小池百合子都知事

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東京都の小池知事が新たな取り組みを提唱しました。3年後に迫った東京五輪・パラリンピックの機運を盛り上げるため、職員全員でラジオ体操をするというのです。

内容としては、毎日午後2時55分になったら、どこにいても体操を始めるというフラッシュモブのようなものを想定しているとのこと。つまりは、打ち合わせ先であろうが、窓口での都民への応対中であろうが、時間になったら一斉にラジオ体操を始めるということです。

この取り組みは五輪開会式の3年前にあたる今月24日から、パラリンピックの閉会式にあたる9月6日までの期間に毎年行なっていく計画で、都内の企業や自治体にも参加を呼び掛けていくとのこと。すでにPR動画なども完成し、初日の24日には都庁でキックオフイベントもやる予定なのだとか。

この件自体は、国が頑張って推し進めているプレミアムフライデーと同様に、「お役所が始めた失敗しそうな思いつき企画」というものでしかありません。実際問題、業務中に都職員がラジオ体操を始めるとは思えず、初日は頑張って体裁を整えたとしても、3年先まで継続するのは困難でしょう。

しかし、このラジオ体操を選んだ理由というのはいけません。小池都知事は「みなさんがご存じで日本人のDNAに刻み込まれている体操」と人気・知名度を選定の理由にあげましたが、ここには小池都知事の過去をないがしろにし、思い付きでことを進める政治姿勢というのが透けて見えます。

実は東京都では2016年五輪招致活動の際に、五輪・パラリンピックなどの機運醸成のために、幅広い世代の人々が取り組むことができる新たな体操「TOKYO体操」というものを制定しているのです。石原都知事(当時)が主導し、イメージリーダーにはAKB48を起用。発表イベントには大島優子さん、秋元才加さんなどAKB48の主要メンバーも参加し、大変華やかなものになっていました。

【TOKYO体操アクティブバージョン】


このTOKYO体操は、ダンスの動きを取り入れたアクティブバージョンと、幅広い世代が実践できるように座ったままで取り組めるようにしたシッティングバージョンの2種類を備えるものでした。車椅子ユーザーや高齢者をも含め取り込んでいこうという意識が、よく表れた内容になっています。ラジオ体操も座ったままできる体操ではありますが、最初から座った状態を想定したTOKYO体操のほうが、よりパラリンピックへの機運醸成につながる体操なのではないでしょうか。

現在でも東京都のスポーツ情報ポータルサイト「スポーツTOKYOインフォメーション」のトップページには、TOKYO体操の動画が掲出されているわけですが、この体操について小池都知事はどうするつもりなのでしょうか。過去に東京都が決めた計画・資産を引き継がずに、都度都度思い付きで新しいことを始める。これでは五輪会場問題や豊洲市場問題とまったく同じことの繰り返しではないでしょうか。

「TOKYO体操など誰も知らない」ということが採用されなかった理由であるならば、むしろそれを広めるために活動することが都知事の第一の方針であるべきでしょう。TOKYO体操の存在をしっかり認識したうえで、その事業を引き継いでいく。あるいは、新たな取り組みを始めるにあたって、過去と正面から向き合って清算する。そうした姿勢こそが、小池都知事に決定的に欠けているものではないでしょうか。

ここはひとつ玉虫色の人気取り手法として、築地・豊洲の併用と同様に、ラジオ体操とTOKYO体操の併用もぜひ検討していただきたい。9年前からTOKYO体操の発展を見守っている都民のひとりとして、TOKYO体操ファーストでお願いしたいものであります。TOKYO体操をもっと大切にしましょう!

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)