本田圭佑、ファンを含めた日本サッカー全関係者に告ぐ 「理想求めてナンボ」の哲学
マリ戦の結果を受けて持論を展開 「議論のポイントも全体的にレベルが低い」
日本サッカー界の発展を希求する男の口調が熱を帯びた。
日本代表FW本田圭佑(パチューカ)は「余計なことに囚われすぎていて、議論のレベルが低い」と代表チームを取り巻く現状について力説。ファンも含めた日本サッカー界の全関係者に対して、「理想求めてナンボ」と訴えかけている。
ベルギー遠征中の日本代表は、23日の国際親善試合マリ戦で苦戦を強いられた。6月のロシア・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第2戦で対戦するセネガルを想定した一戦に臨み、前半44分にDF宇賀神友弥(浦和レッズ)がPKを与えて先制点を献上。終盤まで決定打を欠いた日本だが、後半途中出場のFW中島翔哉(ポルティモネンセ)が後半アディショナルタイムに代表デビュー弾を叩き込み、1-1のドローに持ち込んだ。
試合後には、選手たちから攻守において早期改善を求める声が上がり、チーム外部でも改善点を指摘する様々な意見が渦巻いている。本田はそうした状況を踏まえつつ、「とにかく僕は、次のウクライナ戦(27日)はチームとして結果にこだわる雰囲気を作っていきたい。余計なことに囚われすぎていて、議論のポイントも全体的にレベルが低いような話が多すぎる」と指摘した。
本田が言う「議論のレベルが低い話」をしている対象は誰なのか――。その答えは「全員でしょうね」だ。本田はその意味を、次のように説明している。
「絶対勝つって言い切って4年前は挑戦してた」
「関係者であれば全員。そこには情報戦があって、フィロソフィー(哲学)っていうのはその情報のなかで築かれていくと僕は思っている。会話ひとつのレベルを取っても、選手同士、選手とスタッフ、メディア、サポーター同士もその基準を上げていかないといけない」
本田は日本サッカー全関係者に対して訴えかけた。さらに“会話レベルの基準”について「本当に低くなったのというのは、4年前から見ると思いますよね」と続けている。「善戦すれば合格になってきているけど、(当時は)そんなのではなかった」という。
「オランダだろうがベルギーだろうが、絶対勝つって言い切って4年前は挑戦してた。その土台はなくなった」
イタリア人のアルベルト・ザッケローニ監督の下、2013年11月に欧州遠征を行った日本代表はオランダ戦で2-2ドロー、ベルギー戦で3-2と勝利を収めている。本田は強豪との2連戦を引き合いに出しつつ、“絶対勝つ”の気概で挑んでいた当時を回想した一方、現在は代表チームの変化を感じているようだ。「土台はなくなった」という本田の一言は、代表チームから失われてしまったものに対する郷愁をどこか帯びていた。
「もう一度背伸びしていいんですよ」
もっとも、ただ過去を懐かしんでいるだけではない。本田は「もう一度背伸びしていいんですよ」と力を込め、「理想がなかったらサッカーをやるべきじゃないと思っている」と言い切る。さらにサッカー界の全関係者に向けて、こう告げた。
「理想を求めてナンボ」
サッカー選手の枠にとどまらず、クラブ運営にも関与するなどビジネスマンとしての才覚も発揮している本田。ピッチ内外で理想を追求し続けている男は、「選手だけじゃなくて、日本サッカー関係者、ファン全員で、こういう理想を追い求めようというのを築いていかなければいけない」と主張している。
マリ戦の結果と内容を受けて、重苦しい雰囲気が代表チームを覆い始めているなか、本田はそんな閉塞感を打破するように持論を展開した。
(大木 勇(Football ZONE web編集部) / Isamu Oki)