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東京大学(東大)は5月10日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルマウスにおいて、神経筋接合部の形成増強治療による病態の改善と延命効果を実証したと発表した。

同成果は、東京大学医科学研究所腫瘍抑制分野 山梨裕司教授、同博士課程の三好貞徳氏(研究当時)によるもので、5月10日付けの国際科学誌「EMBO Molecular Medicine」に掲載された。

神経筋接合部(NMJ)は、運動神経からの制御シグナルを骨格筋に伝える唯一の化学シナプスであり、その喪失は呼吸を含めた運動機能の喪失を意味する。同研究グループはこれまでに、NMJの形成に必須のタンパク質としてDok-7を、また、そのヒト遺伝子(DOK7)の異常による劣性遺伝病としてNMJの形成不全を呈するDOK7型筋無力症を発見している。また、マウスを用いた実験から、DOK7発現ベクターの投与によりNMJを後天的に拡張できることを確認し、DOK7型筋無力症を発症したマウスや筋ジストロフィーの一種を発症したマウスへの投与によりそれらの運動機能が改善され、生存期間が延長されることを実証していた。

一方、これらの筋原性疾患だけでなく、現在まで根本的な治療法が見つかっていないALSなどの神経原性疾患や加齢性の筋萎縮などにおいてもNMJ形成不全との関連が過去に報告されている。しかしながら、その治療標的としての可能性については未解明となっていた。

そこで今回の研究では、運動機能の低下を示したALSモデルマウスを利用。同マウスにDOK7発現ベクターを投与することにより、NMJ変性の抑制、筋萎縮の抑制、運動機能の改善、生存期間の延長を実証した。

同研究グループは今回の成果について、ALSを筆頭に、NMJ形成不全との関連が解き明かされつつあるほかの運動神経変性疾患や加齢性の筋萎縮に対する治療法の開発にもつながることが期待されると説明している。

(周藤瞳美)