてすぐにホテルに行ったという。

「私の気持ちは熱くなるのですが、相手の気持ちは冷めていくのが伝わってきました。4回目のデートのときに知ったのですが、彼の奥さんは12歳年下だったんです。それを知った直後、“私は奥さん以下なんだ”と思ってしまったんですよね。年齢の劣等感でちょっと恋心も冷めたというか……」

妊娠が発覚

その直後、真知子さんは妊娠していることに気が付く。彼女は不倫と並行しつつ、夫とも週に1回程度夫婦の営みを持っていた。

「夫は性欲が比較的強く、出産直後に“風俗に行ってよ”と言ったら、“奥さんとヤッていればタダだから”と言われたんです。ずっと膣外射精をしていて、今まで妊娠しなかったのに、このタイミングで妊娠するのが不思議なんです。彼とも同じ避妊方法でした。時期的に考えると、おそらく夫なのですが、そうとも言い切れない部分があります」

妊娠が発覚したことをきっかけに、真知子さんは彼と距離を置く。

「2人目が欲しいと思いながらも、なかなかできなかったので、できれば産みたい。どちらの子どもかどうかなんて、生まれてみないとわからないし、どうせ産んだところで、私がワンオペ育児をすることは決まっています。夫には安定期に入ってから伝えようと思っています。きっと彼はケチだから、3万円近くするDNA検査などしないでしょうから」