母の遺体そばで亡くなっていた男児が発見されたアパート(画像は『Daily Record 2017年6月7日付「Mute 4-year-old schoolboy slowly starved to death as he clung to his mum’s dead body in their flat」(Photo: ARCHANT/alwakeelr)』のスクリーンショット)

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英ロンドン北東部ハックニーのアパートの一室で、母親の死を誰にも知らせることができず、2週間以上も遺体に寄り添い餓死していった4歳の男児の悲劇が『Daily Record』や『Hackney Gazette』で報じられた。母子の遺体が発見された時、男児は母の遺体を腕で包み込むようにして亡くなっていたという。「助けてあげることができていたら」と孤独な親子の死を知った近隣住民は涙しているようだ。

昨年10月20日、コンゴ人の母子の遺体がハックニーのアパートで発見された。10月1日か2日頃、母親であるエスター・エケティ=ムロさんは突然のてんかん発作を起こしたことが原因で息を引き取ったとされ、遺体はかなり腐敗が進んでいた。その傍らで母に腕を回して亡くなっていた4歳のチャドラック・ムバラ君は、栄養失調と脱水症状が原因だった。

自閉症スペクトラムで全く声を発しないチャドラック君は地元のモーニングサイド小学校に通っていたが、9月30日から無断欠席が続いていた。10月初め学校の職員が母子の住むアパートを2回訪ねたものの、直接会うことは叶わなかった。エスターさんに何度か電話をしても全く繋がらない状態だったが、学校側は母親以外の家族や友人の連絡先を登録していなかったために対応のしようがなかったようだ。

その間、エスターさんの死をチャドラック君は近所の誰にも知らせることができなかった。学習障がいがあり自分で食事を口にすることも困難だったようで、母親が亡くなってから2週間以上も飢えに苦しみながら10月18日頃に息を引き取ったとみられている。

メアリー・ハッセル検視官は、死因審問後の報告書の中で「長く無断欠席が続いている児童に対し、学校側の対策方法を改めるべきだ。そうでなければ再び同じような悲劇を起こしかねない。児童の無断欠勤を知った学校側は、親と連絡がつかなければ3日〜5日待たずに学校職員を児童の家に向かわせる必要がある。返事がなければすぐに警察に通報するべきだ」と指摘した。

チャドラック君の通っていた小学校のジャネット・テイラー校長は「不登校の児童に対して、手順に従いきちんと確認はしていた」と主張し、「チャドラック君の事件は、学校側もショックを受けている。この出来事以降、全ての児童には3つの連絡先を届け出るように命じている」と述べている。

亡くなった母子の悲劇に最も心を痛めているのは、アパートの住民たちだ。ある住民は『Hackney Gazette』に「手遅れになるまで何も知らなかったことが悔やまれてならない」と話し、別の住民は「毎晩眠る前に、母子のことを思わずにはいられない。チャドラック君の助けを求める声を聞き逃してしまったのだろうかと何度も考えてしまう。でもあの子は一言も声を発することなく、母親の後ろに隠れて服の裾を握っていた。この悲劇を知ってからは自分も長い間苦しんでいる。助けてあげることができていればと何度も思う」と涙ながらに語った。

また遺体の腐敗が進んでいたが、その悪臭に住民らは「母親が何かの料理をしているのかな」と思っていたそうだ。

母の死を誰にも知らせることができなかったチャドラック君は、愛する母のそばで2週間飢えと闘いながらひたすら寄り添っていたのだろう。近隣住民の悲しみが広がる中、メアリー・ハッセル検視官はこの件を子ども・家族担当大臣のエドワード・ティンプソン氏に伝え「欠席児童に関する学校側の対応」について書面で問い合わせ中だという。

画像は『Daily Record 2017年6月7日付「Mute 4-year-old schoolboy slowly starved to death as he clung to his mum’s dead body in their flat」(Photo: ARCHANT/alwakeelr)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)