今夜2話「銀と金」金を掴んでみろよ。世界が曲がって見えるぞ

写真拡大

『アカギ』『カイジ』でおなじみの福本伸行原作『銀と金』がテレビ東京系のドラマ枠「土曜ドラマ24」で7日からスタートした。amazonプライムでも観る事が可能だ。


ギャンブルに狂ったフリーター森田鉄雄(池松壮亮)が、平井銀二(リリー・フランキー)という大物フィクサーに出会い、その圧倒的な悪に惹かれ、悪党を志すという物語。様々な闇社会での事件に出くわすも、少しずつ成長していく森田。一方で、知れば知るほど底が見えなくなるド悪党・銀二。一体、二人はどこへ向かっていくのだろうか?

原作は、福本ファンの間でも最高傑作と呼ばれる。しかも20年前に連載を休止したままの未完なのだ。未だに連載再開を待ち望んでいるファンもいるだけに、ここに来てのドラマ化はおおいにその界隈を賑わせている。
第1話を振り返ってみたい。

1話あらすじ


散らかった勝ち馬投票権が万札に見えるほど、ギャンブルにのめり込んでいた森田に、謎の銀髪男・平井銀二が儲け話を持ちかける。廃屋にも見える平屋で森田が眼にしたのは、金に困った大勢の男達と、10箱以上のダンボールに詰め込まれた見たこともない札束だった。銀二は、後がない男達に闇金として金を貸していたのだった。

次に向かったのは、病院。たくさんのチューブと酸素マスクに繋がれた老人の前で、銀二はおもむろに5000万を取り出す。「この金で人を殺せ」と命じられた森田が下した判断とは?と、いうものだ。

森田の人間性が一発でわかるシーンがある。ファミレスらしき場所で食事をしているシーンだ。隣のテーブルで店員に絡んでいる若者を不快に思った森田は、若者達がサラダバーで席を離れている隙にパスタにコーヒーをぶちまけてしまう。森田の正義感から来る行動なのだが、結果としてこの若者達は店員にもう一度絡んでしまう。悪を挫いたつもりの森田に、後の事は関係ない。

ダメ人間は、正義感が強い事が多い。その正義感のせいで割を食ってしまい、返って良くない場所に落ち着いてしまうのだ。本当に強い正義ならば悪を挫いて賞賛されるのだが、そこまででもない。逆に森田が本当に悪党ならこんな若者達など気にも留めなかっただろう。中途半端で何者でもない森田の現在地が、このシーンに現れている。

言葉が重い!ダメ人間は耳が痛くなるから要注意!



巧みな心理戦もいいが、福本作品の真骨頂は、人間の弱い部分にズシンとくる重いセリフだろう。なんというか、面白かったはずなのに、観た後ちょっと凹むのだ。自分の事を言っているのではないだろうか?と錯覚してしまう。今回は、気になったセリフをピックアップしてみた。

お前は遅すぎる。決断の遅い者はそれだけで道を誤る。大成することはない

すごい心当たりある。本当によくわかる。よくわかっているだけに「大成することはあまりない」とかにして言い切らないで欲しい。

クビしまってる癖に、駆け引きうってんじゃねぇ

金を借りにきた男に対しての言葉。わかる。全てを見透かされて完全敗北直前なのに、まだ勝てるかもと芝居を打ってしまうのだ。これは、粘り強いのではない。諦めが悪いのだ。もう一つ言い換えると、負けを認めることが出来ない甘ちゃんなのだ。嗚呼、耳が痛い。

人は、みな悪だ

良く聞くようなセリフだが、これのすごい所は正義を貫く真っ当な人間に言った訳ではないということ。森田のように、正義を盲信している中途半端なヤツに言ったセリフなのだ。「悪を受け入れる事が出来ないから、お前はそんな所にいる。そんなお前が一番の悪だ」そう聞こえてしまって耳が痛い。

自分の親を殺したその後でも、まだ良い人でいたいんだよ

遺産目当てで親を殺して欲しいと依頼してきた男に向けた言葉。銀二いわくその男は、決して殺して欲しいとは口にせず、察してもらうように動いたという。汚い。なんて嫌な人間なのだろう。そんな状況に立たされた事はないが、ちょっとその気持ちがわかってしまうのが悲しい。

金を掴んでみろよ。世界が曲がって見えるぞ

耳は痛くならないが、すごくお金が欲しくなる言葉だ。お金を持つという事は、それだけで正義なんじゃないかと錯覚してしまいそうになる。福本先生は一体どんな人生を歩んでこんな言葉を生み出しているのだろう?

これらのセリフは、全て銀二のものだ。つまり、このドラマの肝はなんと言っても銀二のカッコよさ。これがなかったら成立しないと言っても過言ではない。第1話は、その大役を見事に果たしたリリー・フランキー。今後も耳が痛くなるセリフを、カッコよくたくさん吐いてほしい。

(沢野奈津夫)