「ひよっこ」40話。無敵の愛子さん

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連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第6週「椰子の実たちの夢」第40回 5月18日(水)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:福岡利武 


40話はこんな話


オーディションに落ちてしまった時子(佐久間由衣)の精神状態を心配したみね子は、ある人に手紙を書く。

相手を楽にさせてやれる人に


17日放送の40話は、視聴率20.9%で、36話で記録した最高視聴率と同じだった。
調子が上向いてきたのではないだろうか。

さて、乙女寮で時子を待つ乙女たちは、どういうふうに彼女を迎えようか話し合う。
幸子(小島藤子)は、時子から何も言わないうちは、何も聞かないでいようと提案。
だが、「自分から言い出すのを待とう」「おつかれさま」「おなかすいたでしょう」そういう感じで言う幸子の真意が、澄子(松本穂香)にはわからない。
見かねた豊子(藤野涼子)は、自分が聞きたい気持ちではなく、相手の気持ちを考えることだと説く。
顔見たら(気持ちは)すぐわかると反論する澄子に、人間とは単純なものでないと諭す豊子。さすが、本をたくさん読んでいるだけはある。

その後、場面は、オーディション会場に切り替わる。
時子は妙にニコニコ、サバサバした顔で出て来る。
でも、肝心のオーディションの話しはしない。みね子は、何も聞かないでいた。
みね子は、幸子と豊子の言っていることを、すでに実践していた。

乙女寮に帰って来た時子は、皆に心配かけたくなくて、やはりニコニコしていた。
その様子に(受かったのか落ちたのか)「どっち?」「わからねえ」と乙女たちは悩む。
言葉を押し殺しあい、なんだか窮屈な雰囲気でいると、愛子(和久井映見)がやって来て、驚くほど直球に「受かった? 落ちた?」と言い出す。
「こういうときの愛子さんは、まさに無敵です」(みね子)

はずみで、ためていた感情を吐き出す時子。
緊張すればするほどなまってしまって、全然力が発揮できなかったと悔しがる時子に、愛子は、全力でやって落ちたなら仕方ないが、緊張して力を出せなかったのなら「諦める理由がないんじゃないの。次があったら次がんばって実力出しなさい」とまだ希望があることをケロッとした様子で示唆。
ようやく時子は楽な気持ちになる。
「(愛子のように)相手を楽にさせてやれる人になりたいなと思いました」とみね子。

いい話だ。コミュニケーションの勉強になる。
だが、お説教臭くならないように、澄子と豊子の「んだんだ」合戦や、愛子が、石原裕次郎のサインはどうなったかと、みね子を困らせるエピソードも添えて、笑いでまとめる。

その場は円満になったが、時子の心の傷は簡単に癒えず、夜、ちょっと悲しい顔でオーディションの夢を見てうなされている彼女を、心配そうにみつめる乙女たち。
その深刻さも、澄子ののんきなカレーの寝言によって、少々緩和された。

みね子は、時子を励まそうと、三男(泉澤祐希)に手紙を書く。
その間に、茨城の時子のお母さん(羽田美智子)が手紙が来ないと騒いでいる場面を挿入して、流れを単調にしない。

たくさんの登場人物の人柄が、短い時間の中で、いい感じに表現されている。
でも、やっぱり、愛子が無敵。
「ちりとてちん」(07年)でもお母さん役がチャーミングだった和久井映見。この人、不思議な吸引力をもっている。
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