就活スタイル編集部

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「消臭力」や「米唐番」といった個性的なCMを次々に生み出してきたエステー株式会社の宣伝部長・鹿毛康司さん。そんな鹿毛さんが業界の著名人をゲストに招き、「学生達の悩み」に答える本企画。今回はゲストに鹿毛さんが「最も信頼できる男」として挙げるドミノ・ピザジャパンのCMO(チーフマーケティングオフィサー)・富永朋信さんをお招きし、読者の学生から寄せられた質問を元に特別対談を開いてもらいました!

パート2「会社選びは結婚相手を選ぶように」はこちら
https://gakumado.mynavi.jp/style/articles/48600

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パート3「わからなければ、まず動くことが大事」はこちら
⇒ https://gakumado.mynavi.jp/style/articles/48601

「わからないけどやってみました!」の精神で何でもやれ!


――まず記念すべき一つ目の質問がこちらになります。

●エントリーシートに書ける趣味や特技が思い当たらないのですが、どうすればいいのでしょうか?(女性/19歳/大学1年生)

鹿毛さん:これはね、もう「特技と趣味を持ちましょう」としか言えないね。でもさ、これって会社側も特技とか趣味をそのまま聞きたいんじゃないよね。趣味や特技を書くにあたって、なぜそれを選んだのか、何で好きなのかとか、その人を知りたいから聞いているんだよね。

富永さん:そうですね。そのとっかかりとして特技や趣味を聞いていて、その特技や趣味を持ったバックグラウンドストーリーなどから会社へのマッチングやポテンシャルを測る材料にしているんだと思います。

鹿毛さん:本当はずばり聞きたいんだと思うよ。「お前はどういう人間なんだ」って。でもなかなか言えないからこういう聞き方をする。だから趣味とか特技が思い当たらなかったら、面接官も何も聞けないよね。特技や趣味で競っているんじゃないんだから。

富永さん:まだ19歳ですし、これまで勉強ばかりやってきて趣味や特技といったことはこれから、という可能性もありますよね。自分としっかり向き合って、自分は他の人とどういった点が違うのかを考えれば、それが特技や趣味につながっていくと思います。

鹿毛さん:例えばだけど、富永さんは趣味は何? 学生時代はどうだった?

富永さん:今はマーケティングが趣味といえるでしょうね。学生時代は何だったかな……。でもアルバイトは一生懸命やっていて、どういったオペレーションをすれば売上がアップするかとかまじめに考えていましたね。

鹿毛さん:そういうのも特技だよね。ついついまじめに考えてしまうもの、そういうのでもいいんじゃないかな。

――次の質問もかなりざっくりとしたものです。

●何もかも初めてのことで、何をしたらいいかもわからないのですが、就活は何から始めればいいのでしょうか?(女性/22歳/大学3年生)

鹿毛さん:なるほどねぇー。富永さんは7回会社変わったでしょ? 毎回何もかも初めてじゃなかった?

富永さん:そうですね。人も仕事もカルチャーも初めて尽くしでしたね。

鹿毛さん:でしょ? 何もかもが初めてってずっと続くんだよ。

富永さん:人生の真理でしょう。就活っていう大きな舞台だからよりシリアスに感じるんだろうけど、毎日何かしらの初めてって起こっているものだと思いますよ。

鹿毛さん:でも「初めて」はいいことだよ。初めてのことができるんだから「楽しくてしょうがない」はずだよ。何もかも初めてなら何でもいいからすればいいんだよ。好きなことやってみりゃいいんじゃん。そう思うね。

富永さん:身も蓋もない話ですけど、私のところに「良いマーケターになるにはどうすればいいですか?」って聞いてくる人がいますが、そういう人ってそもそも良いマーケターになれないんですよね。「わからないけどやってみました!」っていうくらいじゃないと話にならない。やっぱり行動することですね。

鹿毛さん:何をすればいいかわからないのなら、志望する会社の先輩なり何なり「人に会えばいい」よ。そうすることで何か見えてくるはず。

自分を形にはめてしまうことを良しとするな!


――次は大学4年生からの内定に関する質問です。

●内定をたくさんもらえる人と、なかなか内定をもらえない人の違いってズバリなんでしょうか?(男性/23歳/大学4年生)

鹿毛さん:自分の学生時代の話なんだけど、ある人が某企業に就職したくて、とりあえずその会社の前で100人に名刺もらってインタビューしたんだよ。それで面接で「私は御社の社員100人に会ってインタビューしまして……」って言ったらもう採用。これが質問への答え。やり方はともかく、「たくさん人に会うか」です。

富永さん:これはそのとおりだと思います。学生さんはスキルなど内的な答えを求めると思いますけど、それは本当に上っ面の話で、面接だと化けの皮がはがれますよ。

鹿毛さん:内定をたくさんもられる人と、なかなか内定をもらえない人の違いを研究する前に、とにかく人に会いなさい。10人会って分からなければ100人に会いなさい。これですよ。

富永さん:OBと会えたり、大学は人に会う仕組みが充実していたりするので、そういうのをフル活用したり、SNSを利用したり、会おうと思えば会えますからね。

鹿毛さん:ただそのコンタクトも本気じゃないと駄目。それに時期も大事だね。1年とか2年で「就活はまだだけど悩んでいるから会ってお話を聞きたい」というなら大丈夫ですけど、就活目の前のタイミングで「悩んでいる、業界が分からない、どこが好きか分からない」なんて言ってたらアホかと。人と会うにしてもスケジュールをしっかり組まないと会ってもらえないよ。

――次はこんな質問です。

●社会で成功した人の特徴として言えることはなんですか?(男性/21歳/大学3年生)

富永さん:う〜ん(笑)。何て言ったらいいか……。みなさん「形」を作りたがるんですよね。一概に駄目とはいえませんけど、こういう考えを持っていると、必要条件を満たせばどうにかなるっていうのが透けて見えてしまうんですよ。

鹿毛さん:うん。そうだね。

富永さん:歌舞伎など、日本の芸術や武道で使われる言葉に「守破離(しゅはり)」というのがあるんですが、「守」は師匠の教えのもとで形を学ぶ、「破」はその形を破りより良いものを作る、そして「離」は自分で独り立ちしていくということです。この質問は「守」について聞いているんだと思いますが、大事なのは形ではなく意気込みとかどれくらいのめり込んでいるか、そうしたマインドセットの部分だと思います。

鹿毛さん:成功する人の特徴はパッと言えないけど、なぜか不思議なことに「社会で成功しない人の特徴」ならいくらでも言えちゃうよね。まずは「こういう質問をする人」って。形にはめて考える人は駄目だよ。後はミスが多い人。

――どんなミスでしょうか?

鹿毛さん:例えば、頼みごとしても「忘れてました」ってことが多い人。これだと次の階段に移れない。

富永さん:間違うというより「気がない」と言うことですよね。

鹿毛さん:あとは人間に興味がないっていうのかな、そういう人もは、もったいないね。あと「忙しい」と言う人。

富永さん:そういう人の「忙しい」は「自分への陶酔」があると思います。「俺は忙しいんだ」と思い込むことで安住しようという態度。それは自己チャレンジの精神がないですよね。「逃げ」にもつながると思います。

鹿毛さん:あまりに自分が忙しいと言う人は、「優先順位の付け方」も下手だと思う。

「心⇒言葉⇒行動」という流れが作れる人になれ!


――次は面接時に関する質問です。

●面接で好印象な学生の特徴を教えてください!(女性/18歳/大学1年生)

鹿毛さん:どういう人が好印象だと思う?

富永さん:面白い人がいいですね、他と違う人。その「他と違うこと」を恥じずに、正面からぶつけてくる人は好印象です。

鹿毛さん:おべんちゃらは駄目だよね。

富永さん:そうですね。自分の中の言葉を正確に表現できない人は、それを意識したほうがいい。そうしないと自分の思いが人に伝わらないです。

鹿毛さん:でもどうすれば面白いと思ってもらえるかだよね。奇をてらうのはよくないしね。

富永さん:さっきのおべんちゃらの話と同じですけど、妙に一貫性を持とうとしたり、小細工したりするのは通用しません。ちゃんと心を行動に変換できる、つまり「心⇒言葉⇒行動」という流れが作れる人はいいですね。ただそれは勇気が要りますし、難しいとは思いますが……。

鹿毛さん:これも反対に「好印象でない学生」はいくらでも言えるのになあ(笑)。まずはマニュアル通りに話す学生。あとは勉強不足の人。誰かと会うのにちっともその人のこと勉強してこない、とか。そもそも学生と社会人じゃ情報量が違うんだから。

富永さん:礼儀の問題でもありますし、そういうのは「もったいない」とも思いますよ。面接でもそうですけど、普段会えない人にせっかく会えるんだから、しっかりと勉強しておくべきです。

――次も面接にまつわる質問になります。

●鹿毛さん、富永さんだったらどのような自己PRを面接で伝えますか?(男性/25歳/大学院生)

鹿毛さん:自己PRね……。自分の話になっちゃうけど、就活で大手食品メーカーを受けたとき、学生時代に作った企業分析資料を持って行ったのよ。その企業のマークを表紙に貼って。そしたら担当の人に「マークの上下逆さまだ!」って怒られて(笑)。「うわー、これ絶対に落ちた」と思って、そこから吹っ切れて自分の言葉で話せるようになったんだよ。今振り返るとそれが大事だったんだと思う。

富永さん:それはすごくわかります。

鹿毛さん:素で話すってことだよね。ただその「素」というのは、「あのさー」と普段どおりになれなれしく話すことではなくて、「自分の本来の実力(素)をどこまで相手に公開できるか」ということ。そう考えると素で話せないのは実力が足らないからだよね。実力が公開できない程度だと、取り繕ったマニュアル通りの話しかできず面接は通らない。じゃあどうすればいいかというと、面接までに「相手に公開できる実力の領域を増す」ということ。

――お二人はもし「今」面接を受けるとすれば、どんな自己PRをしますか?

鹿毛さん:そのまま伝えるだろうね、思っていることを。

富永さん:そうですね。できることとできないことをそのままストレートに伝えるでしょうね。

鹿毛さん:ただ礼節は重んじますよ。

――次は履歴書の書き方に関する質問です。

●人事の方の印象に残るような履歴書の書き方を教えてください。(女性/18歳/短大・専門学校生)

鹿毛さん:じゃあ特別に私が印象に残るような履歴書の書き方をお教えしましょう! いいですか? 普通のことがずらーっと書いてあるんだけど、2カ所くらい「これ何?」と人事が思うことを書く。それこそ実際は黒色の文字なんだけど、なぜか赤色に見えるくらいの一行の重みのある、印象的なことを。例えば私の場合は大学受験で二浪したので「二浪」と書く。

富永さん:それはいいですね。

鹿毛さん:そしたら人事は「何だコイツ二浪してやがんのか」と少し気にします。そこで次のページに「全然勉強していなかったけど二浪目は徹底的に勉強した」と書けば、たぶんだけど残ることは残ると思う。自分だったら採用するかはともかくそこでは残す。

富永さん:やっぱりこれもさっきの型とかマニュアルとかそういった話に通ずるものですよね。「履歴書はこうあるもの」という作法の中でどんなことができるかが大事になってきます。鹿毛さんの例みたいなことができていたら、私も残しますね。

鹿毛さん:あとよく学生さんで「履歴書の書くスペースが少ない」という人もいるけど、あれもどうかと思うね。私ね、以前ある新聞から取材を受けて、その記事が載るスペースが数百字くらい。でも相手の記者さんは何時間もの取材を2回して、途中も3回くらい取材の電話があって、さあこれから掲載といったタイミングでも「最後にお話聞かせてください」って電話をしてきて……。

わずか数百字の記事だけど、私の人生を書くのにたぶんだけど2週間くらい掛けてくれたんじゃないかな。この記者に履歴書書かせたらどうだろ、スペースが足りないなんて言わないよね。学生の皆さんもそれくらい熱心に履歴書にも向き合ってほしいよね。

富永さん:実にいい話ですよね。今の話だけでお酒が飲めますね(笑)。

鹿毛さん:でしょ(笑)?

今回は7人の読者の質問に答えましたが、お二人の対談はまだまだ続きます。後編では「どんな学生を部下にしたい?」「今の仕事は楽しい?」といった質問が登場。 鹿毛さんと富永さんの「愛のあるお説教」も飛び出します。お楽しみに!

プロフィール


鹿毛康司(カゲ コウジ)
エステー株式会社 執行役 エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター。
福岡の田舎町で育ち2浪の末、奇跡的に早稲田大学商学部に合格。下手くそなアマチュアバンドをやりながら大学生活を過ごす。卒業後 なぜか大手の食品会社にはいり営業活動をするも非エリートとして扱われ、人生最大の決意でアメリカのMBAをとりにいく。最大の決意とは「ただひたすら勉学に励む」ということだった。42歳で転職し、何故か勝手にクリエイターになってエステーCMの父となる。震災後に日本を応援したと必要以上に感謝され2012年CMクリエイティブの最大の賞であるACC賞GOLDを受賞した。ミゲルありがとう。

富永朋信(トミナガ トモノブ)
ドミノ・ピザジャパン株式会社執行役員 チーフマーケティングオフィサー。
日本コダック(現コダック)、日本コカ・コーラ、ソラーレホテルズアンドリゾーツ、西友などでマーケティング関連の職務を歴任。ソラーレ以降はCMOとしてマーケティング部門を統括。日本コカ・コーラではiModeでコカ・コーラが買える自販機システム「Cmode」の立ち上げを担当。それ以来、「購買=ブランド選択+チャネル選択」という式の解を模索し続けている。西友では同社のイメージを一変させるキャンペーンを連発した。ブランドの構造はカテゴリによって違うことに気付き、全てのカテゴリのブランド構築に対応できる方法の開拓に頭を悩ませている。座右の銘はたくさんあるが、今のお気に入りは「過ぎたハンサム休むに似たり」「渾身のアイデアは全てを解決する」。

(中田ボンベ@dcp)