「怖い絵」展が兵庫&東京で開催 - 約80点の西洋絵画・版画における“恐怖”を紐解く

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「怖い絵」展が、兵庫県立美術館で2017年7月22日(土)から9月18日(月・祝)まで、上野の森美術館で10月7日(土)から12月17日(日)まで開催される。

テーマは「恐怖」。本展では、視覚的な怖さだけでなく、隠された背景を知ることで判明する恐怖を約80点の西洋絵画・版画の中で紐解いていく。“この絵はなぜ怖いのか?”その疑問の答えを探る場でもある、今までになかった新たな視点で作品に触れられる展覧会だ。

中野京子著書シリーズ『怖い絵』をもとに

本展は、作家・ドイツ文学者の中野京子によるベストセラー『怖い絵』というシリーズ化された書籍の刊行10周年を記念して開催される。著書でも紹介されたポール・ドラローシュの《レディ・ジェーン・グレイの処刑》、ハーバート・ジェイムズ・ドレイパーの《オデュッセウスとセイレーン》などの作品が、展覧会を通してよりダイナミックに表現される。

展覧会へ足を運ぶ人に向けて、本記事では“この絵がなぜ怖いのか”を中野京子の解説を紹介する。知るからこそ見える恐怖の世界。ぜひ予習して臨んでほしい。

ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》

本展の注目作品である《レディ・ジェーン・グレイの処刑》。縦2.5m、幅3mにもおよぶ、ポール・ドラローシュの大作は繊細な筆致と緻密な構成で描かれた圧巻の大作だ。1928年のテムズ川の大洪水により失われたと考えられていたが、1973年の調査で奇跡的に発見された。1975年の一般公開再開以来、瞬く間にナショナル・ギャラリーの代表作品となった奇跡の作品が初来日となる。

ヘンリー8世の姪の娘として生まれたばかりに政争に巻き込まれ、望みもしない王冠を被せられたあげく、わずか16歳で死なねばならなかったジェーン・グレイ。この絵画には「9日間の女王」とも呼ばれる彼女が、今まさに処刑されようとしている風景が描かれている。手探りしている首置台に触れれば、彼女は司祭の助けをかりてそばに身を横たえ、処刑人の大きな斧の一撃を受ける。下に敷かれた藁は、夥しい血を吸いとるためのもので、首がころがる様をも想像させる。

ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー《オデュッセウスとセイレーン》

半人半鳥または半人半魚の姿で、美声によって船乗りたちを惑乱させ、船を沈めたと言われる海の魔女セイレーン。マストに縛りつけられた古代ギリシャの英雄オデュッセウスは、彼だけ蜜蝋の耳栓をしていなかったため、セイレーンの歌声を聞いて狂乱し、海へ飛びこもうと身をよじる。その恐怖は見るものを巻き込んでいく。

ドレイパーが描くセイレーンは、当時のイギリス人が理想とする若い美女そのもの。彼女らの下半身は海中では魚なのに、船べりによじのぼる時には白いエロティックな脚となり、腰には海藻が巻きついている。

ウィリアム・ホガース『ビール街とジン横丁』より《ジン横丁》

18世紀半ばのロンドン。イギリス国内でジンは原料も安く、税もかからず安く手に入れられたが、牛乳やお茶、そしてビールは高く、貧民街に住む人々はジンを飲むしかなかった。いつしか街の中では、子どもまでもが安酒のジンを飲み、地獄さながらの様相が繰り広げられていた。その模様がこの絵の中から読み取れる。

本作品には対となる《ビール街》があるが、《ジン横丁》の悲惨さと対比的に、ビールを飲んで人生を謳歌する職人や商人が描かれている。作者のホガースは、警鐘を鳴らす意図で本作を描いたのかもしれない。

「怖い絵」展 開催概要

■兵庫会場
会場:兵庫県立美術館
住所:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1
会期:2017年7月22日(土)〜9月18日(月・祝) ※月曜休館(9月18日は開館)
時間:10:00〜18:00(金・土曜日は夜間開館、20:00まで)
※入場は閉館の30分前まで。
料金:一般 1,400(1,200)円、大学生 1,000(800)円、70歳以上 700(600)円、高校生以下無料
※( )内は前売料金(一般・大学生のみ)および20名以上の団体割引料金。
※障がいのある方は各当日料金の半額(ただし70歳以上料金からの割引はなし)。その介護者1名は無料。
※割引を受ける場合は証明できるものを持参。
※県美プレミアム展の観覧には別途観覧料金が必要(本展とあわせて観覧する場合は割引あり)。
問い合わせ先:兵庫県立美術館 078-262-0901

■東京会場
会期:2017年10月7日(土)〜12月17日(日) ※会期中無休
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
時間:10:00〜17:00
※入場は閉館の30分前まで。
料金:一般 1,600(1,400)円、大学生・高校生 1,200(1,000)円、中学生・小学生 600(500)円
※( )内は前売料金、および20名以上の団体料金。
※小学生未満は無料。
※障がい者手帳の提示、およびその介護者1名は無料。
問い合わせ先:上野の森美術館 03-3833-4191


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